第8話 ラシェータおばさんとナジェルおじさん
コハクによって連れて来られたのは、木造の小さな家だった。
「こんにちは! ラシェータおばさん、ナジェルおじさんいる?」
扉を叩いて出てきたのは若い女の人と男の人だった。
ニコニコした笑顔の、人が良さそうな人達。
「あら、コハクちゃん久しぶりねぇ。元気してた?」
「おやおや、今日はどんな用で来たんだい?」
そんな二人に、今まで裕司達に接してきたものよりは柔らかい態度でコハクが話しかけていく。
「ちょっと、野暮用よ。やらなくちゃいけない事があるから、武器をもらいに来たわ。約束したでしょ? 召喚魔法に成功したら、武器庫にある武器……何でもくれるって」
その言葉を言った時、目の前にいる二人は途端に表情を曇らせた。
(あれ、どうしたんだろう)
「コハクちゃん、復讐なんておやめなさい。復讐は何も生み出さないわよ」
「そうだ、コハクちゃん。友達だってそんな事は望んでないだろう」
二人はそう言葉をかけるのだが、コハクの決意は固いようだった。
簡単には言葉を覆さないのが見て取れた。
「ごめんなさい。でも私はもう決めたの。里を焼いた犯人を突き止めるって、あの子の墓に誓ったの。だから止めないで」
「……」
「……」
無言になってしまった二人の間を通り抜けて、コハクは家の中へと入って行ってしまう。
取り残された裕司達は気まずい。
「えっと……」
「貴方達は、どういった方なんですの? コハクの両親さんだと最初は思いましたけれど、他人行儀な所が見えますもの」
間を生めるように加奈が話せば、目の前の二人は重々しく口を開いた。
「私達はアルカミレスよ。こんな見た目ですけど、百歳は長生きしてるのよ」
ラシェータの言葉に裕司は驚く。
アルカミレスは人より長生きで、老化もゆっくりらしい。
「コハクは武器っていってましたわよね。何か兵士のような職にお付ですの?」
「昔の話よ。今はただの一般人。私達、コハクちゃんとは赤の他人だけど、本当の孫の様に思ってるわ。でも……」
「これ以上は聞かない方が良さそうですわね」
沈んで行く声に、空気を読んだらしい加奈がそう言って話は終わった。
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