第8話 吾輩はモノが直ぐ腐る夏が苦手である
夏!
一瞬たりとも気を抜けぬ日々。
それは我輩にとっての戦いに明け暮れる毎日。
この時期になるとロクなことは無い。
特に健康面での不安要素が格段と上がるのである
公園で猫缶を吟味していたある日。
酸味が利いて夏場にはサイコーだなと思った直後、下痢。
商店街の魚屋ではツーンと刺激臭のする刺し身のプレゼンツ。
中毒を予防するための何かをほどこしてあるのだろうと思い、食せば即、下痢
肉屋の主人が珍しく松阪牛をくれる。
深緑色で糸を引くほどに熟成された超高級品と丸のみにするも、長期間、下痢。
さすがにババァの駄菓子屋ではそんな商品なんてないだろうと安心の訪問。
お菓子に天ぷらを混ぜるといったトリッキーな技を展開且つ中身がイカ、下痢。
度重なる脱水症状に見舞われ、パン屋の前で倒れたところを主人に保護される。
しかし娘から水分補給を理由に変な臭いがする液体を無理やり飲まされ、下痢。
中身は何だったのだろう?
もしかして我輩で実験してた?
精力をつけようとウナギ屋へ。
血で赤く染まる生の身を貰い、食した途端に襲う激しい痙攣そして、超下痢。
このままではマズイ。
どこかで給水しなければ本当に死んでしまいそう。
〝ドブ〟なる通路脇へと注ぐ栄養満点の結構臭う水を顔面浸してがぶ飲み。
下痢オア下痢アンド下痢オブ下痢さらに、下痢
それでもめげずにいつもの日課を熟す。
幸いどれも数日寝込むぐらいの初期症状で収まった。
毎回川を渡る夢を見るも、いつも渡り切る一歩手前で目が覚めるのはなぜだろう?
あの川はいったい……
そんなある時、美也殿に捕まってしまう。
我輩この時ほど死を間近に感じたことはなかった。
「あ! ニャゴローなんか弱々しくない? 風邪かなんかかなぁ? よし、菌を追い出すためにこの魔法の粘土を塗ったげる!」
それは緑色のキャップと黄色のキャップで中身も同色なネリ状の物体。
なんだろう?
「粘膜からくるらしいから目、鼻、口にはワサビを、お尻の穴とチンチンの先っちょはからしね。これで明日から元気をとり戻せるわよ!」
美也殿の言っているそれが何を意味するのかは分からないが、その後体中の体液が全て噴き出すほど痛くて苦しかった覚えが少しだけある。
何故少しだけかって?
それは勿論気絶したからだ!
それでも不思議な事に、目覚めると痛みも苦しさもスッカリなくなっていた。
日中殆ど仕事にならなかったこの日。
それを補うため、真夜中も働くことにする。
夜勤は涼しくて今の時期に向いておるからな。
そんなワケで、それでは今回の業務内容を報告しよう。
美也殿の眠る布団の中へ潜り込み、股の部分に大量のオシッコをしてやること。
結構命がけな任務だな。
それだけにやりがいはあるが!
次の日号泣ながらも我輩を睨む美也殿を見て、まだまだ戦いは続くなと思った。
注:おねしょしたと母上から雷を落とされた
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