~転生編~

第一話 出会い

気が付くと、俺は知らない空間に居た。



そこは何も描かれていないキャンバスのように一面真っ白な世界だった。


どこまでも白、白、白。


しかし、白の空間は途中で途切れていて、まるで一つの部屋のようにも思えた。



―――ずっとこんなとこにいたら気が狂いそうだ



とアラタは思い、何かないかと辺りを見渡した。


すると、部屋の中心に黒い椅子なようなものを発見する。


「とりあえずあの椅子にでも座るか。」


と、その場所まで歩こうとした瞬間、自分の体に異変が起こっていたことを知る。



―――!?足が、ない・・・・



いや、それどころか身体自体が無くなっていたのだ。


触って確認しようにも腕がないので断念。


今のアラタの体はゆらゆらと揺れる炎のような赤い光に変わっていた。


「少し驚いたけど、あんなことがあった後だとな・・・・」


そしてアラタは自分があの男に刺されたことを思い出す。


一瞬の出来事だった。


気付いた時には刺されていて、そのまま意識が途切れていく景色がフラシュバックされる。


すでにトラウマの領域。


死への恐怖の感覚は思い出すだけで足がすくみそうだ。足無いけど。


そんなことを考えているとどこからか声が聞こえてきた。


『汝に新たなる生を与えよう。』



―――あ、またこの声だ。



頭の中に響く声は実に低く重厚感のある声で、


いかにもハードボイルドなおっさんって感じのダンディボイスだ。


一度はこんな声に憧れてたな。


しかし――


『あ、あれ?聞こえてます?おーい』


ん?さっきまでの厳格な雰囲気どうした。


イメージを速攻でぶっ壊してくるのやめてくれる?


『えっと、えっと』


しかもなんかだんだん声が高くなって女の子みたいな声になってきたぞ。


『すいませ~ん。返事いただかないと次に進めないんですけど。』


なんだこいつ。


『早く返事してください!あ、あの!』


ほぅ?


「そんなことより姿を見せたらどうだ?それは無礼ってもんだろ。」


『あ、すいません。今そっちに行きますね。』


そっちに行く?なんか引っかかるな。


と、次の瞬間――


「どわっ!?」


なんか出てきた!?って・・・・・ん?


「どうも」


そう言って目の前に出てきたのは背中から翼を生やした幼女だった。


――――こいつ、コスプレ好きなのか?


第一印象はこうだ。


「君がさっきの声の主かい?」


「はい、私は大天使ミカエル。あなたに次の生を与えるべくここに来ました。」


大天使ミカエル・・・・聖書とかに出てくるあいつか。


最初出てきたときはただのコスプレ幼女かと思ったが、


登場の仕方もいきなり目の前に出てくる始末だもんな。信じざるをえまい。


「あれ?びっくりしないんですね。」


いや、びっくりしたけれども!・・・・ってそっちじゃない。


俺は一旦思考を落ち着かせてみる。


「いや、ここに来てからだいぶ肝が据わったようだか何だか知らないが、多少のことでは驚かなくなったな。」


「あぁ、それですか。それはアラタさんの肝が据わったわけではなく、この空間がそうさせているんですよ。

 まぁそんなことどうでもいいので、次進んでいいですか?」


いや待て、どうしてそうなる。


次の生ってなんだ?


「次の生ってなんだ?って決まってるじゃないですか、あなたは転生するんですよ。篠原アラタさん。」


何故か誇らしげな顔をするミカエル。愛らしい。


「おい、人の心勝手に読むなよ」


「だって天使ですもの。信者の心の声を聴けなくて何が天使ですか。」


俺はお前の信者じゃないぞ・・・・いや、考えちゃだめだ。読まれる。


そんなこんなで少し雑談を交わしたところで二人は本題に入る。


「あなたの次の生についてですが・・・・・あなたは最弱魔法しか使えないことになってます」


――――え、今なんて?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る