第2話:マハラジャの子、宝石商になる(200806)

そんなある日、出入りの業者で、仲良しになったインド人の宝石商、ビカス(インドでの意味:進捗)と言う名のインド人がラハールのこの話を聞いて、そりゃー理不尽な話だと言って、店の主人に話してくれた、あなたの店は、ラハールが来て、繁盛しているのに、給料払わないのは、良くないと、大きな声で言った。でも、ラハールとの約束で前月から利益が10%以上、増えた時は、契約通り、給料を払っているという。押し問答になって、ビカスが怒って、じゃー僕がラハールを引き取って、一人前の宝石商に育て上げるから引き受けると言った。ただじゃーだめだよと言い、1万円くれるなら良いと言った。ラハールを不憫に思い、仕方なく、1万円を支払って、彼をもらい受けた。すぐ近くのお父さんのインド料理屋に一緒に行って、この顛末を

話すと、お母さんのカルテープが、離れるのは嫌だと、言ったが、父のヒテシュが、修行を積んで、大きくなって来いと言った。


 その後、15歳の息子ラハールを見送る、父ヒテシュと母カルテープが、涙ながらに見送った。引き取ったビカスが一人前の商人にして見せますと言って去って行った。ビカスは、営業に出かけるときは、ラハールをつれて行くようになり、まず、

笑顔のつくり方、すぐあきらめる場面、粘って交渉する場面、泣き落としする場面、おどす場面など営業テクニックを教え込んだ、ラハールは飲み込みが早く子供だてらに、迫真の演技で、商談を有利に展開させていった。


 ビカスは、食事は必ず与え、狭いが、寝室も与えた。1年して17歳を迎える頃には、独り立ちできるくらいの営業マンに育ってきた。そこで、ダイヤモンドや宝石、真珠の商売のテクニックを教え始めた。まず、ダイヤ、宝石、真珠は、大きくても、今ひとつ光沢が弱い者を徹底的に値切って手に入れること。


 次に、それらを、知り合いの研磨職人に、見てくれを良くするように、研磨させて、カットの良さを訴えて、高く売りつける方法が、一番のコツだと言うことを徹底的にしこんだ。買い入れの方をビカスが行い、売りつける方をラハールにやらせるようになった。するとラハールの愛想の良さ、可愛い所作で、女性達に買う気にさせてセールストークも一流になりビカスが一人で売っていた時の2倍以上、売れたの。


 次に、ラハールに、安く買い入れるテクニックを教えると、愛想の良さ、泣き落としの上手さで、ビカスよりも多くの数の品物を買い入れられるようになっていった。3年が過ぎた頃には、ラハールは、どこに出しても恥ずかしくないほど一流の宝石商になった。


 そこで、ビカスは、販売するエリアを、ラハールと分担して、仕事をするようにした。ラハールは、家に戻らなくても、その地区の安宿に泊まり全国を売って歩くようになっていった。ラハールは、月に1度、ビカスに会い、商売上の質問、疑問を聞き、教えた。その後、仕事の効率を考えると、冬の寒いとき、夏の暑いときに、宝石を仕入れとカットをして良い季節の時に売り歩くようにして、ラハールも従った。


 あるとき、高級デパートの店先で、ビカスと、ラハールが宝石の実演販売をすると、高額の宝石が多く売れた経験をした。その後、全国のデパートで、この方式で、高い商品を売ることに決め、できるだけ大きめの宝石を売るようにした。これを3年続け資産が増えてビカスが日本だけでなくスリランカ、ロシア、バングラディシュ、中国、インド、タイ、インドネシア、ミャンマーなど、世界各国に原石の買い付けに行くようになった。その大きな原石に、いくらかのマージンを乗せて20歳のラハールに売ってやった。


 ビカスが、事務所を開設して、ラハールの部屋も用意し2人で商売に励んでいった。翌年は、ラハールを連れて、世界中の宝石商からの買い付けにすれていく、顔を覚えさせた。早い者で、ラハールも21歳の立派な好男子になり、女性達にもてて、宝石を売るだけでなく、身体も一緒に売るという場合も増えてきたそうだ。

 ビカスと言えば既に、55歳、お腹も出て、頭もはげだし、おせいじにも

女性にはもてるとは言えない風貌の男になった。

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