第3話 理由は秘密
ご飯を驕ってもらった後、宿の部屋の前まできた僕は、ずっと気になっていた事をアルシャードさんに尋ねた。
「あの、アルシャードさん。どうして僕に声をかけてくれたんですか?」
「ふむん。何だ、ずっともじもじ上目遣いをしておったから、てっきり童が欲しいとでも言いだすかと思ったら……。そんな事とな」
「ふぇ、ち、違いますよっ」
顔の前で手を振って慌てて否定する。
僕なんかが、アルシャードさんみたいな美人な人と付きあえるはずないし、もしそうなりたいと思っても、そんなの、高望みも良い所だから、口に出したりなんてできやしないだろう。
アルシャードさんはじーっとこちらを見つめながら、口を開いた。
「お主に声をかけた理由とな……、ふむん、秘密じゃ」
「秘密……、ですか」
「簡単に教えてやっては面白みのない事じゃ。せいぜい悶々と頭を悩ますがよい」
面白がってるのかな。
でも、話したくない事だったら無理やり聞くわけにはいかないし。
「して、お主。泊まっておる宿はどこじゃ?」
「あ、無いんです。僕今夜……宿なしなので」
お金が尽きてしまったので、今日は野宿するしかなかった。
女の人の前でそういう事を言うのはすごく情けないけど、嘘をつくわけにもいかないし。
「何と、見た目と雰囲気だけでなく、そこまで本格的に貧乏だったとな。逆につきぬけとるな」
「はぁ……」
「ならば、仕方あるまい」
「え?」
部屋の扉を開けたアルシャードさんは、僕を手招きする。
「特別に童の部屋と同室になる事を許してやろう」
「えぇぇぇぇっ!」
驚きの声を上げてる僕を引っ張って、アルシャードさんは部屋の中へと連れてってしまう。
見た目や雰囲気からして、アルシャードさんは結構年上で、僕なんかまるで相手にされていないのは分かってるんだけど、それでも一つの部屋に女の人と男の人が寝泊まるするってどうかと思う。
そんな事を考えていると、アルシャードさんは何かを誤解した様だ。
「心配せんでも取って食ったりはせん。かといって、巷で噂されとるようにそっちの趣味があるわけでもないからの。ゆめゆめ勘違いするでないぞ。いくら童が男をパーティーに入れたがらんと言っても、それとこれとは別じゃ」
えっと、何の事言ってるんだろう。
早口で言われたからよく聞き取れなかったんだけど。
でも、男の人とは組みたがらないって聞こえたような気がするけど、本当かな?。
どうしてなんだろう。
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