第十六択。黄色。

 私は必死に泳いで真っ黒で見えない天井から伸びているロープに手を伸ばした。

 そこで思い返すのはボタンだった。

 赤を選んだら喉を切られて真っ赤に染まって死んだ。

 青を選んだら全身の血が抜かれて真っ青になって死んだ。

 私は安易に選べなかった。

 私は水の中と言う状況が恐ろしくて仕方が無かった。

 水とそういう話は相性が良い。

 もし下手な選択をすれば私は今までもっとも悲惨な死に方をする。

 赤色は、想像が容易い。

 青色は、想像が出来ない。

 黄色は、嫌な予感はする。

 ええい、このまま何をしなくとも10秒後には死ぬのだ。

 それなら思い切って黄色のロープだ!

 私は芥川龍之介の書いた小説の「蜘蛛の糸を」を思い出した。

 私はカンダタの気分だった。

 ただしあのロープを垂らしているのは間違いなくお釈迦様ではない。

 魔羅マーラの類だがそれでも掴むしかない。

 私は手を伸ばして黄色いロープを掴むとビリッという痛みに襲われた。

 次の瞬間、私は全身が痺れる感覚に、そして体が焼ける感覚におそ―――。

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