第一章―③ ウサギと階段
扉を開けた途端、眩い緑の光が辺りに溢れた。
扉の先にあったのは、緑のトンネル。蔦や木々で出来たアーチが連なってトンネルになっている途中に、この階段へ続く扉が存在しているらしい。
「何かでこういうトンネル、見たことあるな。何て呼ばれてたっけ…。」
思わず呟くけど、返事は帰ってこないし、答えも思い出せなかった。
そもそも、こんな所にこんなトンネル、あるはずがない。この校舎のすぐ隣には、別の校舎があるはずなのに。そんな考えは煙のように、あっという間に掻き消える。
後ろ手に扉をそっと閉め、左右に伸びるトンネルを見渡す。トンネルの終わりは見えない。右を見て左を見て、もう一度右を見たとき、白いウサギ耳がさっと横切り、
「…遅刻する…」
という声が聞こえた気がした。緑色の明るいトンネルを足早に進む。足元に落ちた葉っぱが、柔らかな音を立てる。
ウサギ耳が見えた辺りに来ると、左側に扉があった。途中に他の出口は無かったし、この先もあるかは分からない。一つ息を吸うと、そっとその扉を開いた。
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