【壱】11
「つまり、小太郎と小太郎のおじいさんは超能力者ってことね。あっ、うちのおおじいちゃんもか」
教えてくれればよかったのにと結維は思った。曾祖父はそんなこと、一度も言わなかった。たまに天気予報で晴れと言っていても雨だと当てたりしていた程度だ。それが、術者だったからとは思えない。
「ちょうのうりょくしゃ」
小太郎はきょとんとして繰り返した。
「マンガとかにそういうの出てくるよ」
「マンガ。雑誌に載っているような……?」
「それは知ってるんだ」
思わず結維は笑った。「男の子なのに嫁入りって言うから、小太郎はそういうの知らないかと思ったよ」
「それは……そうだな。俺は少し、常識に欠けるかもしれない」
小太郎は、ちいさく溜息をついた。「祖父が亡くなるまでそうだとは気づいていなかった。人里離れた地で祖父とだけ暮らしていたので……」
「学校とか、行かなかったの?」
「小学校までは、休みがちだったがなんとか……中学は、行けなかった」
驚いて結維が訊くと、小太郎は困ったような顔で説明した。行けなかったとは、何故だろう。気になったが、訊いてはいけないことだったかもしれないと結維は思い、話題を変える。
「でも、今はもう知ってるでしょ、男の子はお嫁さんにはなれないって。だから、いいんだよ」
結維がそう言うと、小太郎はかすかに笑んだ。
「結維どのにそのように言われると、物知らずは恥ずべきなのに、少し安心する」
「だって、知らなかったことを知れたなら、それはよかったと思うよ。今さら、知らなかったことを非難してもしかたないでしょ」
結維が元気づけると、小太郎はまた、うなずいた。
「ありがとう。結維どのはふしぎなかただな」
小太郎は目を細めて笑う。「まるで、おてんとうさまのようだ」
そんな言い回しは、今まで生きてきて目にしたことはあっても、耳にしたことはない。結維は微笑ましさに、思わず笑ってしまった。
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