天才を描く

 小説の中で「天才」を描くのは楽しい……。

 ワタクシ、長編小説を書く際、必ず天才か性格的に突出した人間を書きます。短編、中編なら平凡な人間だけでまとめたこともあるけど。でも長編小説は別。自分の如き凡庸な人間を延々と描き続けるなんて気が滅入る。

 夢、夢を見たい……! 小説で夢を見たいのは読み手だけじゃなく書き手も同じさ!!!

 過去の作品でも『お前の拳で叫んでくれ』はボクシングの天才少女が出て来る。『虹の影は黒色』でもサブキャラとして天才偽装結婚仲介師を書いたし、主人公は天才とは言えないけど、ひ弱な外見のくせにべらぼうに度胸がある少年だ。

 そんな中、次回準備中の作品の主人公の天才ぶりは突出している。国中で知らぬ者はいない、という位の(ファンタジーの中の架空の国です)文豪の少年時代の話で、とんでもない言葉の才能の持ち主だ。天才だ! 文豪の話だ! 書く身としてはもう、夢のような設定じゃないか!! ……しかし……。

 ここで困ったことが生じたのである。

 天才の書く詩や文章を、私自身が書けない……!!!!!

 トホホ……。もしこれが、スポーツ選手だったら、あるいは、伝説の武将とかだったら、現実にありえない技とか書いて、その天才性を表現することが出来るだろう。しかし、よりにもよって「伝説の文豪」である。天才でないワタクシが「言葉の天才」を書くってんだから、無茶苦茶な話である。そんな無茶苦茶をなんでやろうと思ったか。もうそれは、物語の設定上の必然でそうなったわけであって……。

 (うう、書けん……)と悶々とするワタクシの前に、とある朗報が! 何やら「響」とかいう、小説の天才を描いた漫画があり、しかも映画が公開されているというではないか! 小説の天才とはどう描かれているのか。実に気になる。

 さて、言葉の天才の書く詩や文章がワタクシに書けないとなると、その天才性を描くために出来ることは二つ。

 一つ 彼の天才エピソードを存分に書く

 二つ 彼を天才っぽい性格に描く

 天才エピソードについてはいろいろ考えています。例えば短歌の上5・7・5を聞いて下の7・7を即興で詠めちゃう、みたいなことが母語じゃない言語で出来る、しかも少年なのに、とか。

 もう一つ、「天才っぽい性格」をどう描くか? 

 これまでの天才を描いた作品としては、映画「アマデウス」のモーツァルトのキャラがやはり強烈だった。ただし話の設定上ああいう風に描くことが出来ない。またサヴァン症候群の天才も小説や映画で何度か描かれてきているけど、ああいうタイプにも設定上出来ない。書く以上読み手に好きになって欲しいし、何より自分が好きになれるキャラでなきゃ書き上げられない。さあどうするか! 実はここが一番の悩みどころだったりするのだ。 

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