11日目<イベント関係のお仕事4>

束の間の休息も終わり、鈴と陽子は仕事モードに入る。

大阪ドームの広さと、ライブの余韻が残る場内に、感じたことのない感覚を覚える鈴。そして、陽子の仕事ぶりを見て、改めて彼女の凄さに感動する。


➖➖➖➖➖



作業服のおじさんの妙な視線を振り切ろうと、鈴は運転席へ戻った。そして、運転席から陽子の様子をうかがった。


(声は聞こえないけど、ヨーちんがいろいろ指示出してる?なんだろ、作業が途切れないし早い。みんなテキパキ動いてる…。)


鈴はまだ、陽子の事をあまり知らない。

鈴がこの会社に入る一年程前、陽子は入社した。

それまでは埼玉で重量物を運搬、設置する会社に勤めており、当時から頭の回転の速さと段取りの良さは定評があった。様々な資格もこの時に取ったのである。


社内で陽子の事をよく知っているのは、玄三だけだった。


(すごいな、ヨーちん。)


鈴が感心している間に陽子の車は積込みを終え、空いているスペースへ移動させた。車から降りた陽子は、積込みのスタッフと話しながらこちらを指差している。


(??なんだろ?あ、そこに着けるのか。)


陽子は手招きして、鈴を呼び込んだ。

そして、所定の位置に車を停め、鈴に両ウイングを開けるよう声をかけた。


「お疲れ様です!よろしくお願いします!」

「挨拶はあとで。今は時間との勝負だから。」


陽子は早口で言った。

鈴は、仕事モードの陽子に凄みを感じ固唾を呑んだ。


「大丈夫、私も一緒にするから。」


その一言で少し緊張が解けた。

鈴は"ありがとう"と伝えた上で、出来る限り自分でやると言った。


「こういう重たいものはこことここを……」

「一回シャックルに通したらテンションかけやすいよ。」

「ラッシング取るときは突起部に干渉しないように……」


陽子は注意点だけを伝え、後は鈴にやらせた。

鈴も殴り書きだがメモを取りながら作業した。


「…っしょ!できた!」


時間との勝負、とは言え、こういう現場はこういう時にしか経験出来ないと思い、陽子は口出しはしたが、手伝わなかった。


「リンリン、ラッシング少ないから今使ったのあげる。」


と言って、追加で毛布2枚、角当ても渡した。


「じゃあ、みんなも元気で。リンリン出るよ。」

「え?あ、うん、ありがとうございました!」


鈴は、退場間際に陽子が言ったひと言がとても気になった。


(ま、いっか。)

いや、あまり気にしていないようだ。


この後、近くの倉庫で積荷をおろし、イベントの仕事が終わった。



11日目終了。

今日も一日お疲れ様でした!


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