~日常編~
第四話 初めての魔法
粉ミルク生活を初めて四ヶ月の月日が経った。
俺は数多の粉ミルクを超え、味覚はすっかり赤ちゃん気分だ。
それにしても、ずっと粉ミルクはさすがに飽きが来るというものである。
――――早くおいしい料理が食べたい・・・・トホホ
と、粉ミルクに飽き飽きとしているアラタではあるが、この四か月間無駄に過ごしていたわけではない。
――さかのぼること四か月前――
俺はこれからの自分の身の振り方について考えていた。
―――身体能力こそ高いらしいが、最弱魔法しか使えない・・・・
ずっとその身体能力に頼ってもいられない。どうにかして魔法面でも強みを持っていたい。
・・・・そういえば、俺が最弱魔法しか使えないのって、基礎の魔力量が極端に低いからって言ってたな。
俺はミカエルの言動を思い出してみる。
『あなたは転生する肉体はですね、魔力量が極端に低く、
最弱魔法を使うスペックしか持ち合わせていないんです。』
―――魔力量が低い・・・・じゃあどうすれば?
再びアラタはミカエルから受けたあの説明を振り返った。
『魔力量というものは訓練次第でいくらでも伸びます。まぁ、どこまで伸びるかは才能の域を出ませんが。』
―――これだ!魔力量さえ伸びれば希望は見えてくる!
とりあえず魔法を使ってみるか、と俺。
ここでアラタの使おうとしている魔法というのは、通常魔法というものだ。
通常魔法とは、何らかの媒体が必要な錬金術や高等術式魔法などとは違い、
魔力そのものを世界に流し込み発動させる魔法のことで、その用途は多岐にわたる。
例えば《ライト》という魔法。
この魔法は辺りを照らすことが可能で、この世界でのダンジョン探索には欠かせないものらしい。
しかし、この通常魔法というものは、個人のスペックに大きく左右されるため
基本的には"魔石"という魔力の結晶石を使って一定の力で使っているようだ。
結晶石の大きさや質によっては強さ上がるらしいが、通常魔法自体をそこまでして使おうという者は少ないらしい。
まぁ、この通常魔法というのはプラスアルファ程度で考えておくと良いだろう。
そして俺は先ほど例に出した《ライト》を使おうとしている。
現状の効果時間や明るさを調べて魔力の質や量を見ようというのが俺の考えだ。
―――そういえば、通常魔法って詠唱必要ないんだったな。
今のアラタはまだ赤ん坊のため言語器官は未発達なのだ。
つまり、話すことはおろか詠唱もできるはずもなく、詠唱の必要のない通常魔法は練習にもってこいの魔法だ。
―――異世界に転生して初めての魔法・・・・くぅ~、ついにこの時が。
ちなみに、魔力を底上げには一度限界まで魔力を使い切りらなければならない。
そこには相当な身体への負担がかかるらしいが、強くなるためなら致し方ない。それに身体能力高いらしいし。
そして俺は世界へ魔力を流し込んでいく。だんだんとお腹のあたりが暖かくなってくる。
ーーーこれだよ、これ!!
さらに、心の中で魔法名を宣言する。
《ライト》!!!
それはボウッっと音を立てて空間に光の球体が浮かび上がった。
うわぁ・・・・。
それは心に安らぎを与えるがごとくやさしい光を放っていた。
言葉を失うアラタ。喋れないが。
あまりの綺麗さに目を奪われていたアラタだったがーーーーー
次の瞬間それは消えてしまった。
―――お、ちょ・・・・!?
おいおい、マジかよ。五秒と持たなかったぞ。
自分の魔力量がここまで低かったのか、と痛感したアラタ。
そして、道は長そうだとため息をつくのであった。
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