絶望しかない

永遠の3歳児

前編

それは中2の冬休み中の事だった

僕は仲が良い友達に急に告白されたのだ

告白の仕方は最近流行りのLIBEでの告白だった

「俺は玲ちゃんの事が好きなの」と唐突に言われた僕は思わずスマホの電源を落とし、独りリビングで悶えていた。

今まであいつの事を意識しなかったと言えば嘘になるが、あいつは彼氏ネタでは不幸な事しか起きてない

それに1ヶ月くらい前に父親を亡くしたばかりだった。

彼氏に酷い事をされた時も、父親が突然倒れ、医者には「もう目は覚まさないでしょう」と言われてどうすればいいか聞かれた時も僕は親身になって話をした。

僕は人に頼られるのが嬉しいし、実際自分にもそんな経験があるから痛い程わかる。

だが、それでも僕の事を好きになる理由なんてないはずだ

だがあいつからすればそれでも僕を好きになる要素があったから告白してきたのだろう

僕は翌月の1月に返事をした。

この時の僕はまさか告白されるとも思わなかったので、返事はどうすればいいのか、もしOKをして付き合い始めたら何をすればいいのかなんて告白されたことが無い僕にとっては新鮮な事であり不安なことだったのだ。

だが、それでも僕はあいつへの興味が勝り、付き合う事にした。

返事をした日に、彼女となったあいつと映画を見に行った。

その映画は僕は全篇見たが彼女は初めて見たらしい。

なぜ僕の要望を飲んだのか聞くと「玲ちゃんが好きだから玲ちゃんの好きなことを好きになろうと思ったから」と言われ、僕は心の中で踊った。

それからは毎日連絡をしあった

僕はそれだけで充分幸せだと思っていた。

それから3ヶ月が経ち僕達は中学3年生になり、受験生となった。

そして僕は引きこもりになった。

理由は特に無い。いじめられてはない。なにもされない。ただ、彼女が他の男子と話しているところを見ると嫉妬するだけの学校生活に飽きたのかもしれない。

時は流れ夏休みになった

僕の地元は夏休みにお祭りがある。

僕は勇気をだして、彼女を祭りに誘った。

彼女と行った祭りは僕の人生の中で1番楽しく、周りが輝いて見えた。

祭りから帰ると、彼女から連絡がきていて、見てみると…「夏休み明けからはちやんと学校来てね!」だった。

その時の僕は既に決めていた。

その思いを彼女に伝えた。「絶対行くよ!」と

そして、夏休みが終わり学校が始まった初日、僕は学校を休んだ。

その日はひっきりなしに彼女から怒りの〇〇(LINE)がきたが僕は見るだけでなにも言わなかった。いや、ただ言えなかったのだ。彼女を裏切ったのは僕の方で、悪いのは全て僕だから、僕が何を言っても彼女は信じてくれないだろうと、わかっていたからだ。

そして、夏休みが明けてから2週間後に僕達は喧嘩別れをした。

それからの僕は余計学校に行かなくなった。

夏休み前は何とか遅刻しても1週間に2回は行っていたのも今となっては全く行っていない。

学校からの電話もすべてとらなかった。

そんな毎日を過ごしているといつの間にか12月になっていた。

僕は学校に行かなくとも、高校の事はちゃんと考えてあり、試験日は12月始めで、すでに受かっていた。つまり高校は決まっていたのだ。

世間は12月25日のクリスマスの話で持ちきりだ

当然僕には関係ない。今までと同じく何もせずにクリスマスを終わらせるつもりだった。

だが僕は彼女の事を忘れられなかった。

そんな僕がとった行動はクリスマスの日に、受験勉強をしているであろう彼女にお菓子を渡しに行く事だった

近くのスーパーでお菓子を買い、ペンを借りてメッセージを書いた。

凍える手で自転車のハンドルを握りしめ、冬特有の寒く、乾燥した風を一身に受けながら僕は自転車を漕いだ。

そして、やっと彼女の家に着く

インターホンを押し、出てきたのは彼女のお母さんだった

どうやら彼女は息抜きに散歩に行っているらしい。

彼女のお母さんに買ったお菓子を渡して僕は家に帰った。

それから月日は経ち高校へ入学してから2週間後の事だ

元彼女が僕の家に遊びに来ていた

「また付き合う?」

と彼女に言われたので僕は即答した。

「付き合いたい!」

それからは前と同じような生活かと思っていたのだがそんな事は無かった

何しろ彼女とは別な高校で、お互いバイトをしている身だ。

会えない日が続くが、それでも放課後30分だけでも会うことは可能だったので僕は会いたいと連絡し、会っていたのだ。

時は過ぎ、5月になると会えない日が続いた。

そんな時期からだ

彼女が僕を避け始めたのは。

どうしようもなくなり、僕は友達に協力してもらい、彼女に伝言を伝えた。

「〇月×日17時に公園に来て」と

当日彼女は10分遅刻で来た。

「単刀直入に聞く、なんで僕を避ける?」

と聞いたが返事は曖昧だった。

「バイトの時間があるから行くね」

と彼女は去っていった。

消化不良としか言えない出来事だ

それからというもの彼女はとことん、今まで以上に僕の事を避けた

2週間後に彼女から突然連絡がきた。

それを見た僕は虚無感に襲われた

「別れたい」

たった一言だ

その一言だけが僕のことをここまで追い詰めたのだ。

僕は返信することを躊躇った。

だが、親しい友達にも相談を乗ってもらい何とか返信した。

「僕は別れたくない、なんて別れたいの?」

彼女はこう答えた

「あなたのことが好きじゃなくなった。それと他に好きな人ができたから。そして今その人と付き合ってるから」

ただそれだけだ

「よし、別れよう」

僕は数秒で決心した。

ふと気になったことがひとつ。

彼女はいつから他の男と付き合っていたかだ

「いつから付き合ってたの?」

僕は勇気をだして聞いてみた

「玲ちゃんと付き合ってる時から」

その文を見た瞬間僕はスマホを投げ出し、パソコンを開き文章を書き始めた。

僕は別れると言ったがまだ彼女のことが好きだったのだ

だが、あの一言で僕は絶望を通り越して、なにも思わなくなった。

生まれて初めて人に裏切られた。それも最愛だった人に…

それからというもの単位を気にせず毎日休み一日中ぼーっとするか、パソコンに向かい文章をうちこむかの毎日だった。

僕が家を出たのは1週間後だった。

ーーーーーーーーーーーーーーーー

今僕は屋上にいる。

120階建てのビルだ。

その上で僕は最後の文章をうちこんだ

「僕が家を出たのは1週間後だ」

うち終わったので僕はパソコンの設定を変えて、パスワードを無効にした。それから持ってきていた付箋にボールペンを使って「中を見たければどうぞ。ですが、悪いのは誰でも無いです。」

と、書いてパソコンを閉じ、その上から付箋を貼り付けた。

もうやり残したことはない。

ビルの柵を乗り越える。

そして、崖っぷちに立たされた主人公のような感じでギリギリに立つ。

目を瞑り、1歩踏み出した。

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