第十八択。愚鈍。
下半身があるのを確認して私は安堵する。
10秒前に戻ると分かっていても、体にそれが残らないと分かっていてもだ。
脳裏に焼き付いている確かな死の実感は残っている。
目の前の選択肢は残り二つ。
赤色のロープを握るか、それとも同時に全てのロープを握るか。
いや、距離があるから同時は二本までだ。
すると赤のロープを単体で引っ張てもハズレという事か?
二本同時で何度か試す必要があるのか?
私は悩む、下手をすると食い千切られる以上の苦しみを味わう事になる。
そこでふと、気付いた。
いや最初に気付くべきだった。
二回も同じだったのだから三回目もある筈だ。
現に今、私はロープに意識が誘導されている。
どんどん上がって来る水から逃れる為にロープを掴まなければならないと!
私は下を見る。
歪んではっきりとは見えないが、最初に観た時には無かった物があった。
輪っかの様な物が底に取り付けられている。
私は何と愚鈍なのだろうか、三度も騙されるとは!!
呼吸を整え、心を落ち着けて、深く大きく息を吸って私は潜った。
必死に潜ろうとするが思う様に潜れない。
それでも必死に底に見える輪を掴もうと必死にもがく。
もう既に息は限界だった。
早く水から出たい。
苦しい。
あと少しだ。
あと…すこ……し―――。
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