第4話 あなたが選ばれた人、『花救人(キュート)』なんです!

「誰もがこのひまわり、女王様の分身を見つけることはできなかったのよ。清く素直で純粋な心を持っている人でなければ、ひまわりの存在に気づくことはなかったわ。さらにあなたは、このひまわりのお世話をして咲かせてくれた。女王様の分身と、あなたの魂の波長がぴったり合ったからこそ、このひまわりは咲くことができたのよ。もちろん、『咲いてほしい』っていうあなたの気持ちが一番効いたのだけれどね」


「清く素直で純粋な心……わたし、そんなたいした人間じゃないんだけど……」


 そんなことを言われると、気恥ずかしくなってしまう。

 誰か対してかわからないけれど、申し訳ないような気持ちもしてしまうから不思議だ。


「人のことを羨ましいなって思うことだってあるし、落ち込むことだっていっぱいあるし……」


「それは誰だってそうよ。清く素直で純粋な人だって、神様や仏さまじゃないんだもの。そういう気持ちだってあって当然よ。あなたがこのひまわりを見つけたっていうこともだけれど、それ以上に大事だったことは、『咲いてほしい』って願って、願いながら毎日欠かさずお世話をしてくれた努力。このふたつがとっても重要なことなのよ」


 そう言われると、そういうものなんだ、と納得するしかない。

 だって、現に妖精やら異世界やらがかかわっているらしいし、なにより陽真には妖精の姿が見えている。妖精シルフィの言うことを疑ってかかればかかるだけ、いろいろこんがらがってしまいそうだった。


「というわけで!」


 改めて、妖精シルフィは、ビシッ! と陽真を指さす。


「あなたが選ばれた人、『花救人(キュート)』というわけなのよ!」


「きゅーと……?」


「この世界では『花を救う人』の略。ルイシュタルトでは『女王を救う選ばれし者』のことを『キュート』と呼んでいるの」


「なるほど、英語のCuteじゃないんだね」


 陽真は特別勉強ができるほうではなかったが、さすがにその単語くらいは知っている。

 シルフィは、うなずいた。


「もちろん、違うわ。でもお花はみんなかわいいし、女王様は花の妖精だから、『Cute』っていう意味でも悪くないわね」


 満足そうなシルフィは、陽真の周りをくるくると飛ぶ。


「わたしは女王様に仕えていた妖精の中から、この世界に派遣されてきたの。役目は、『花救人(キュート)』のサポートよ。わたし自身がパワー、女王様の魂の欠片を集めることはできないけれど、そのサポートをすることはできるわ」


「わ、わたしが集められるかな? そんなすごいこと……できるかな?」


 元来あまり自分に自信がない陽真である。

 尻込みしたけれど、シルフィに押し切られた。


「大丈夫よ! このひまわりが咲いたっていうことは、女王様との波長がばっちり合ったっていうことでもあるのだもの! 『咲いてほしい』って願ってくれた優しい気持ちと、お世話をし続けた努力する力。この二つもあなたは持っている。一緒に力を合わせてパワーを集めましょう! そして女王様をまた誕生させて、魔族を退けるのよ!」


「う、うん……」


 なんだか誕生日にすごいことになってしまった。

 陽真はまだ、夢を見ているみたいな気分だった。

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