パズル4

1989年4月9日


Fは、その時の事を高校に入学したての末の娘に話をしていた。

「あんたのお姉さんは、生まれた時から泣き虫やった。近所でも有名で、あー、またFさんとこの娘さんが泣きよるってね」


でも、変わった子やった。

まだ、あんたの姉さんが3つか4つの頃、アンパンを2つに割って食べようとしてたら、近所の悪さ坊主たちが来て、両側からあんこを全部指でほじって食べて逃げて行った。きっと泣くだろうと、様子を見てたら、特に怒りも泣きもせず、あんこのないパンを見て、「あ〜ぁ」と言って、ニコニコしながら食べていた。


幼稚園の運動会の障害物競走の時も、まわりの子たちは、口を真一文字に結んで、真剣な表情でスタートラインに並ぶ中、あんたの姉さんだけは違った。

1人だけ、へらへら笑いながら楽しそうに走っていた。

競走なのに、まるでみんなと一緒に走るのが楽しくてしょうがないって感じでね。


それが、今では、バリバリのトップセールスウーマンなんだから、あんたも先では、どうなるかわからんよ。今は、ボーとしてるけど、あんたが一番しっかり者になるかもしれんね。

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