ジラーチ誕生日小説〈2〉
7月25日
とても眠い。頭がクラクラする。
でも、今日渡したいから昨日の夜に頑張ったんだし...。
夜更かしした代償に頭を悩まされながらも寮の女子階段を降りていくと、いつもの場所でジョセフが私を待っていた。
「おはよう。」
「おはよう。ヴェロニカ、隈ができてるけど夜更かししたの?珍しいね。」
「ちょっと大事な用があって。あ、これ、ジョセフに。」
「手紙?今読んでいい?」
「良いけど、他の人には見せないでね。」
ジョセフはそれにうなづくと、昨夜私が書いた手紙を読み始めた。
ちゃんと最後の方に、
『良い案があったら紙に書いて、こっそり渡してください。』
って書いたから、それについての話は出ないはず。
珍しく、昨夜の私はしっかりしている。まさか、ついに頭が良くなったのかも。
─食堂にて─
食堂には、私を含めていつもの6人が同じテーブルに揃っている。
「他の人には見せないでね。」
という言葉と一緒に、みんなに手紙を渡した。
因みに、ジラーチの手紙には感謝が、その他の人の手紙には誕生日会の提案が書いてある。
「そういえば、今日の集合は確かにトーレだよな?」
「あ、今日、リリィ先生との面談だから、行けない。ゴメンね。」
「大丈夫大丈夫。どうせいつもみたいにグダグダと話してるだけだし。行ってらっしゃい。」
「うん。ありがとう、フタバちゃん。」
あんまり良くない喜び方だけど、今日に限ってはジラーチが来なくて良かった。リリィ先生、ありがとうございます。
食事開始のチャイムが、食堂に鳴り響く。
─夕刻、トーレロビー─
「みんなの案、聞かせて欲しいの。」
今日は面談で来れないジラーチを除いて全員が集まると、私はそう切り出した。
「じゃあ僕からでも良い?」
最初はジョセフが話し出す。
「トーレとリートの間に、星見の間があるでしょ?あそこ、割と遠いから人も少ないと思うし、夜になると奥は特に星が綺麗だから、パーティにはうってつけだと思うんだ。」
星見の間の奥...。普段行く時は手前までしか行ってないわね。元々人はあんまり来ないし、丁度いいかしら。
「あ、あそこか!確かにいいね!あ、次は私で!」
今度はフタバが話し出す。
「ほら、最近暑いでしょ?だから、アイスケーキを作ったらどうかなって!氷なら私が出すし。厨房を使う許可なら、場所と一緒にコリン先生にお願いしとくよ!」
「でも、レシピはどうするの?」
いくら何を作るか決めたって、なんにもなしじゃムリよ。1番お菓子作りが上手なジラーチだっていないのに...。
「この私、双葉様はね...用意周到なのだよ!」
それってどういう...
と考えようとしたら、机に重いものがドサッと置かれた音がした。
「ボクとフタバで図書室に行って探してきたんだ。」
「さっきは持ってなかったよね?」
ジョセフが私の思ったことを代弁した。
「妖精さんに頼んで運んでもらったんだ!」
確かにこの学校、お手伝い妖精をたくさん呼んでるけど...。こんな重いもの、運べるのかしら。
まぁ、フタバのこと妖精も気に入ってるみたいだし、仲良くなるとそういうことしてもらえるようになるのかしらね。
まぁそれは置いておいて、2人が持ってきた本の題名を見ると、ちゃんと初心者向けの本だった。
「お、これとか良いんじゃねえか?」
いち早く本に手をつけてペラペラとめくっていたフレッドが、あるひとつのケーキを指差していた。
そのケーキの名前は、
「マンゴーのアイスチーズケーキ」と書かれている。
クッキーで底の土台を作り、その上にアイスを作って流し込み、最後にそれを平らにならしマンゴーピューレでマーブル模様を作る、という感じのケーキだった。
材料は頼めばいただけるし、いいかもしれない。
「じゃ、これにしましょう!あとは...。」
「プレゼント、か?そうだな...ストラップとかはどうだ?」
「おー、フレッドにしては良いこと言うね!」
そう言いながらフタバちゃんはフレッドの背中を叩いた。その音は、とても良い音がした。
流石にフレッドでも痛そう...。
「ってーな!しかも冷たいし!」
「涼しいでしょ?」
やけにここが冷えてると思ったら、フタバちゃんが氷魔法出てたからなのね...。
でも、氷なんて使ったら、フレッド余計に痛かったんじゃないかしら...。
「あ、そうだ。ジラーチを目的の場所まで連れてって、誕生日おめでとうって言うのと同時に、フレッドが灯りをつけたらいいんじゃない?」
「おお、ジョセフナイス!じゃ、そんなもんか?」
「そうね。とりあえず、みんな各自でストラップを一つ作ってきて。あと、フタバちゃんは校長先生から許可をもらってきてね。完成は一週間後!」
「「「「了解!」」」」
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