その6 怪盗の正体
一行は、昼間、ルート達が作戦会議をしていた丘の上に降り立った。
「で、ルート、何でこの少女を連れていてしまったのだ?」
「俺が連れてきたんじゃねぇよ。こいつが勝手についてきたんだ」
「あんたたちが私の仕事を邪魔するからいけないんでしょ!この落とし前、どうつけてくれるのよ!」少女がものすごい剣幕で、ルート達に迫った。
「ということは、君が怪盗シャノアールか?」シーグラムが訊いた。
「……。そうよ…」少女は渋々と白状した。
「こんなガキがか?どう見たって十一、二歳だぜ」
「失礼ね!これでも十四よ!」
「それでもガキだ。ハァ…、こんなのに天下のリュパが踊らされてたなんてな。拍子抜けだぜ」
「子供で悪かったわね。そういうあなたたちこそ何なのよ。そっちはなに?着ぐるみ?」少女はシーグラムを睨め付けながら詰問した。
「着ぐるみが空を飛ぶかよ。本物だぜ」
「その通りだ、お嬢さん。私はシーグラムという。こっちはルート。世界各地を回る旅をしているのだよ」先ほどまでの出来事を思い返し、尚且つ目の前のドラゴンをまじまじと見て、少女は目を見張った。なにせ、ドラゴンなぞ見たことがなかったからだ。
「ほ、本物…?ほんとにあなた達なんなのよ…」
「通りすがりの小悪党ってことで。だからさ、今夜見たことはお互い内緒ってことで、帰ってくんない?そこのシーグラムさんが送り届けてくれるからさ」
「そ、そんなこと、納得できるわけ…」
「君も自分の行いが露呈するのは嫌だろう」シーグラムも一緒になって諌めた。
「……。分かったわよ。今日はおとなしく帰ってあげるから、あなたたちも、もうこの街で余計なことしないでよね」
「別に、この街での目的は果たしたし、もう君の邪魔をする気はないさ。さて、それでは、街まで送ろう」
「ちょ、ちょっと待てよ。これを山の方まで運ぶのが先だろ」
「若くて可愛いらしいお嬢さんがこんな夜遅くまで出歩いている方が大問題だ。家の者のためにも、早く送り届けた方がいいだろう」
「まーた、お前はそんなこと言いやがって。このエセ紳士の盛り野郎がっ!!」
「なんだとっ!では、お前は一人では何もできず、おっちょこちょいで、その上、浅薄な男ではないか!」
「言ったな〜」ルートとシーグラムは互いを睨みつけて、悪口雑言を言い合っていた。
「もう!こんな所でケンカなんかしないでよ。誰かに見られたらどうすんの」少女が仲裁に入ったことで、二人の罵り合いは中断された。
「別に、私が今外にいることを家の者たちは知らないわ。だから、送ってもらう必要なんかないわ」と、彼女は一人帰ろうとした。だが、そんな彼女を素早くシーグラムは抱き上げた。
「いや、そういうわけにはいかない。街までは距離があるだろうし、どんなことが起こるか分からんからな、無理にでも送っていくぞ」
「ちょ、ちょっと。やめてよ!」と、ドラゴンの大きな手で抱えられた彼女はキャーキャーと騒いだ。
「と、いうわけだ。ルート、そこで待っていろ。すぐに戻る」と言い残し、シーグラムは再びリュパの街へ戻って行った。
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