第3話
最近は週に四日は葉子と過ごしている。お互いのずれた休日に毎回葉子が、僕のアパートに来るからだ。本来嬉しい事なのだろうが……以前の葉子とは違う。
前はもっと、何事にも素直に反応していた。他人を羨ましいと思った時には「私もああなりたいから◎◎を始める」等と感情をまっすぐに出す子だった。
けれども小松さんにばったり会ったあの日から、ギスギスとした言葉がよく聞こえてくるようになった。今日は葉子は機嫌が良いだろうか、そんな事を考えてうんざりする事が増えてきた。
○
今日は会社の親睦会がある。部長クラスも参加するのでさすがに僕も参加しておこうという気持ちになる。僕達の職場では、ほとんどの社員が出席している。欠席した人は、子どもが熱を出したとか、家族旅行に出かけている等が理由だった。
市内の居酒屋で行われた親睦会。
サラリーマンとして参加するには、ある程度くだけてしかし絶対に理性を失ってはいけないという事だ。ああ面倒くさい。会話も特定の人だけではなく、一応万遍なく周りに話しかける。
多少の義務感を抱えつつ、それらはクリアしただろうと思った。その時に、小松さんが隣に座った。小松さんはお酒を飲み、幾らか饒舌になっている様子だった。けれども色白の肌は変わらず、目だけが少し、眠そうに見えた。
小松さんは僕に、最近どんな音楽を聴いている? と聞いた。僕は、今世界中で人気のある男性歌手の名前を挙げた。
小松さんは、「あら、そう」と少しつまらなそうな反応をした。
こういうマイナスにとらえがちな反応も、小松さんだと『正直だ』という印象を与えるから不思議だ。
ルックスにも恵まれてファッションセンスも良くて会話も愉しい小松さん。何だか僕は、酔いが回っているのだろうか。一瞬、物凄く高揚した。
その勢いに乗って、つい愚痴ってしまった。先日街中で小松さんとばったり会った時から、僕の恋人の様子が少しおかしいのだと。どのようにおかしいのかを話した。
小松さんは僕の話を黙って聞いていた。僕に共感しているのだろう、僕はそう思っていた。
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