第1話 出会い



 精霊使い。それはパーティーを組むには不人気ナンバーワンの職業だ。


「あの、パーティ組んでくれ……」

「あん? 雑魚精霊使いがウロチョロしてんじゃねぇよ」

「ひっ、すみません」


 僕は、依頼斡旋所であるギルド内をかれこれ、もう一時間以上はうろうろしている。


 冒険者である僕は、一緒にパーティーを組んで冒険してくれる人を探しているんだけど、なかなか見つからない。


「おい、またあの精霊使いがいるぞ。邪魔だから早くどっか行ってほしいよな」

「ったく、目障りなんだよ」

「うぅ……」


 隠しもしない罵詈雑言が飛んでくる度に居心地が悪くなる。

 僕だって早くここから出たいけれど、パーティー組んで依頼を受けてお金を得なきゃ生活できないんだ。


「もう後、百ニコルしかないのに……」


 ぼくのお財布の中身はピンチだ。

 平均的な安いパンが大体一つ百ニコル。

 今晩の夕食に使ったら明日の夕食代が亡くなってしまう。


 え? 朝食と昼食は食べないのかって?

 ……。

 人間は一日一食でも意外と生きていけるよ?


「顔が貧しい」

「?」


 そんな事を考えていると、至近距離から女の人の声がした。


「雰囲気も貧しい。全身から貧乏オーラが出ておるぞ。まるで使い古されたボロ雑巾の様な男じゃな」


 ひょっとしてそれ僕の事言ってます?


 視線を向けると、そこには綺麗な女の人がいた。格好良いと言い表してもいいかもしれない。

 背が高くてすらっとしていて、良くできた人形の様な体格をしている。視線を上に向ければ、目を引くような色合いの燃える様な長い赤髪が主張する。顔立ちは整っていて、勝気そうな瞳がこちらを射抜いていた。


 服装は身軽そうなチョイスで、大胆に開いた胸元と、短いショートパンツが肌を多く露出をさせている。


 腰もとには剣の収まった鞘。剣士かな。


「のう、お主。生きてて楽しいか?」


 えっと……。


 返答に困るな。

 答えは決まってるけど、そんな分かり切ったこと言いたくないって言うか。


「ふむ、気にくわん。常にオドオドとしたその態度、視線、そして全身から放たれる貧乏オーラと貧乏臭さ」


 言いずらい事いっぱい言ってくる人だな。顔も勝ち気そうなら性格もそうみたいだ。


 さんざんにこき下ろしてきたから、てっきりその後も悪口を言われ続けるのかと思ったが、違ったみたいだ。


「のう、主……。童とパーティーを組まんか? いいや、組め。これは命令じゃ。拒否は認めぬ。ちょうど精霊使いが要り様だったのでな。他に見つかるまで主で我慢しておいてやろう」

「え、えええぇぇぇ!?」


 なんと、彼女はそう言って、僕をパーティーに誘って来たのだ。


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