5日目<アルコールチェッカー>

読んで字のごとく。

装置に3秒間息を吹きかけ

『ウンテンシテモダイジョウブデス』と言われれば

『運転しても大丈夫です』

ドライバーは先ずこの装置と闘い、勝たなければならない。


➖➖➖➖➖


とある朝、満子は事務所のテーブルに置いてある新聞の見出しに食いついた。


「え~、『睡眠不足に起因する事故防止対策の強化』・・・『睡眠不足が原因で、居眠りによる事故が多発・・・』『国土交通省は事故防止対策として、ドライバーの乗務前点呼に睡眠不足の項目を追加。』か。」


「おはようさん。ん?満子、新聞なんか読むんや。明日、雨降るで。やめてや~、雨の中シート掛けせなあかんやん。」


出勤してきた玄三が、本気で明日の心配をしている。


「こう見えて、あたし、社会派!玄さんと一緒にせんといて。それに今日の昼過ぎから明日の晩まで雨降るで!」


ケラケラ笑い、勝ち誇った顔をした。


「ところでお前、大丈夫なん?」


「ん?なにが?アルコール?」


「せや。」


「なに言ってんの!昨日玄さんと一緒に呑んでたやん。出勤8時間前には酒飲まんとこって。そう決めて飲みに行ったやん。」


「せや。言った。」


「ほんで呑むの我慢して、そのかわり玄さん家で麻雀したやろ?あたし一滴でも呑んだ?呑んでへんやろ?」


「せや、呑んでへん。あれはマミーやった。」


「そやろ!なんでマミーやねんって思ったけど。」


「わしが好きやねん。マミー。」


「・・・」


「・・・」


「ま、まあ、吹いたらわかる事やしな。」


「せや。吹け。」


アルコールが抜ける時間を充分にとった自信はあるが、ここに来てびびってしまう満子。


「い、いくで。フーー~~・・ッパァ!ハァハァ」


ストローをくわえアルコールチェッカーへ息を吹きかける。

が、スイッチを入れ忘れていた。


「オイオイ満子くん。随分と慌てている様子だが大丈夫かね?息も続かない程、何か動揺しているね?」

玄三が小突く。

満子は腹が立った。

直ぐ、スイッチを入れ起動するのを待つ。

僅かばかりのこの時間が、永遠に感じるほど長かった。


『ストローヲサシ、ツヨクフイテクダサイ。』

ハァーーーっフーーーーーーー!!!!

満子は肺いっぱいに空気を吸い込み、一気にはきだした。


『ウンテンシテモダイジョウブデス。』


「っしゃーーーーーーーーー!!!」


「渾身のガッツポーズをする満子。天に突き上げたその拳は力強く、満子自身をあら \\!!ダーン!!//


ナレーション染みたチャチャを入れる玄三を遮るように、突き上げた拳を玄三の眼前に叩きつけた。


「勝ちゃぁ・・・いいんだよな、玄さん。」


「せ、せや。結果が全てとは言わんが・・・結果が全てや。」


「じゃあ・・・行ってくるよ玄さん。」


「事故るんじゃねーぞ!満子ぉ!」


最後は寸劇で締めた二人であった。




5日目終了。

今日も一日お疲れ様でした!



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