その6 密猟団

 その頃街では、ある一団が到着していた。それは、珍獣ハンターを自称するダルコとその手下達だった。


「お前達、俺は今回の仕事の雇い主に会ってくるから、その辺で酒でも飲んでろ。いいか、面倒は起こすんじゃねえぞ」ダルコはそう手下達に命令して、ある場所へと向かっていった。それはこの街の領主、ゲーペル伯爵の館だった。


 ティツの街の統治は、代々このゲーペル家が行なっていた。だが、今の領主は正統なゲーペル家の血筋ではなく、先代の娘婿として領主の座についた。子は国外に留学しており、妻は五年前に病死している。そのため、今館にいるのは、当主と使用人達、そして仕事で出入りする部下達だけである。

 今の領主については、取り立てて良い噂も悪い噂も無く、市民からは可もなく不可もなくといった印象を持たれている。だが、秘密も多い。妻の死は突然だったからだ。だが、それを疑う根拠は無い。


 そんな領主の元に、いかにもならず者といった風体のハンターが向かっていたのだった。ダルコは、ゲーペルからの事前の連絡通り、屋敷の裏門近くの塀の外でしばらく待っていた。すると一人の男が近づいて来た。どうやら、彼がゲーペルの部下のようだった。かれは、ダルコを屋敷の隣の建物へ導いた。そこは空きアパートのようであり、その建物の一室には、ゲーペルがいた。


「やあ、来たか。」ゲーペルはダルコを招き入れた。

「で、俺は何をすればいい?」ダルコはどっかと椅子に腰掛けた。

「一週間前から、この街には奇妙な出来事が起きるようになってね。夜毎、不気味な歌が聴こえるんだ。どうやら人間の声では無いらしくてね、街の者たちは悪魔の歌と呼んでおるよ。」

「俺は、オカルトは専門外だぜ。」

「まあ、先を急ぐな。どうやらこの歌、地下から出ているらしくてね。それも教会の辺りだ。」

「そこまで分かってるんなら、なぜ自分で確かめねえ。」

「私が思うに、声の主は珍しい獣の類ではないかと思う。例えば、ドラゴンとかね——。」

ダルコの眼が輝いた。「なるほど、それで俺を呼んだのか。」

「ああ、やってくれるな。もちろん、報酬は事前に言った通りだ。」

「それがドラゴンだって保証はあるのか?」

「保証は残念ながら無い。だが、その生き物は確かに歌っているのだ。そして、人間の声ではない。どっちにしろ、珍しい生物であることには違いは無いのだ。結果がなんであれ、高く売れる可能性は高いだろ?」

「分かった。その話のった。今夜にでも教会を調べさせてもらうぜ。」

「今回も捕獲のための便宜は計るが、くれぐれも我々の関係はバレぬようにな。」

「ああ、もちろんだ。だが、俺やあんたがここへ入る場面を誰かに見られる可能性ってのは無いのかい?」

「ここの通りは見て分かったと思うが、昼間でも暗く、そして狭い。好んで通る者などいないよ。」

「そうかい。」そう言って、ダルコは出て行った。ゲーペルもしばらくしてからその場を後にした。

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