第3話 一つの想い
そして場所は戻る。僕は真面目な顔で、
「二人とも忘れるな、想いの力を」
と言う。イヌは
「想い」
マイコは
「想いですか」
と言い、僕は、
「ああ」
と答える。一番解っていなかったのは、僕かも知れない。
そして戦場へ。僕が、
「今日は見学だな」
と言うと、マイコは不思議そうに、
「何故?」
と尋ねる。僕は、
「勝てないからだ」
と言うが、二人は
「?」
と、意味が解らないようだ。
一般人が叫ぶ。
「キョウだ、逃げろー!」
セイの兵士も
「逃げろー!」
と逃げ惑う。最強の力を持つ巨人キョウ。技Aを使う。大地に穴があく。一般人が再び叫ぶ。
「狩られる、狩られるぞー!」
キョウは淡々と、
「後で回収、ではもう一度」
と言うと、技Aを連発した。普通ならあり得ないことだ。何故ならスタミナ切れを起こすからだ。化けものだ。キョウは淋しそうに呟く、
「心は何処にある?」
その時、ネコが現れる。今日のネコは、ちょっと違うようだ。ネコが力強く言う。
「みんなを守る!」
一般人が言う。
「ネコでもこれは無理だ」
ネコが言う。
「今のうちに逃げろ」
激闘が繰り広げられる。ネコは悟ったように言う。
「やはり、僕にも敵わないようだな。でも、お前に心は狩れない」
キョウの心は一瞬乱れる。そうに口を開く。
「心……。お前の技は?」
キョウは技Aしか使わない。ネコはエネルギーを節約している。しかし、キョウのスピードは凄まじい。ネコは遂に技Aを発動する。キョウは言う。
「お前の技Aは、緊急回避か?」
ネコのスピードはキョウのそれをも、一時的に遥かに超える。ネコは軽蔑するように言う。
「みんな逃げたな。力をこんなものに使うなんて」
ネコの言葉は、キョウを惑わす。キョウは言う。
「力……。俺は強い。力は悪なのか? 俺は悪なのか?」
マイコはひきつった顔で言う。
「あんなのに勝てる訳ないですね」
イヌが続けて、
「でも、どうすれば?」
と、尋ねる。僕は言う。
「あいつは強い。でも、僕の計画通りなら、何時か勝てる。狩られた者の心は何処へいく? 生き抜くための力、それだけだ。あいつはもろい」
そして、ネコのロボットは大破した。
三人は帰る。僕達は野菜を作っている。
「何で人間、食わなきゃならないのかねえ」
と舌を出す。一般人は、農業の才能を死者狩りしつつ、個人の農園を持つ。自分の作った食料しか信用出来ない。
イヌは別のことを考えている。イヌは言う。
「キョウがこれ以上死者狩りをして力を得たら、マリア様の結界が破られるかも知れない」
そして三人は戦場へ。技Cを使いながら、セイの兵士を倒す。カガクの声がする。エースリモが現れる。
「欲しいね、その進化の力。しかし、それで」
アーチャーがリモに狙われる。リモは言う。
「お前達、行くぞ。力を結束させねば、キョウは倒せん。見事だ、サトルの心意気」
僕は切羽詰まった声で、
「ちぃ、技Aだ」
と叫び、広範囲バリアを展開する。ここでバリアを進化させると、エネルギーがもたない。リモが言う。
「こんな所で、Aを使っていいのかね」
アーチャーは、エネルギーがまだ残っている。コジとアーチャーが合体。僕は技Bを進化させ、兵士達を一掃する。リモは冷静に判断する。そして言う。
「やるな。しかし、Aはもう使えんだろう」
コジの刀の形状が、どんどん変化する。技Cの多重変化。更にBが加わり、僕は言う。
「終わりだ」
リモのロボットは大破する。三人は帰る。
リモが言う。
「脱出成功。まだ戦える」
その時、グサッ!
リモが声を上げる。
「まさか?」
リモは、キルの刃に散る。キルが言う。
「お前の判断力、なかなかのものだ。俺以上だな」
サトルは我慢の限界に近い。
「きさまー!」
キルが言う。
「俺がいないと、キョウは倒せない。そうだろう?」
サトルは自らに問いかける。
「マリアよ、私に世界を変える力は、心はあるのか?」
ある日、僕は二人に言う。
「研究はだいぶ進んだな」
マイコは、解ったというように、
「心の共有ですか」
と答える。僕は
「ああ」
と言う。マイコは不満そうな顔で
「他に方法は?」
と聞く。僕は当たり前のように、
「この世界の理には逆らえない」
と言う。マイコはややきつい目をして、
「あっさり諦めるのですね、天才が」
と言う。僕も言う。
「あれを見ろ!」
「赤いテーブル?」
「赤以外の色に見えるか?」
「……」
そして、三人は再び戦場へ。キルが接近してきた。セイの科学者カガクの声がする。
「キル、ヤツを仕留めろ」
キルが言う。
「それで俺はもっと強くなる」
イヌが震えながら、
「戦うしかないんですね?」
カガクが、
「彼は人望が無いようでね」
と答え、クスッと笑う。キルが言う。
「そんなものはいらない!」
キルは様々な者を狩ってきた。万能だ。アーチャーとガードが合体。キルは、少しいかれた目をして言う。
「俺はサトルを超える、キョウを超える」
牽制。僕は技Cを使う。キルは距離を取った。僕は咄嗟の判断で言う。
「弓で……。いや」
アーチャーにキルが接近する。キルは凄い判断力を持っている、リモのように。キルが言う。
「ここで効果的なのは……」
チャンスとみて、いきなり技Aを使う。切りつける攻撃だ。こちらの被害はでかい。しかし、キルはエネルギーをかなり使ったはず。
僕は言う。
「行くぞ、コジ」
しかし、キルは別のところへ。キルは判断力より心が勝っている。僕が言う。
「終わりだ、ツバメ返し改!」
Aの進化、Cを多重進化させてからの。キルのロボットは大ダメージ。
「何故だ? ヤツを倒せば力が……」
キルは冷静さを失っている。キルは炎、氷、水、防水など多彩な技を使う。
キルは言う。
「何故だ?」
マイコはやや悲しげな表情をして、
「力に溺れたのですね。もう終わりです」
と言う。その時突然カガクが、
「何だと!」
と叫ぶ。僕も
「何が起きた!」
と、どうなったのか解らない。キルも驚いている。
「カガクが狩られただと⁉」
とキル。イヌが疑問を投げかける。
「どうなるんですか?」
僕は思い出す、
「そう言えば、セイを嗅ぎ回っていた巨人がいたようだ」
場所は移り。カクという名の巨人は言う。
「頭脳を手に入れた。しかし、力と頭脳、焦るなオレ」
状況は一変した。カクは、ロボットを狩る力を得た。カクがこちらに接近。僕は分が悪いとみて言う。
「撤退だ」
三人は帰る。
キルはグア、と音を出して、ロボットごとカクに狩られた。カクはセイのロボットを、次々狩っていく。サトルが言う。
「お前達は逃げろ! 私が出る」
兵士は心配そうに
「しかし、みんなで対応すれば。もし貴方が狩られたら……」
他の兵士も続ける、
「貴方の理想を、守ってみせます」
しかし、サトルは状況が悪いことが解っている。兵士達も本当は解っているはずだ。サトルが兵士達に言う。
「ワだ、ワに行け! 力を捨てれば、マリアは受け入れるはずだ」
兵士達は、
「それでも、貴方の理想を……」
と言う。サトルは、
「私は最強の力でカクを倒す」
と言う。カクは興味深そうに
「ほう、これがロムの力」
と言う。サトルは苦笑した後で言った、
「キルには強く言えないな。ロムをかったのは、理想のための力」
戦いが本格的に始まる。技と技の応酬。カクは少し苦しそうな顔をして言う、
「体が溶ける。こんな力、初めて見た。これがお前の切り札の技Aか?」
サトルは無表情で言う。
「消え去れ! これが最強の力だ」
カクは笑い出す、
「ククククク」
「?」
カクは目を見開いて言う。
「欲しいぞ、その力!」
サトルのエネルギーは限界だ。技Aはもう使えない。技Bの中から選ぶしかない。兵士達はサトルを見つめる。それを見て、サトルは心を決める。
「そうか、最後ぐらい」
水を放った。カクは意表をつかれた。そして思う、
「どんな力だ? 冷たい……」
カクはロボットではない。だからこそ効いた。一瞬のスキ。セイの兵士の一斉攻撃。
しかし、カクは耐えきった。遂にセイは滅びた。
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