15日目<四軸低床車《よんじくていしょうしゃ》・前編>
簡単に言うと…
タイヤをくっつける軸が4本あって、荷台の地面からの高さが低いトラックのこと。
もっと極端に言えば、トラックを横から見てタイヤが4つ付いて見えたら四軸車。
前方に2軸、後方に2軸。で、ほぼ低床車。
比較対象に(三軸)
これはタイヤをくっつける軸が3本で、荷台が地面から高いトラック。
前方に1軸、後方に2軸
現在、街中でもっともよく見かける大型トラックが上記の2タイプ。どちらも、荷物を載せる荷台(後ろ)側に2軸付いている。
違いをまとめると…
1.軸が3本(高床)か4本(低床)
2.地上から荷台床高が高い(高床)か低い(低床)
3.積載容量が高床<低床
概ね、この様な感じ。
なのだが、低床車は扱いに気を付けないと……
➖➖➖➖➖
「うっ、プロフィア…?」
陽子が怪訝な表情を浮かべ、呟くのも無理ない。
ひと月ほど前に受けた『一発試験』の前後で、社長のくだらないダジャレのネタにされたあの忌まわしき日を、たった今、プロフィアを見て思い出したのだ。
(あ、誰か来る。)
陽子は、反射的にトラックの影に身を隠した。
(
眩しく輝くキャビンの影から、太の動向を窺った。
ーーーーザッ
小さい身体をさらに小さく屈ませていると、プロフィアのお尻の方から物音がした。
目をやると、
(あ、満子さん…。知らん振りしとこ。)
面倒は御免、といった具合で陽子は見なかったことにしようとした。が、そううまく逃げられない。
(陽子!陽子!シーーーッ!)
小声で言っているがそれでは聞こえるのではなかろうか、そんな勢いで声を掛けてきた。
(…あぁ、見つかった。)
陽子は天を仰いだ。
満子がこっちへ来いとジェスチャーするが、陽子は無視して太を追った。
「陽子、なにしてんの?呼んでんだから来て!」
満子は、わざわざ言いに来た。
すると陽子は、満子にシーーーッ!をお返しした。
「わ、わるい。お、来た来た。」
陽子に釘を刺され、満子は
「太、これに乗るらしいやん。お祝いにボルトキャップつけといたで……いいやろ?これ。二ヒヒヒヒ」
(………満子さん、また)
陽子は、満子が用意したボルトキャップと、あのいやらしい笑い方で満子の狙いが分かった。
満子も陽子の冷めた表情を見て、なんとなく居づらくなり、元の場所へ戻って再び太を観察しはじめた。
(誰もいないな…ちょっとだけ。)
あたりに誰もいないことを確認し、太は運転席ドアを開けた。そのまま乗り込むのかと思いきや、イグニッションスイッチを入れ、右側のキャッチ(ウィング、アオリの留め具)をはずし、車体後方の開ボタンを押してウィングを上げ始めた。
(く~っ!これ!この新車でしか味わえないこの感じ!まるでゲームソフトのパッケージを開ける時みたいな高揚感!)
そして右側のウィングを上げきり、いよいよアオリに手をかけて下げようとした時、急に腹が痛くなりトイレへ駆け込んだ。
陽子はチラリと満子を見た。
満子の焦らされて苛立つ表情が見えた。
すると、社長と玄三が陽子の後方、つまりウィングが閉まっている方で立ち話をしていた。
「僕は言うたことは、やらな気が済まんタイプやから乗せるよ!?」
「まぁ、社長がそう言うんやったらええけど、ワシ関係ないし。せやけど、
(え!?……!)
陽子は瞬時に悟った。
慌てて場を離れ、倉庫へ入った。
「なにしてんだ?陽子のやつ。お!フトシ戻ってきた!ククク」
なにやらぶつくさ言いながら戻って来たフトシは、若干不愉快な面持ちだった。
「いつもボクの前に白鳥氏が入ってるんだよな!ギリギリだっつーの!さ、おまたせマイプロフィア、続きをしようか。」
フトシは荷台の真ん中に立ち、一度ズボンで手を拭いてからアオリに手をかけた。そしてゆっくりおろし始め、アオリが地面と平行になったところでいったん止まった。安全のために、一気に下までおりないようになっている。いったん手を持ち変えて、下ろそうとするがなかなか下りない。
「ふーー!ふーーん!!ハァハァ、よっいしょーー!!ぎゃーーーん!!」
バーーーン!
「いたたたた~~アゴ打った~」
下りないアオリの上に腹這いで乗った途端、アオリは下り、フトシはそのままの姿勢で地面に腹うちした。
(ッシャーー!きまった!うへっ!はらうち!ま、たっぷり脂肪があるからクッションになったやん。)
満子は小さくガッツポーズをした。
「今、なんかスゴイ動物の啼き声せぇへんかった?」
玄三たちが気になって、プロフィアの方へやって来た。
つづく
15日目終了。
今日も一日お疲れ様でした!
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