リーズコレクション
契約を結んでお互いに手を出せなくなったからかブランディスは機嫌良く先頭を進んでいる。
対してマルクとゴルドは不機嫌だ。
話によるとブランディスはマルク達ととある遺跡で遭遇しており、その時に巨大なワームけしかけられその巨体故に街にまで多大な被害を出したのだと言う。
そして、そのワームの大暴れの余波は街だけに止まらず、このダンジョン周辺にも届いていて複数ヶ所に自然災害のような光景が見受けられるらしい。
今回私達が入ってきた地割れもその余波でできたもので、たぶん再生しないのは変な風に曲がって構成が狂ってしまったんだと思う。
単純に大きく破損してその位置だけ再生機能が停止してしまっている可能性もあるけど。
「………素晴らしい」
通路の奥にある扉が自動で開き、そこには沢山のアクセサリー類が雑多に置かれていた。
「それでは契約通り我輩から好きなように取らせてもうとしよう」
「もちろん」
そういう契約にしたからね、仕方ない。
ブランディスに呼ばれてショゴスロードも手伝いに行ったけど、シェリーから離れるのが名残惜しそうにしてた。
まあ、気持ちは分かる。
シェリーから漏れる魔力美味しいもんね。
………空気が美味しいとかそういう感じであって食事的な意味じゃないよ?食べれなくもないけどさ。
「む……なんだこれは?何も付与されていないだと……?
23番、コレが何か分かるか?」
厳選し始め少ししてブランディスが見つけたそれは透明な入れ物に入った腕輪だった。
ショゴスロードはそれを受け取り角度を変えてみたりして見るが、
「……私が初めから与えられている知識の中にコレに関しての知識は無いみたい。
ここにある紋章はリーズニアスが作成したリーズメタル作品に施される印だけど、これはリーズメタルの性質に似ているだけでリーズメタルには遠く及ばないように見える」
「なるほど、試作段階の作品という事か。
ある意味では価値ある物だろうが限りがあるのだからこれは無いな」
そう言ってブランディスは放り投げてしまう。
それがシェリーの方に飛んでいきキャッチしようとしたら、
「あ。……ありがとう」
「うん」
ショゴスロードが先にキャッチしシェリーに手渡し戻っていった。
「ねえサルタナちゃん、なんかこれ他のマジックアイテムと比べて凄く複雑だね」
シェリーに言われて気付いたけど腕輪は確かにとても複雑な模様が掘られている。
さっきショゴスロードが指摘したリーズメタルの印が腕輪の内側にポツリと存在し、表面にはこれでもかとビッシリと模様のような何かが沢山あって、それがまた美しい。
「もしかしなくても練習用の芸術品じゃないの?
もしくはリーズメタルでどこまで細かな細工を入れられるか試してみたんじゃないかな?」
うん、見れば見る程錬金術師としての実力差を感じさせてくれる作品だ。
マジックアイテムよりずっと欲しいかもコレ。
「………サルタナちゃん欲しいの?」
「え?何で分かったの?」
「何でって………えへへ、何でだろうね。
はい、サルタナちゃん」
むぅ、はぐらかされてしまった。
まあそれよりこんな良いもの手に入るなんてね。
本当はすぐにでも付けたいけど契約違反になっちゃう。
「シェリー、おまたせ」
一時間ほどしてようやく選び終わった。
そしてショゴスロードがシェリーにピアスを手渡す。
「これ、オススメ。
シェリーの魔力もっと美味しくなるよ?」
「え?美味しいってどういう意味?」
「言葉通りだと思うよ?実際美味しいもん。ね?」
「うん」
「え、え~っと、私知らないうちに食べられちゃってたの?」
「食べてない、舐めただけ」
「えっ!?」
うん、表現としてはそっちの方が正しいよね。
吸収してる訳じゃないから食べたとは言えないもん。
「そ……それってエッチじゃないのかな………」
「何が?」
シェリーが顔を顔を真っ赤にして頬を押さえてる。
何がエッチなの?というかエッチって何?
その単語初めて聞いた。
まあ………いいや。この腕輪付けちゃお。
カチリ、と心地良い音がして私の右腕に収まる。
うん綺麗。
「ねえ、それよりこれどうかな?」
「え?あ、うん!凄く似合うと思うよ!」
「そっか~、フフフ良かった。
じゃあシェリーも付けてみよっか?」
「え……それは………」
あらら、また照れちゃった。
可愛いけど何が悪いのかな?
「……嫌なの?」
ビクッとシェリーが跳ねる。
声かけるれるまで真横に立っていたショゴスロードに気付かなかったのかな?
まあ、お手本のように気配が溶け込んでいるから普通気付かないよね。
「い、嫌じゃないよ!でも……サルタナちゃん!ちょっと怖いから付けて!」
「うん、分かった」
「えっ?」
私に向けて差し出したピアスをショゴスロードが取ってしまう。
「えっと……よろしく」
「うん」
本当、かなり気に入られてるね、頑張れシェリー。
「幻狼、何か良いのあった?」
「ん?そうだな……私はここのマジックアイテムよりさっきの場所から持ってきたナックルガードの方が良いかな」
「ならいらねーんだな?」
「は?ナックルガードが一番良いってだけで誰もいらないなんて言ってないでしょ?」
ま~た喧嘩始まったよ。
何か良いのあるかな~………あ。
「ねえ、幻狼はこれなんてどう?」
「ん?ブローチ?」
「うん、1日3回まで一定以上の如何なる攻撃も無効にしてくれる力がある」
「おぉ!それは凄い便利。
でも早い者勝ちってルールなのにサルタナは良いの?」
「私はこの腕輪と余ったのだけで良いかな」
効力よりも作り方の参考にしたいだけだからね。
「なら遠慮なく貰うわね。
……うん、どうかな?」
「どう……そうだね、幻狼は茶色の髪と尻尾に対して濃いめの緑のロングスカートに白いシャツ。そして白いシャツから覗く黒い紐はノースリーブのシャツだよね。
どれもマジックアイテムで変えられないのは分かるけど、そこに赤いブローチ付けるならケープなんかも入れたほうが素敵だと思う」
「あれぇ?思った以上に具体的な指摘で驚いたわ。
もしかしてファッションとか趣味?」
え?別にそういう訳じゃ……
「あ、もしかしなくても姉さんの影響だ。
姉さんこういうの大好きだから」
「へぇ~、サルタナのお姉さんか、それは会ってみたいわね」
「う~ん、そうだね、ここ出て街に戻ったら紹介するね。
私の姉さんはラミアの進化種でね、私と同じ魔王様に名を貰った一人で……」
「ん……サルタナよ、少し待て。
魔王に名を貰ったと言ったか?ヒューマンであるサルタナが?」
あ、やっぱりブランディスもこの話題食い付くよね。
「そうだね、じゃあ簡単に説明しよう」
と、いうことで姉さんが私に溺愛しすぎていて、姉さんという超強力な戦力を四天王に入れるため仕方なく私を入れたと説明した。
他にも帝国がどれだけ腐りきってて滅亡すべきかを力一杯説明したお陰もあって。
「……シェリーを始末しようとした?」
「そう、私が釣れなきゃ地下室でシェリーを始末しようとしてたんだよヒューマンは!許せない!」
「許さないって……サルタナちゃん殺しちゃったじゃん」
「シェリーを殺そうとした。
それだけで死なんて生温い。
狂う事も許さず魂を捕縛するべきだった。
生ゴミがご馳走を腐らせるなんて決してあっちゃいけない」
「そこまでしなくても……あとその例えなんか嫌なんだけど」
と、ショゴスロードが物凄い反応を見せてくれた。
これならとても良い味方になってくれるかも。
私の指示も聞いてくれるようなら大きな戦力大幅アップだね。
「さて、これで全部分配できたね」
って言っても私はこの腕輪意外は要らなかったからこれ一つだけなんだけどね。
「よし、もう帰ろっか。テレポートで一気にそとまで行くから集まって。
んん、ちょっと集中……
分割思考……魔法範囲拡張………」
私は姉さんの魔石を額に当てながら魔石の魔力で魔法を発動させる。
「テレポーテーション!!!」
パリン………
「………え?」
浮き上がった魔方陣が音を立てて壊れた。
「おお、これは面白い」
「むぅ、面白くないよ!」
ブランディスも私もほぼ同時に気付いたみたい。
この部屋全体にテレポーテーションだけを的確に無効化する仕掛けが施されていた。
何このピンポイントな嫌がらせ。
「良いもん!なら部屋からでてもう一度……っ!?
いったーい!!!なんなのもうっ!?なんで意地悪ばっかり!」
私が部屋から出ようとしたら無色透明の魔力の壁が出入口にできているのに気づかず思いっきり鼻を打ってしまった。
本当なんでこんな意地悪ばっかりするの!?
リーズは持ってって良いって書いてくれてたじゃん!?
「サルタナちゃん大丈夫?」
「あ、うん、血は出でないから平気。
鼻少し打った……それよりどうしよう。閉じ込められた?」
「なら壊せば良い」
「え?」
ゴウッ!
私の真横から巨大な力が振り下ろされる。
異様に膨張した玉虫色の腕の一振りにより放たれた斧の一撃は容易に魔力の壁を粉砕した。
というか今の一撃、強化を疎かにしていたとはいえ私の目で追えなかったんだけど。
ショゴスロードとリーズメタル武具を合わせるとこれ程なのか。
これの軍隊って明らかに過剰戦力すぎ。
「これで大丈夫」
ショゴスロードがそう言った時だった。
ウーウー、或いはヴーヴーって感じの音が鳴り始める。
【ーーーーーーーー、ーーーーーーーーーーー!!】
続いて暗号化されなんと言っているか分からないけど、何かしらの言語で解釈できそうな若い女性の声が響き渡る。
「な……なにこれ?」
「分かんないけど早く出た方が良い!
ショゴスロード、シェリーよろしく!」
「分かった」
「ひゃっ!?」
ショゴスロードの見た目が二十歳くらいに変異しシェリーを抱える姿を見てから私もフォルトを尻尾で保護してゴルド達を置いてかない程度に加減して走る。
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