第6話 取引成立
「コハクちゃん、そんなの駄目だよ。無断でここから出ちゃったら、怒られちゃうよ」
「裕司様の言う通りですわ。罰が重くなると、先ほど言われたばかりですの。私達が悪意ある不法侵入者ではない事は、クレハという方が証言してくれますから。ここから無断で出てあなたについていった場合、お尋ね者になってしまいますの。ここから出して、私達に何かメリットはあるんですの?」
考える前から答えは決まっているという態度で加奈は、コハクの言葉を拒否するが、相手の態度は変わらなかった。
不敵そうな笑みを浮かべて、裕司達を挑発的に眺めてくる。
「メリットは早期に自由になれる事かしら。私はクレハ様とはそれなりに仲が良いのよ。ちょっと無断で牢屋を出ちゃっても、後で謝れば許してもらえるわ。それにクレハ様はご病気なの。目覚めるのは一か月に一度あるかないかくらいだから、証言を待とうと思ったら、あと一か月は最低でも待たなくちゃいけないわ。その間ずっと牢屋にいる事になるのよ」
「はぁ、なるほど。そういう事ですの。私達を転移させた場所が、なぜあの場所だったのか、分かりましたわ」
得心がいった風に頷く加奈は額に手を当てて、ため息。
その姿に、理由が理解できなかった裕司は自力で分かりそうになかったので尋ねる事にした。
「えっと、つまりはどういう事なのかな。加奈ちゃん」
「コハクはわざと、私達をあの温室に召喚して、私達を不法侵入者にしたてあげたのですわ」
「ええ、そんな。ひどいよコハクちゃん」
「とんだ性悪詐欺師ですわね」
「策略家って、言ってもらいたいわね。で、どうするの?」
裕司と加奈は互いの顔を見合わせて、頷く。
「コハクちゃんに協力した方がいいかな」
「そうですわね、この方に協力した方がよさそうですわね」
そして、牢屋から脱走する事を決めたのだった。
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