第37話

その黒っぽい何かは、やがて人の形となった。


髪をきれいに七三に分けてスーツを着てめがねをかけた、痩せて小柄な中年男性の姿に。


そしてそいつはやけに青白かった。


どう見ても生きている人間ではない。


「あっ、あれは?」


「この子の父親」


「はい?」


「この家の主人。この子の父親で、この子を殺した殺人鬼。まさかこんなところにいるなんて、考えてもみなかったわ」


「……」


「それにしても物凄い力ね。強い霊力は普通隠しきれないものなんだけど、見事に隠し通していたわね。すごいわね、あなた」


真琴が俺ととしやを見た。


「逃げて」


「えっ」


「えっ」


「見ればわかるでしょう。あれだけのおぞましい霊力。あなたたちにもはっきりと見えているはず。あいつは危険よ。しゃれにならないくらいにね。だから逃げて」


「……」


「……」


「はやく逃げなさい!」


「はい!」


「はい!」

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