第6話
懐中電灯でよく見てみると、戸と横の壁にU字型の器具が打ち込まれており、それをチェーンで繋いで南京錠でとめていた。
つまりもともと鍵のなかった戸を、後からチェーンと南京錠で開かないようにしたものだと思われる。
しかしこの完全放棄状態のこの家において、何故ここだけわざわざあとから開かないようにしたのか。
俺は南京錠を見ながら考えていたが、ふとその南京錠が思いのほか錆び付いていることに気づいた。
ためしに南京錠を思いっきり引っ張ってみた。
すると南京錠は少し抵抗しただけで、あっさりと壊れてしまった。
俺はチェーンをはずすと中に入った。
入るとずっと閉め切っていたせいか、かなり湿気ていた。
いや、湿気ているだけではない。
なんだか部屋全体の空気がどんよりと重いように感じられたのだ。
そして部屋の中には何もなかった。
押入れも空けてみたが、やはり空っぽだ。
ここ以外の全てがなにもかもそのままという風なのに、この部屋だけがきれいさっぱり何もない。
――ここだけ使っていなかったのか?
でもここは一家四人、父親と母親と子供が二人住んでいたはずだ。
右の部屋にはベッドは一つしかなかった。
そうなるとこちら側にベッドがないのは、不自然だ。
考えながら部屋の中をうろうろしていると、右足で何かを踏んだ。
硬いような柔らかいような感触で、土踏まずの部分よりも少し大きめの、それほど厚みがないもの。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます