アフリカ文学「崩れゆく絆」を読んでみた

 植民地を舞台にしたファンタジー小説執筆を書こう! と思い立って以来、参考になりそうな植民地に関する本をあれこれ手に取っている。この度偶然図書館で目にして読んだのが、光文社古典新訳文庫に収録された、アチュベの「崩れゆく絆」。呪術の古い慣習根付くアフリカのとある架空の村が、白人と彼らの宗教の到来にしてあっという間に変容していく様が、一人の男を中心に描かれている。

 これがもう、滅法面白い!

 古い慣習根付く村の描写がまた、興味をそそる。隣村と呪術を使って戦争するだの、市場の客寄せに呪術を使うだの、いくさで討ち取った男の髑髏で椰子酒飲むだの(信長かよ!)カクヨムでファンタジー小説書いてるような人ならまず夢中で読めること間違い無し。どこまで本当なんだと疑いたくなる部分もあるが、例えば子どもがたくさん生まれてたくさん死んでいくような社会で人々は何を感じこう行動したのか等、そこに生きる人々の様子が生き生き描かれ説得力がある。読みながら一つ感じたのが、昔ながらの慣習やら呪術や女神の宣託やらといったなんか訳分かんない感じのものが、戦争の回避や家庭内暴力の抑制として機能してたり家庭裁判所的役割を担っていたりと、なかなか合理的に機能していた部分があるという事。しかしアチュベは植民地支配以前の世界を決してユートピア的に描いているわけではない。何の罪も無い少年が神託によって殺されたり双子は不吉だと捨てられたりするという負の側面も描いている。また白人の新しい宗教が入って来た時、社会で落ちこぼれとされた人や賤民が率先して改宗したことなども鋭く指摘している。

 植民地支配された側の物語は重い。そして支配した側への感情も複雑だ。「された」側の人間じゃない私が、植民地支配下の国を舞台に人々が妖怪を使って支配者と闘う話なんか書いていいんだろうか? という疑問が自然に芽生えてくる。しかしいいのだ、と自分に言い聞かせる。書く事は私にとって学びであり、違う視点から物事を見るための訓練でもあるのだから。

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