その11 影

 宵闇の中、ルートはエルマーの屋敷の方角へと走っていた。しかし、そんな彼の後を二人の男が追っていた。先ほどの教会にいたハンター達の中の二人だった。残りの一人はボスの所へ戻ったのだろう。ルートは、まずこの追っ手を片付けることにした。


 時間はもう三時を過ぎてしまった頃だろうか。今夜は十三夜月。雲は無く、月の明かりが煌々と輝いている。ルートは、一旦東に向かうのを止めて、月がよく見える、開けた場所へ向かって走った。月明かりが丁度差し込む広い通りに出た。男達もすぐに追いついた。


「おいお前!さっさと子ドラゴンの居場所を吐いちまった方が身のためだぜ!」追っ手の一人は言った。

「だから、俺たちを捕まえられたらって言っただろ?ほら、捕まえてみろよ」ルートは月明かりを背にして挑発した。

「こいつ、舐めやがって」「俺たちを怒らすとひでえ目にあうぜ」

「——、やってみろよ 。」男達はルートに飛びかかった。だが、男達の手はルートの体に触れることなく、後ろへ投げ出された。男達は何が起こったのか分からずにいた。男の一人は立ち上がって「何したのか知らねえが、今度こそ…。」懐からナイフを取り出し、またルートに向かっていった。だが、それは叶わなかった。彼の足は止まってしまった。いや、正確には止められたのだ。彼の足と手、そして胴体には、黒い帯状の紐が巻きついていたからだ。

「な、なんだこれ?」体の自由を奪われた男は必死に振り払おうともがいたが、駄目だった。その男の後ろでまだ座り込んでいる男は、相棒の姿を見て呆気に取られていたが、その紐の先を見ると、それはルートの腕に繋がっていた。そして男は彼の異様な姿に驚いた。彼の腕、胴、足には紐が巻きついており、それらは全て彼の足元の影から出ていたのだ。

 ルートは両腕を引き上げ、その先にある男の体を持ち上げた。そして、腕を振り下ろし、男の体を投げ飛ばしたのだ。男は派手に吹っ飛び、地面に頭を打ち付け、そのまま気を失った。もう一人の男は怯えてはいたが、ナイフを構え、「そんなもん、どっから出したか知らねえが、俺様が切り刻んでやるよ!」そう言って彼もまたルートに飛びかかったが、カキンッと音がして、男のナイフは弾き飛ばされた。

「生憎、俺のこれは硬くもできるんでね。悪いな…。」そう言ってルートは、怯える男を、先ほどと同様に投げ飛ばし、気絶させた。

「はー、片付いたな。」と、人心地ついた時、遠くの方から地鳴りがした。

「あちらは、派手にやってるみたいだな。」

 再び、ルートはエルマー達を追いかけ始めた。

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