双葉とハミルの誕生日小説〜2〜


「あんなこと言ったけど、絶対訝しがられたよね...。」


『あんなこと』とは、

「ハミルの誕生日の四日に誕生日プレセントをちょうだい。」

 と言ったことだ。


「理由とかを聞かれたらどうしよう...。ハミルは何かしらあるって分かってくれそうだけど、万一当日にヴェロニカたちが来ちゃったらやばいし.....。」


 誤魔化す方法を考えようとして、その度にため息が漏れ出る。こればっかりはどうしようもないのだ。

 すると綺麗な紅葉の前でため息をつきながら立ち尽くす双葉を見かねたのか、緑の長袖にブラウンのズボンを着たルイス先生が近づいてきた。


「フタバ、そんなにため息なんかついてどうしたんだ?ルイス先生のお悩み相談室ならいつでも開いてるし、悩みがあるなら俺が聞くぞ〜?」


 ルイス先生のラフさに双葉は思わずクスッと笑った。そのおかげで頭がほぐれたのか、とても良い案を思いついた。


「先生、ご相談があるんですけど...。」



    ***********


 双葉は毎年自分の誕生日になると、決まって体調を崩す。崩すと言っても熱が出るとか、喉の調子が悪くなるとか、そんな生易しいものではない。


 ─それは、悪夢に吐き気、幻覚、混乱などのフルコンボだ─


 一歳の時にそれがわかって以来、誕生日会は前日に。日が変わる前に人の手が届かないどこかの部屋に投げ込まれる。物心ついたときから、自分の誕生日ほど憂鬱なものはなかった。誕生日という括りをされた10月9日を過ぎても、一日中苦しんでいた分の疲労でろくに動けないし、泥のように眠ってしまう。故に、誕生日を含めて1週間ほどは学校を休まなければならない。学校が好きなわけではないけれど、周りの人からは長期の休み、それも誕生日も含んでというとサボっているようにしか見えない。それが嫌なのだ。


「なるほどな、話はわかった。それで、俺に何をして欲しいんだ?」


人に話が聞かれないところまで来てからざっと『悩んでいること』を話したけれど、流石に話が早い。いや、それくらい並みの思考力があればわかることか。


「先生には他の人に全く本当の理由を明かさずにどこか部屋を借りて欲しいんです。あとはこっちでなんとかしますから。」


「でも、多分コリン先生は何らかの方法で知ってしまうと思うぞ。ここの監視はうまく出来過ぎている。」


「先生はそこまで知ってらっしゃるんですね。それで知られてしまうことは仕方ないです。大切なのは私たちが自分でそれを明かさないことです。」


「そうか....わかった。」


部屋は暗い雰囲気のまま。話は終わったが、このままここを出て行ってしまうのは後味が悪い。何か明るい話をしようと、私はカタログから切り取ったある一枚を出した。


「先生、このピアス、白と水色だったらどっちが良いと思いますか?」と。


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