第15話 ロリコン ロックンロール~ハヤト~

 今、アミちゃんと二人でファミレスにいる。

 ここで、皆さんに一つ言っておかなければならないコトがある。

 僕は、断じてロリコンではない。

 本当に、本当に、本当だ。

 ミキさんが、僕のことをロリコン、ロリコンと言うから、周りの人達までも勘違いしてしまっているが。そんな性癖はまったくないのである。

 今日だって、街で偶然アミちゃんと遭遇し、彼女の方から食事に誘ってきたのであって。僕が、何かしらのアクションをしかけたわけではないのである。

 何故に、彼女が僕を誘ったのか?

 それは分からない。

 好かれている?

 いやあ

 それは困っちゃうなあ…

 僕が、こんな可愛い女の子に好かれるなんてね…

 ハッ

 いかん、いかん

 冷静にならなければ。

「どう? 分かってきた?」

 アミちゃんがメロンソーダフロートをグルグルとかき混ぜながら、僕に聞いてきた。

「分かったって、何を?」

「ほらっ、ハヤト達が何をやっているかだよ」

「うーん。僕達が何をやっているか、か…。全然分からないね」

「もー。駄目だなぁ、ハヤトは。特別にヒントをあげようか?」

 うぬぅ

 こんな少女に駄目出しをされるとは。

 我ながら、情けない。

 とはいえ、わからないモノはわからない。

「本当かい。是非、お願いしたいな」

「その前に、これが食べたいなぁ」

 アミちゃんが上目遣いで、デザートを指差す。

 むむむっ

 なんてことだ

 こんな年で、そんな駆け引きを仕掛けてくるなんて。

 君の将来を危ぶんでしまうよ。

 しかし、背に腹は代えられない。

「あぁ、構わないよ」

「やったぁ。ハヤトって優しいね。やっぱり、私には、ハヤトしかいないなぁ」

 うぅむ

 なんて子だ。

 一体、どこでそんなセリフを覚えたのか。

「そうだな。ヒントは、アルファルオ」

「えっ? それは…」

「なんだ。知っていたの?」

「名前を聞いたことがあるだけだよ。それは、何なんだい?」

「さぁね。それくらい、自分で調べたら」

 やれやれ

 仕方ない。今度、ミキさんに聞いてみるか。

「しかし、これから大変になるね」

「そうなの?」

「うん。ハヤトもね」

「僕もかい?」

「そう。だから、あのオバサンの言う事はちゃんと聞いておいた方がいいよ」

「オバサン?」

「ほら、ハヤトといつも一緒にいる女の人だよ」

「あぁ、ミキさんのことか。勿論、聞くようにしているよ。随分、厳しい人だけどね」

「へぇー。オバサンだし、更年期障害なんじゃない」

「アミちゃん。よくそんな言葉を知っているね。でも、ミキさん、そこまで年はいっていないと思うよ」

 何てコトを発言するのだ、この子は。

 危険だ

 危険過ぎるぞ。

 そんな事をミキさんの前で口にしたら、ボコボコに殴られるに違いない。一生、口を聞いてもらえなくなるに違いない。

「それじゃあ、またね」

 ファミレスを出て、僕らはバイバイした。

 はぁ

 あの子、よく食べるなぁ。

 財布の中が寂しくなってしまったよ。商店街で買い物をして、家に帰る。

 見上げると、西の空が赤く染まっている。

 これから大変になるか…

 何が待ち受けているのだろうか。

 あまり良いイメージは湧いてこない。そもそも、この会社にいて良い出来事に巡り会ったためしがない。

 でも、それもまた、人生なのかもしれない。

 いつの間にか灯った、街灯の明かり。その下を、僕はテクテクと歩き出していた。

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でんでん、ででんっ 藻麩 @mofu123

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