7日目<出会い>後編
とある倉庫でアルバイトとして働いていた鈴。
ある日、一台のトレーラー乗りと出会う。
鈴はその運転手の一挙手一投足に魅入ってしまう。
はじまりはここから。
➖➖➖➖➖
あれから一週間。
(かっこよかったなぁ)
真紅のキャビンと、あの男のことが頭から離れない。
(トラックの運転手にあんな紳士もいるんだ・・)
今まで、真逆の運転手ばかりしか見てこなかったので、余計に衝撃的だった。仕事中も、チラチラと入構口を見ては、あの車が入ってこないかと気になって仕方がなかった。が、鈴の思いも虚しく、真紅のキャビンとあの男はあれからひと月経っても現れなかった。
(もう一回くらい会いたかったなぁ。レッドコメットトランスポートのななじゅうなな・・・。あー!もうダメ、こうなったらこっちから会いにいってやる!!・・・あの時のお礼も言わなきゃ。)
鈴はアルバイトを辞めた。
即日、Red Comet Transport社に入社希望のTELをした。
大胆とも言える行動力。
残念ながら、今は受け付けていないとの事。
「それなら!っと…」
どうしても諦めきれない鈴は、R.C.T社から一番近い運送会社を探した。
「あった!ここ!075…と。もしもし、お忙しいところすみません。面接希望の者ですが・・・普通自動車免許だけです。・・・はい、あ、ありがとうございます!はい、・・・わかりました。では、よろしくお願いします。失礼します!」ガチャ☆
もう止まらない。
(これでヨシ!)
大手紳士服専門店OOKIで揃えた就活5点セットに身を包み、履歴書、免許証、運転経歴証明書など忘れ物がないかチェックした。
こんなに真剣に就職活動したのはこれが初めてだった。とある倉庫では、私服で面接を受けていた。
「行ってきまーす!」と、家を出た。
面接を受ける会社は、自転車で20分の所にある。リクルートスーツのまま自転車を20分もこぐのは結構ハードだ。原付きバイクが欲しくなってきた。
社屋は川沿いにあり、視線の先には、雪化粧をした嵐山が見える。
「わぁ、きれい。よし、頑張ろ!」
鈴は気合を入れ、胸を張って、事務所へ入って行った…。
一時間後、面接が終わる。
どうやら社長に気に入られ、3日後から働くことになったらしい。
「なぜ採用なんですか?動機不純じゃないですか?」
「え!?入社希望やね?なに?(不思議ちゃん?)いや、業界に女性少ないし、ウチとしても若い女性社員入れて活気づけたいとの想いもあってね。…女性社員いるにはいるけど。君、楽しそうやし採用。」
の、ようだ。
「で、乗ってもらう車なんやけど、あそこにある4トン車ね。新車やで。」
社長は、ちょうど増車を考えており、タイミングよく鈴が面接を受けに来たのだった。
「すみません、まだ免許もってないです・・・」
「もちろんその後の事。車も主人を待っとるで、頑張って!」
「はい!よろしくお願いします!!」
帰り際、パートナーとなる『ISUZU FORWARD』の横へ歩み寄り、
まっててね。
と囁いた。
7日目終了。
今日も一日お疲れ様でした!
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