先生たちがワンナイト 第一夜
ある日のこと。その日は比較的その後の仕事もなく、なんとなく集まろうとルイス、カトレヤ、リリィ、ベネディクトの4人はルイスの個人部屋に集まっていた。一部屋に大人4人で多少窮屈ではあったが、ルイス以外は皆細身で、そこまでそれを感じることはなかった。
彼らの話は弾み、酒の禁止を言い渡されているベネディクトと次の日が早いカトレヤ以外の2人はそこそこ酒を飲んでおり、その勢いからか、ルイスは引き出しからあるものを引っ張り出してきた。
その引っ張り出してきた箱に書いてあったのは、「ワンナイト人狼」という文字だった。
そしてパーティのようなワイワイした雰囲気があったからか、そのワンナイト人狼を始める運びとなった。
= = = = = = =
ここで、俺がワンナイト人狼の説明をするぞ!
ワンナイト人狼は、文字通り1日だけで勝敗が決まるゲームだ。カードは基本では『人狼』『怪盗』『占い師』『市民』の四種類で、カードの枚数はその場にいる人数+2枚。流石にあまり人が多いと難しいが、割と人数の制限とかはないな。
1人1枚そこから引いて、残った2枚は場に伏せておく。自分の役職が見られるのはこの一回だけだから、しっかりと見ておこうな!
初めの夜は人狼がお互いを確認したりと後で説明するがそれぞれの行動を順番に行っていく。そして次の日に話し合いを行って、最終的に指さしで処刑する人を決める。票が多かった奴が処刑されるが、それが2人だった場合は2人とも処刑される。また、全員に一票ずつ入った場合は誰も処刑されない。これが一通りの流れだな。
次に、役職の説明だ。
『人狼』
「自分は人狼じゃない」「占い師だ」など嘘をつくことができる。それで騙して、自分や仲間の人狼が処刑されなければ勝ちだ。いかに票を自分たちに入れさせないかが重要になる役職だな。仲間がいるときは、うまく協力して騙すといいぞ!
『怪盗』
怪盗は夜の行動で誰か1人の役職を盗める。その時点で怪盗はその盗んだ役職となり、盗まれた人は怪盗となる。いかに怪盗でなった役職を生かして自分の陣営に勝利をもたらすかが重要になる役職だ。といっても実際にできることが変わったりするのは人狼と変わった時だけだけどな。あと、人狼が2人いた場合に人狼になってももう1人の人狼はお互いに知ることができないから注意しとけな!
『占い師』
占い師は夜の行動で誰か1人のカード、または場に置いた2枚のカードを見ることができる。占い結果で誰を処刑するか、しないかの手がかりになるから、いかに市民陣営に信用されるかが重要になる役職だな。
『市民』
市民はなんの能力も持っていない。だから、その分自分が○○の役職だと言った(COした)人の発言など、いかに見極めるかが重要となる役職だ。あ、別に幸福であることが義務だったりはしないから安心してな。
勝利条件は、
・人狼側は人狼を処刑させないこと、そして人狼同士共食いしないこと。
・市民側は人狼を見つけ、処刑すること、そして人間を誤って処刑しないこと。
・人狼がいない平和な村だった場合、誰も処刑しないこと。
= = = = = = =
「ざっとこんなもんだな。細かいことはやって慣れれば良いだろ。」
「適当ですね...。」
「まぁまぁ。」と言いながらルイスは全員にカードを配り、残った2枚を中央に伏せた。
「それじゃあ、楽しい楽しいワンナイト人狼の始まりだ!」
そう言ってルイスは他の全員が役職を確認し、そして伏せたのを確認してから自らも伏せ、ゲームマスター(GM)としてナレーションを始めた。全員テーブルでの作業の音がバレないように片手でテーブルをドンドンと叩いており、その光景はなんともシュールなものであった。
『夜になりました。占い師は目を覚まし、誰かを選び、占ってください。』
『人狼は目を覚まし、人狼同士目配せしてください。』
そう言った後、ルイスは顔を上げる。周りを見回してみたものの、味方はいないようであった。
(仲間はいないのか。どの役職だって言おうか迷うな...。)
『怪盗は目を覚まし、誰かの心を盗んでください。』
『夜が明けました。全員、目を覚ましてください。それでは、議論を開始します。』
その言葉に、全員が一斉に顔を上げる。全員が、初めてやるものだからか周りの様子を見計らっていて、全員が怪しく見えてしまう。もちろん、人狼は自分であるのだが。
最初に口を開いたのは、カトレヤだ。それをきっかけに、他の人も話し始める。
「えっと、どうしましょうか。とりあえず役職のある人がCOした方が良いでしょうし。」
「多分、そうだろうな。じゃあまずはオレが。オレが、占い師だ!」
そう言ってベネディクトは本人がかっこいいと思っていると思われるポーズと、演出としてこの狭い部屋の中、無駄に電撃を出した。ちなみにルイスはとてもヒヤヒヤしたが、きちんと無害だ。そのあと、ベネディクトはカトレヤのことを指差す。
「そしてカトレヤ、お前は市民だったな?」
その言葉にカトレヤは頷く。そして誰も口には出さないようだが、ベネディクトはとてもテンションが上がっているようだった。それが雰囲気酔いなのか、それともこっそりノリで酒を飲んでしまってこんなことになってしまったのか、真偽のほどは本人位にしかわからない。まぁ、“或る人” ならばわかるだろうが。
そして、ルイスは『占い師』として出ることに決めた。確実に一人市民だと決まってしまった以上、リリィの役職はわからないが、ここで怪盗として先に出られてしまったらどうやっても勝つことができないからだ。
「いや、ベネディクト・ラリス。お前は占い師なんかじゃない。俺が本当の占い師だ!」
そういうと、全員の視線がルイスの方を向く。だが二番手だということもあって、信用はされていないようだ。
「へぇ、そうなのか。それで、占い結果は?」
「オレは場の2枚を見た。そして、『人狼』『村人』のカードだった。
「私、村人だよ...?」
リリィのその言葉に、ベネディクトとカトレヤは「おや?」と顔を見合わせる。
「あれ、この村に怪盗は居るんじゃなかったか?誰もそうじゃないみたいだが。」
「そ、それは、怪盗は言ってないけど潜んでるんだよ。」
「なぜ潜む必要が?」
「人狼を取ったとか。」
「占い師だと言っている人から取っていることになるよね、それだと。」
「それなら保証すれば占い師を処刑できるしな。」
一言言うたび、どんどんと追い詰められていく。そんなとき、議論の時間が終わる鐘がなった。
『...裁判の時が来ました。処刑する人を指で差してください。せーの、』
= = = = = = =
ベネディクト→ ルイス
ルイス →ベネディクト
リリィ → ルイス
カトレヤ →ベネディクト
結果 カトレヤ 0票
リリィ 0票
ルイス 2票
ベネディクト 2票
─────────
ルイス、ベネディクト 処刑
役職 カトレヤ 市民
リリィ 市民
ルイス 人狼
ベネディクト 占い師
市民チームのカトレヤ、リリィ、ベネディクトの勝利です。おめでとうございます!
= = = = = = =
結果発表が終わった後、いの一番に異を唱えたのはベネディクトだった。
「カトレヤ、なんでオレを処刑したんだい!?明らかにこいつの流れだったのに...。」
勝ったものの自分も処刑されてしまったからか、こいつ、とルイスの方を激しく指差した。
「あなたは言葉を巧みに使って相手を追い詰めていくタイプでしょう?ルイスは押し切りタイプで、相性が合わなくて本当だけど信じられないと言うのもありがちかな、と。リリィも嘘をついているようは見えなかったし、安定の両吊りに。」
「まぁ、カトレヤだからね。私は正直どちらが本当かわからなかったから、先に出た方を信用したけれど。」
「そういえば。」とカトレヤが問う。
「なんでルイスは最初にCOしなかったのですか?どちらかと言うと真っ先に言うタイプだと思っていたのですが。」
それを聞くと、ルイスは「あぁ、」と思い出したかのように返事をする。
「それな、なんかこれを教えてくれた子が『空気を読むゲーム』って言ってたからさ。あんまわかんないし、後手に出てみることにしたんだ。」
「たしかに、」とほかの全員が何か含んだ笑みを見せて納得する。ルイスは気になりはしたが、どうせ教えてはくれないと諦めた。
そして時計を確認したカトレヤが時間だと声をかけ、1人ずつ「楽しかった」と言い残しルイスの部屋から出ていくのであった。
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