第37話 執行人

 硲(はざま) 樹(いつき)は、〈悪魔〉が死ぬ時を見つめていた。

 黒執 我久が人間もろとも殺した。


「黒執 我久か……」


 本来ならば、〈悪魔〉の監視は〈執行人〉としての仕事に含まれない。

 ならば、何故、『烏頭総合高校』に現れたのか。

 それは、片寄 忠を殺すためだった。

 黒執達が現れる前。

 裸で歩く陸上部員に、片寄 忠は言った。


「〈悪魔〉なんて利用すれば大したことない」


 その場に遠藤 旺騎がいたことから油断したのだろうが、自分以外の人間に向けて〈悪魔〉の存在を口にした。

 これまでにも、それに近いことがあり、度々問題視されていたが、〈ゲームマスター〉の一存で生かされていた。


「〈マスター〉は気まぐれな方だ。面白いと言っていたのに、飽きたから殺せとは」


 不要だと判断すれば、躊躇なく殺す。


 これ以上、片寄 忠を生かしても面白くはならないと判断した〈ゲームマスター〉は、罰を与えるように命じたのだった。


 そして、硲(はざま) 樹(いつき)が来たときには、既に殺されるところだった。

 只ならぬ殺気で。

〈プレイヤー〉としては異質な空気を出す黒執に対して自分に近い物を感じていた。


 一緒にいる春馬 莉子に、人間である片寄 忠を殺したことについて、最もらしい理由を言っていたが、それが嘘であることは見抜いていた。


 殺したいから殺しただけだ。

 竜人の力を持つ黒執。


 いつかは戦うことになるだろうという予感が硲(はざま) 樹(いつき)にはあった。

 春馬 莉子と楽しそうに話す黒執に背を向けて、〈ゲームマスターの元へと戻るのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

Unsheathed・Bias 誇高悠登 @kokou_yuto

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ