第21話:石島富士子の裏切り(201308-12)
ただ、この売上で営業セールスの数が倍増しても、やっていけるめどがついたと大喜びだった。翌日、また問屋回りで商品の買い出しに出かけた。その時、岸田商店の岸田絹子から電話があって話があるから来なさいと言うのて買い出しの最後に岸田商店を訪ねた。
すると、あんた、この頃、顔見せないねと、怒っていた。会社の事で忙しくてと言うと、言い訳は良いから、月1回は訪問しなさいよと、怖い顔で言った。ごめんまた、月1回は来るから商品を売ってとお願いした。高価な商品を数点、買い入れた。
また、食事をして、飲んで、泊まることになったが、この晩は久しぶりなのか、何回も挑んでくるので、へとへとに疲れて翌朝は8時過ぎまで寝ており、すぐ着替えて9時の出社にぎりぎり間に合った。岸田絹子も、石島富士子も、わがままで大変だと痛感するラハールだった。今回の宝石の仕入れ総額2.7億円と少し増やした。
今月も先月の同じスケジュールで、営業活動をして実演販売で2.6億円で外商売りが2.7億円と再び逆転した。合計5.3億円は過去最高。10月の総売上5.3億円
しかし、外商の売上は2.7億円と期待していた程、伸びてこなかった。12月に入り、富士子とその事を話し合い、原因は何かと尋ねると入社後、数ヶ月では、まだ難しいと言うのだった。営業セールスを人数を倍増しているのに肝心の元外商セールスレディの成績が少ないのは解せないと迫った。富士子の言うことを聞いて敏腕女性セールス7人増員したが結果がついてこないと困ると厳しい口調で言うと、もう少し待った、年末から来春にかけて、きっと販売金額を上げるからと言うのだった。
しかし、いつもの迫力ある反論がないのに、違和感を覚えた。その晩、家に帰り、寝ながら考えていると嫌な胸騒ぎがしてしかたがなかった。そこで、岸田絹子に正直に話して意見を聞こうと思い、連絡を取った。翌日の晩に行く事にした。絹子の富士子との出会いと、その後のいきさつを、包み隠さず話してみると、確かにおかしいね。ひょっとして、あいつら、結託して、中抜きしてるんじゃないかと言った。中抜きとは、実際に売れた金額を過小に会社に申告して報告して、その差額を自分の懐に入れること。つまり、外商セールスに2千万円で売るように指示し売れたとする、 それをラハールには、1800万円で売れたと報告すれば、200万円がセールスの元に入る事になる。そう言われてみれば、思い当たることがあった。彼女たちの宝石類の販売数量はかなり伸びているのだが、販売金額がそれ程伸びていないのだ。それを話すと、あんた、まんまと一杯食わされているんだよと笑った。ラハールは人が良いから、ダマしやすいのかもと言った。
その晩も、絹子の家に泊まり、翌日、一番親しくしてくれていた、富士子の上客の佐藤さんに宝石の購入のお礼かたがた、電話を入れて、それとなく購入金額を聞いてみた。先月、1200万円でダイヤと買ったよと教えてくれた。帳簿を見て売却額を確認すると1000万円と記帳してあった。中抜きをしていることがわかった。もちろん、富士子に裏切られて、怒り心頭のラハールだったが、喧嘩して、彼女たちを
追い出しても、我が社にとって、何もメリットはない、どうしようか、考えあぐねた結果、彼女たちが、謝って、今後、絶対にしないと言うなら、今回は緩そうかとも思い、再度、岸田絹子に電話して、相談すると、笑いながら、あんた、今日かぎり、宝石の仕事を辞めちまいなと怒鳴られた。女は、そんな甘いもんじゃない、あんたは、かもられたんだよ、なめられ切ってるのさ。悪いことは言わない、富士子とその仲間を即刻解雇、その他、外商回りしている男達も、締め上げてみな、もし1度でも中抜きしていたら、即刻クビにしろ。そして、会社の膿を全部出し切るんだ。そうしない駄目だと言った。
翌日、富士子に直接、喫茶店に行き、直接、中抜きの事を聞いてみた。すると、そんなことしていないとしらを切ったので、佐藤さんから裏を取っているというと、表情をこわばらせて、たった20万円/月の給料で私たち敏腕セールスが、働くわかないでしょ、あんた頭がおかしいじゃないと反論してきた。そこで2月付で解雇すると言った。私だけと富士子が言うので君たち全員だと言った。あんた本当の馬鹿だね、売上も順調だし、会社も儲かってるんだら、良いんじゃないと毒づいてきた。
いや、駄目だ、商売に嘘つくような人間はいらない。出て行けと冷静そうだが、きっぱりと言った。富士子が、ちぇ、馬鹿と話しても時間の無駄かと言って立ち去っていった。彼女たちの仲間にも即刻クビを申し渡した。中には証拠がないとか名誉毀損で訴えてやるとか、すごむ人もいたのだ。ラハールは自分の見る眼のなさに、がっくりと肩を落とした。その後、鮫島次郎と吉川三郎と佐藤秀夫にも、この件について
、問いただすと鮫島次郎が同郷の吉村真理子に言われて中抜きしましたと正直に言い、もう2度としないからやめさせないでくれと懇願したが、商売のルールを破る奴は、許すわけにはいかない。他へ行って、もう一度やり直せと言った。すると、わかりました、彼女と違う会社に転職しますと言った。今後こんな事、絶対すんなよと、
ラハールが言うと、クビをうなだれながら、わかない、俺っていきがってるけど、
弱虫なんだと悲しそうに去って行った。話を終えて、吉川三郎と佐藤秀夫がラハール社長、今後、どうするんですかと聞くので、場所を替えて2人に話すことにした。
まず、会社は利益剰余金があり、経営状態は良いから安心して良いと言った。
今後、彼女たちがあることないこと、デパートの外商に言って信用を丸つぶれに
するかも知れないので、外商セールス相手の商売はできないかも知れない。手を引くことにする。
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