四日目
差し入れ騒動が起きた翌日。
満島は見るからに不機嫌な様子で劇場へ現れた。
幸いにも口腔内の怪我は大事に至らず、多少注意することはあれど問題なく舞台には立てるとのこと。
口を閉じていれば、普段と何ら変わりない。
そんな満島は受付を素通りし、立ち止まることなく去っていった。
道中ですれ違う裏方や関係者に挨拶されても無視し、目的の場所まで脇目も振らずに歩き続けている。
目的の場所というのは衣装保管室。蒲笈からの指示で、この日は自分の控え室ではなくそちらへ直行しなくてはいけなかった。
満島が通り過ぎた後、劇場の受付嬢らがひそひそと語らう。
「あれが浅山さんの後釜?まだ若いようだけど……」
「随分と態度が大きいとは聞いていたけど、あそこまで横柄な人だとはね」
「あの子が来てから二人も辞めさせられたんですってよ」
その告げ口に他の受付嬢らがざわめく。
「今までそんなことなかったわよね」
「なかったわよ。だから何かあるのよ、あの子」
「どうせ蒲笈さんに色目使ってるのよ、はしたないわ」
「浅山さんはそんなことしなかったのにねぇ、私達にも良くしてくれたもの」
そう言って溜め息を溢す。
彼女らもまた、浅山の死を深く憂いているのだ。
満島が完全にいなくなったのを確認し、受付嬢の一人がその場の全員に向けて小声で呼び掛ける。
「いっそ、関わらない方が良いかもしれないわね」
その意見に同調し、受付嬢らは深く頷いた。
そんなことが行われているとは知らず、満島は目的の衣装保管室まで辿りつく。
扉前の廊下には既に数名の役者が揃っていた。佐々木、名瀬、高柳、小野の四名だ。
彼らもまた、次の劇で着用する衣装合わせの為に朝から呼び出されているのだ。
満島の到着に気づき、口々に挨拶する。
流石に彼らは無視できないのか、ぽそりと挨拶を返した。
最初に話題を切り出したのは名瀬だ。
「我々は少し前に来たところです。あなたもこちらに用事が?」
「……衣装、今日の朝には着れるようになるって言われて」
「そうでしたか。ですがそれは厳しいかもしれませんね」
眼鏡を軽く押し上げながら、名瀬は話を続けた。
「衣装保管室から啜り泣く声が聞こえていまして。どうやら只事ではないようです」
「なんで誰も中に入らないの?」
「ノックをしても返事がない、でも中に人がいるのはわかってる。そういう時は部屋に入らないのがマナーでしょ?」
と、佐々木が刺々しく言い放つ。
彼女の口出しが気に入らなかったのか、満島は強く反論する。
「でもぉこの部屋に用事があるんだからぁ、開けたっていいでしょ?」
「いいえ。中にいる人の返事を待つべきよ」
鋭い眼差しで否定する佐々木に対し、満島は眉間に強く皺を寄せた。
彼女らはどこまでも反りが合わないようだ。
「中の人なんて知らなぁい!しおりはここに用事があるんだもん!」
と言って、佐々木の制止を無視して満島は取っ手を握った。
満島が扉を開け放つと、その場にいた全員が泣き崩れている衣装担当の女性を目にする。両手で顔を覆い、肩を大きく震わせている泣いているのだ。
彼女の近くに立つトルソーには、ずたずたに引き裂かれた桃色のワンピースが着せられていた。
啜り泣く衣装担当に詰め寄り、満島は声を大きくして問い掛ける。
「どうして私の衣装がこんなことになってるのぉ!?」
「み、満島さ、ん……すみませ、すみません……ごめんなさいぃ……」
そう言ってまた一層泣き出してしまった。
そんな状態の彼女に向けて、もう一文句言おうとしていた満島を引き剥がしながら、佐々木が冷静に注意する。
「もっと泣かせてどうするの。どう考えても彼女のせいじゃないでしょ」
「だって、だって、しおりは―――」
「まずは状況整理から。何をするにしても基本だよね」
言い訳を並べようとした満島に高柳が被せた。
「小野ちゃん、この子頼むわ」
そう言って佐々木は小野のもとへ連れていく。
「は、はい!任せて」
こくこくと頷き、衣装担当の女性を優しく抱き寄せる。
衣装担当を小野に任せ、残る四名で状況整理を始めた。
「まず、被害が出たのはこの桃色のワンピースだけ。これは誰の衣装かな?」
高柳の問いに満島が挙手して答える。
「しおりのなんだけどぉ、仕立て直しが終わってたはずなのぉ」
「それが今日来てみたらこの状態、ということだね」
ふむ、と小さく呟いた後、高柳は続けて質問した。
「これが君の衣装だと知っている人は?」
「知らなぁい。しおりと蒲笈さん、あとそこの人とかぁ?」
要領を得ない証言の後に、名瀬が発言する。
「私がこの衣装を見たのは今が始めてです。衣装の存在を知っている人は限られるのでは?」
「僕もそう思う。この劇団で結構古株な自信はあるけど、この衣装を舞台で見た記憶はないかな」
「私もないわ。少なくとも自分が着たことも衣装選びの候補に挙げられたこともない筈よ」
佐々木も彼らと同様の意見を述べた。
「そうなると、一番意見を聞きたいのが彼女になるんだけど……」
そう言いながら視線は衣装担当へ向けられた。
視線が集まる中、言葉を発せられない彼女に代わって小野が返答する。
「まだしばらく話せないと思う、ゆっくりさせてあげて」
「そうだよね。まぁ、呼吸困難でも引き起こされたら大変だからね」
と、同調する高柳の意見に約一名を除いた一同が賛成した。
しかし、満島はどうにも納得がいかない様子だ。
「それじゃあどうしろって言うのよぉ、犯人は誰なのぉ?」
満島がその場で地団駄を踏むも、高柳は何食わぬ顔で両手を広げて見せる。
「悪いけど、僕は探偵じゃないんだ。犯人なんて分からないし推理も不得意、ただ推理小説が好きなだけさ」
「紛らわしいことしないでよ!めんどくさぁい質問ばっかりして、自分が犯人ってことを隠そうとしたんじゃないのぉ?」
そう言って、高柳を指差す満島。
当の高柳はやれやれと首を振って否定する。
「いやいや、僕が犯人なわけないでしょ。もしそうなら自分から状況を整理したりしないよ」
と、軽く笑って流す。
高柳の態度が気に食わなかったのか、満島の顔は赤くなる一方だ。
そんな彼女を放置し、高柳は引き裂かれたワンピースを観察し始めた。
感情が爆発しそうな満島に対し、名瀬が声を掛ける。
「現状で我々ができることはない、それだけ分かれば十分だと思いますが」
「でもでもぉ、それじゃあしおりはどうしたらいいのぉ?」
やや可愛い子ぶった言葉選びをしているが、その表情は内にある負の感情を隠せていない。
忙しない様子の満島に対し、溜め息を吐きながら佐々木は言う。
「今ここで犯人捜ししたって仕方ないでしょ。時間がないんだから練習を始めましょうよ」
「そぉんなこと言ってぇ、あんたも怪しいのよぉ!この部屋に入れさせないように言ってさぁ!」
「今度は私を疑うつもり?少しは頭を使って話してくれるかしら」
「何よそれぇ、しおりが頭悪いみたいじゃない!」
怒り心頭の満島を佐々木は鼻で笑い、反論した。
「あら、違うの?それとも頭悪いのも猫被りに必要な演技なのかしら」
佐々木の怒りを煽るような言動に乗せられ、満島は言葉にならない声を上げる。
ややヒステリック気味な様子だ。
このまま喧嘩へと発展するのでは、と小野が心配していた時。
彼女は部屋の入り口に誰かが立つのを見た。
「ちょっといいかな?」
と言う声と共に、開け放たれたままの扉をノックされる。
その場の全員が衣装保管室の入り口を見ると、そこには蒲笈が欠伸混じりに突っ立っていた。
「一体何の騒ぎ?廊下の端まで聞こえてたけど」
頭を軽く掻きながら、部屋の中へ入る。
蒲笈が来たことで満島は可哀そうな自分を演じ始めた。
「蒲笈さぁん!助けてくださぁい!」
そう言って彼の胸に飛び込んだ。
蒲笈は先ほどまでの罵声を聞いてないと思っている満島に対し、やや冷めた目を向けるが自分から引き離そうとはしなかった。
「とりあえずしおりちゃんは落ち着いてくれるかな。あんまり怒ると可愛い顔が台無しだよ」
そう言って満島の頭を軽く撫でる。
「担当者もあんな感じだし、とりあえずみんなは劇の練習始めておいて。しおりちゃんは僕と控え室、行こうか」
「……はぁい」
そのまま蒲笈に肩を抱かれ、控え室まで連れて行かれた。
奇妙な距離感の二人を見届け、残った五人は続々と部屋を出る。
衣装担当の女性を一人にはしておけないということだろう、自分らが練習する場に椅子を持ち出して座らせておくことにした。
場所は変わって同時刻。
蒲笈と満島は彼女の控え室の椅子に向かい合って座っていた。
二人の間にある机にはそれぞれお茶が置かれ、それを飲みつつ話しているのだ。
話題は昨日の差し入れ騒動について、警察からの報告を蒲笈が伝えるというもの。
彼の話によれば、あのカップケーキに混入していたのはごく一般的な画鋲だと判明したのだそう。あの画鋲以外には他の混入物はなく、毒物などは含まれていなかったとのこと。
警察の見解では、市販のカップケーキの側面から押し込み、目立たないように紙カップへ入れてから箱に詰めたものなのだと。
箱に残っていたカップケーキを調べ、それらが裏付けされた。
思い返せば満島は、目先の甘味に目が眩んであまりきちんと見ずに食べていた。
自分の食い意地を恥ずかしく思い、少し俯く満島。
照れて何も言えなくなっている満島をからかうように蒲笈が言う。
「それにしても、しおりちゃんがあんなにお菓子好きだなんてね。今度ブランドのお菓子でも買ってこようか」
と、軽く提案してきた。
その言葉に顔を上げ、瞳を輝かせる。
昨日の一件から何も学んでいないのか、常軌を逸したお菓子好きなのだろう。
「良いんですかぁ!」
「ははっ、昨日あんなことがあったのに食いしん坊だなぁ。考えておくよ」
「もうっ!蒲笈さんのいじわるぅ!」
そう言って頬を軽く膨らませる。
二人が談笑しているところへ、扉からノックが数回鳴る。
「警察の方が見えました。応接室へ通しておりますので、お早めに」
「わかったよ。思ったより早いんだね」
不貞腐れるように呟きながら、蒲笈はのんびりと立ち上がった。
「警察が何の用事ですかぁ?」
小首を傾げて見せる満島の頭にぽんぽんと手を置き、蒲笈は答える。
「千幸の件でちょっとね。あぁ、後で昨日のこと話してもらうかもだから、準備できたら応接室においで」
「応接室、ってぇどこですかぁ?」
「ロビーの近くにあるんだけど、わからなかったらその辺にいる人から聞いてみて」
とだけ言い、蒲笈は控え室を出て行く。
廊下には二人分の革靴の音が響き、遠のいていった。
控え室に残された満島は、次第に引いていた怒りを沸き立たせる。
目に付いたのは壁の端に寄せられていた二人掛けソファ、そこに置かれていたクッションだ。つかつかとそこへ向かい、クッションに顔を埋める。
そのまま何やら叫ぶが、クッションがほとんどの音を吸い込んで本人でも聞き取れない。
しばらくそうしていた後、息を荒げて顔を上げる。
「自作自演ならまだしも、毎日こぉんなにいやがらせされるなんて!信じられない!!」
と、怒りの感情を吐き出した。
頭を掻き毟り、そのまま顔を両手で覆う。
再び怒りの波が来たのか、クッションに顔を埋めて叫ぶ。髪をぐしゃぐしゃにする。
その繰り返しを幾度か続け、ようやく落ち着いた頃には化粧もすっかり落ちて髪も乱れ放題。
「あは、全然可愛くないや」
自分の感情に任せて暴れた後の姿を見て、あっけらかんと笑う。
ふらつく足取りで残っていたお茶を飲み、ゆっくりと息を吐く。
「そういえばぁ、蒲笈さんが呼んでるんだったぁ」
呟きながら再び鏡を見る。
「これじゃあ、いけないやぁ」
薄く笑いながら化粧台の前に座り、改めて今の自分と向き合う。
乱れ放題だった髪を整え、崩れた化粧全て落として初めから丁寧に施す。
そうして自分の中で完璧な『可愛い自分』に戻れた満島は、鏡に映る自分に微笑む。
ふと、鏡で自分の背後を見ると、浅山のような姿を見た。
あの時に見た、浅葱色のワンピースに白い女優帽を目深に被っているのまで同じだ。
悍ましい光景を見せられた記憶が蘇った。
しかし、今の満島はあの時の恐怖より憎悪が勝っている。
「しおりがこぉんなに可哀そうなのは!全部あんたのせいだ!!」
そう叫びながら憎悪の剣幕で詰め寄る。
もう少しで喉元を掴み掛かれる、というところで逆に満島の首が掴まれてしまう。
「ぐぇぁ」
呻きが漏れたところへさらに追い打ちが掛かる。
小さい顎を強く掴まれ、そのまま口をこじ開けられたのだ。
「なにぃ、すうのぉぉ?」
と、閉じれない口で訊ねる。
抵抗しようにも首を強く鷲掴みにされているせいで、両手を思うように動かせないのだろう。彼女の中で怒りより恐怖が段々と勝ってきている。
そんな彼女に対し、言葉を返す者はいなかった。
浅山らしき者は満島を床に座らせるよう、首を掴んだまま誘導する。
何が起こるかわからないまま、満島はそれに従って膝立ちの状態になった。
そして空いた片手でポケットから半透明の容器を取り出し、指で弾くようにして蓋を回し外す。
これから何が行われるのか、満島の頭にはあの時の浅山の姿が鮮明に浮かび上がった。彼女の恐怖心はさらに高まっていく。
抵抗しようと藻掻いてみるも、首を強く握られるのみで状況は何も変わらない。
むしろ息苦しさと恐怖だけが増えていき、満島の目に涙が溢れだした。
「うぅ、あぁぁああ」
と、嗚咽にも似た掠れ声を上げて泣き出す。
だが、それでもこの状況は悪い方へ進んでいく。
容器に入っていた透明な液体を口の中へと流し込まれ、満島は段々と口腔内が焼け爛れていくのを感じた。
声を上げようにも体の内側から次第に溶かされていくような感覚。
肉も骨も、構わず焼き焦がしていくような、言い知れない激痛。
シュウ、シュウウ。
何かが燃え、焦げる音。匂い。
満島は理解するのを拒んだ。
だが現実に起こっていることは覆されない。
そして次第に息ができなくなっていく感覚が、満島の恐怖をさらに加速させる。
しかし無情にもその人は、容器に残っていた最後の一滴まで丁寧に流し込む。
容器に入っていた液体を全て流し込むと、満島から手を放しすぐさま距離を取った。
そのまま満島は支えられることもなく床に崩れ落ちる。
訳も分からず自身の喉やら体を掻き毟ると、触れた指が黒い泥のようなものがへばりついていた。彼女はその黒い泥に見覚えがあった。
滲む視界、理解を拒む脳。抑えきれない好奇心。
満島は這いつくばるようにして、ゆっくりと近くにある姿見へと視線を向けた。
鏡に映る自分の姿を見て、満島は苦悶の表情を浮かべて泣く。
声は出ないまま、ただ涙だけが溢れては黒い泥に消える。
襲い来る強い痛み。段々と崩れ落ちていく自分の肉体。
床に落ちる黒い泥か肉塊かわからない物体も、シュウシュウと音を立てて蠢いている。
あの時、あの瞬間、浅山らしき者が見せてきたあの光景。
それが今の自分なのだと知ってしまった。
いつの間にか浅山らしき者の姿は見えなくなっていた。
だが、満島にとってそれはもはやどうでもいい事なのかもしれない。
これから彼女に待ち受ける絶望の前では、誰も彼も必要ないのだから。
こうして、満島しおりは激痛と薬傷の果てに死へと至った。
蒲笈が満島の控え室に足を運んだのは、彼女の死後一時間後のことだ。
数回ノックしても返事がなく扉を開けたところ、満島が床で変わり果てた姿になっていた。
床に伏せるようにして倒れている為、角度が違えば寝ているようにも見えるかもしれない。
だが、それでも床に接している体はどす黒く焼け爛れ、鼻から下の肉体が曖昧になっている程だ。
そんな満島の死体を見て、蒲笈は目を大きく見開いて驚嘆の声を上げる。
「なんということだ……しおりちゃんが、こんなになっちゃうなんて……!」
と、絶句しているところへ、後から斉木が控え室へ入る。
「なんですか、この匂い……」
袖口で鼻を抑えながら蒲笈に訊ねた。
「さぁ、しおりちゃんから……いや、しおりちゃんだった死体からする悪臭だと思うけど、何なのかはわからないね」
そこでようやく斉木は満島の死体を目にする。
「み、満島さん……!?」
込み上げてくる胃酸をどうにか押し戻し、苦い顔をする斉木。
その一方で蒲笈は気楽な態度でふらふらと揺れている。
「まだ味見してなかったのになぁ、残念」
そう言いながら満島の亡骸の前にしゃがみ、色んな角度から眺めている。
そして、顔の辺りを見て吐きそうな表情をしながら立ち上がった。
「それにしても、気味が悪い死体だ。警察呼ぶなりしてさっさと片づけさせてくれないか」
後ろに控えている斉木に向け、声を掛ける。
斉木はというと、衝撃的な死体を前に顔を蒼くして言葉が出ないでいた。
そんな彼の反応を見て、やれやれと首を振る蒲笈。
「そんな顔しないでよ。何とも思えない僕が異常みたいじゃないか」
と言って、斉木の頬を指でぐいっと押し上げた。
無理矢理ではあるが、口元だけ笑わせられて滑稽な顔になっている。
それでも笑おうとしない斉木を見て、つまらなさそうに息を吐いて指を離した。
冷めた目で斉木を見ながら、蒲笈は指示を出す。
「それと、早いとこ次の子を呼んどいてくれる?たしか、千幸の下位互換がいただろう。あの子でいいや」
「……承知致しました」
気乗りしないものの、斉木は短く返事した。
蒲笈は斉木の肩を軽く叩き、控え室を出ていく。
残された斉木は目下の死体を前に、汗やら涙やらわからない液体が頬を伝うのを感じる。
斉木は情緒が掻き乱されながらも、蒲笈に任された仕事を遂行することにした。
満島の控え室を足早に出て、周囲に誰もいないことを確認してから隣の空き部屋へ入る。
部屋に備え付けてある電話のダイヤルを回し、受話器を取り奥底から声を絞り出す。
「……もしもし、警察ですか。あの、人が死にまして―――」
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