魔境探索
私の故郷、ホープシュタットのラストボーダーラインとまで呼ばれている門が存在していて、そを抜ければ弱肉強食が1秒で1回繰り広げられているとまで言われる危険地帯の魔境です。
「「「レイジスの酒を掲げて歌え~♪集え~♪明日へ希望を乗せて~♪」」」
そんな魔境の岩場地帯で手を繋ぎスキップして歌いながら徘徊するパッと見で8歳くらいの幼女と20歳前くらいの少女とたぶん15くらいに見られる少女?
しかも幼女は背中に幼女を伸せて尻尾で落ちないようにしてるんですよ。
まあ、サルタナちゃんフォルト君に幻狼さんと私なんですけど。
こんな状況になっているのは、まずお互いの戦闘スタイルなんかを簡単に教えあう、要するに自己紹介をしながら歩いてたんですよ。
その後地理なんかの説明をして、話すことが無くなった辺りで趣味の話に入ってから拗れた。
最初はサルタナちゃんが趣味として、味方の能力を底上げするオマケ効果を持つ舞ができるって話になり、幻狼さんが歌や演奏が趣味という事を話してそこからこの状況になっている。
なんというか……ヤバイです!
幻狼様と手を繋げてなんか凄く胸が熱いというか興奮するというか変なテンション私!!!
ちなみに、歌っている歌はレイジスの7大英雄と呼ばれている伝説の冒険者パーティに所属していたとされている1人、ドワーフ王の歌です。
私の身長が152、サルタナちゃんが138、フォルトが136くらい?そして幻狼さんが160㎝くらいかな?
真ん中幻狼さんで途中からこんな感じ。
「……おい音痴!いい加減黙って歩け!」
私達がおかしなテンションで楽しんでいると当然の指摘をされる。
なんか今更ながら気がするけど怒られて当然だよね。
これは仕方ないし謝ろうとしたら、「はぁ?」と幻狼さんが凄い殺意の籠った声を発してタイミングを逃してしまいました。
「こんな小さなサルタナちゃん達に音痴とか何言ってんの?
大人として恥ずかしくないの?」
「音痴はお前の事だ!!!」
「またそれ?寝言が言いたいなら永眠させるよ?」
「ん、やるなら手伝う!」
「頼むよ相棒!」
「んっ!!!」
サルタナちゃんと幻狼さんが背中合わせで構えを取る。
なんかこの二人スッゴイ速さで意気投合したなぁ。
ちなみに、幻狼さんの歌声は本当に音痴だったりする。
下手だけど自由に歌うのが大好きで良く歌う。
音痴なのを認めないのは自覚が無いのと、横笛が物凄く上手いから。
私はその美しい音色を奏でる横笛に魅了されて幻狼さんのファンになった。
流石に幻狼さんのような冒険者になろうとは思えなかったけど、私が楽器を習い始めた切っ掛けは幻狼さんなんだよね。
……最近演奏してないけど。
「あ、おやつ!」
「えっ!?ちょっと相棒!?」
サルタナちゃんが何か見つけたらしく、構えの体制からマルクさんとは全然違う方へ飛び付き岩の隙間に手を突っ込む。
「自由すぎる幻狼が振り回されるとは大物だな彼女」
「……あ~、うんマルク、今回は見逃してあげる」
「お、おぅ……」
サルタナちゃんのお陰で空気が冷めた、丁度良いし乗っとこ。
「サルタナちゃん何があったの」
「ふぇ?ふぁに?」
振り返ったサルタナちゃんがそれを咥えながら返事をする。
「………えっ!?」
「ぇ!?」
私もフォルトもそれには流石に驚いてどこから出したか分からないしくらい変な声が出た。
「さ……サルタナちゃん?それ、共食いじゃ……ない……の?」
「………あ~」
サルタナちゃんが咥えていたのは結構な大きさの蛇だった。
私の指摘を受け、何か言いたげに唸った後、すぐ蛇を丸飲みしてしまった。
「え、ちょっと……」
「あのねシェリー。
そうだな……幻狼、幻狼は狼系のワービーストだけど、冬場に見る売り物で狼の毛皮ってどう思う?」
「どう……暖かそうだなって思うね」
「つまりそういう事だよ」
「……そんなものなの?」
「当然だよね?」
「そうだね、猫の毛皮は中々無いけど狼の毛皮投げ売りされてるしそうとしか思えないかな」
そんなものなのか……うん、分かんない。
「それよりもうすぐだよ。
そっちの方にあるほぼ垂直の岩場を下るとその先にある森にダンジョンがあるよ」
「そっか、それなら能力使い直すから皆耳を閉じて。
すぅ~…………ガアアアアアオオオォォォォォォォォ………」
サルタナちゃんの小さな体からは信じられない程の低く、大きく、そして何より音そのものに重さが付与されたような振動が響き渡る。
ドラゴンの咆哮と呼ばれる能力らしく、弱い生物はこれだけで逃げ出すけど、込められた魔力より強い魔物は寄ってくる事がたまにあるらしい。
「寄ってくるのはね、うるせぇ!コイツ少し強いくらいで調子のるなよぶっ殺してやる!って感じかな~、咆哮ごときで全力出す訳ないのに馬鹿だよね~」
と最初に使った時にサルタナちゃんがケタケタ笑いながら説明してくれた。
「よっと。ほら、フォルトおいで……よっと!」
サルタナちゃんが真上から飛び込んできたフォルトを受け止める。
森へ入り歩き続け、大地にあった亀裂に飛び込むとそこは歪も天井も鉄に覆われた通路でした。
「ここがダンジョン……」
「ダンジョンの中でも珍しいけどね?」
「そうなんですか?」
流石幻狼さん、慣れてるって感じがしますね。
『こーーーんにーーーちはーーーー!!!』
私が感心しているとサルタナちゃんが魔族の言語で挨拶をか~なり大きな声でして廊下に響き渡る。
少し魔族の言語を理解できるようになってたので内容が分かるけど何で今挨拶?誰にしてるの?
『お邪魔しますよー!つまらない物かもしれないけどお土産持ってきましたー!話だけでもしてくれませんかー!
それとも……モガッ!』
「ちょっとサルタナちゃん静かに!!!」
マジックボックスからお土産らしき赤い石を取り出してアピールしてたサルタナちゃんの口を無理矢理押さえて止める。
「ちょっと、何シェリー」
「何って……何でいきなり大声出してるの!?」
「だってここに住んでる人に敵意はありませんよ、良ければシェリーにテイムされてくれませんか?って勧誘するのに丁度良いじゃん」
「あ、あれ?その話ここに来る前に無くなったんじゃなかったの?」
てっきりそっちの方が面白そうだからテイムなんて後で良いやって感じになってるのかと思ってた。
少なくとも私はそう。
だって幻狼さんって私の中での大スターと一緒に行動できる大チャンスだよ?
そんなの投げ出すに決まってるじゃん。
「ううん。無くなってないよ?
というより、人種の言うダンジョンって魔族が何らかの目的で作った巨大な家の事を指すんだよ?
本当の姿だと体が大きすぎるけどちゃんとお家で寝たいから作ったとか、研究の為に作ったり、宝物庫として作って番人も用意するとか色々」
「そうなの!?」
「うん、そうだよ」
人類史上永久の謎なんて言われているダンジョンの存在の謎が解明した瞬間である。
「……なるほど…………家、確かにありえるかもね、うん。
人類の価値観とは違うし、巨大なダンジョンの奥地でドラゴンが寝てたのも……」
「うん、仮眠室で寝てるだけだと思うよそれ」
「じゃあ側にあった宝はなんだ!?」
「何ってあなた達も光り物好きでしょ?それと変わらないよ。
側に置いといた方が落ち着く。
自室で寝てたら複数の賊が忍び込んでいて、その目線の先は自分と背後の宝。
そして自分には賊を簡単に殺せる力がある。
なら殺すよね普通?」
「その言い分だと俺達完全に強盗だな」
「………自覚無かったの?
だからこうして挨拶してた訳で、駄目なの?」
皆黙ってしまう。
うん、この言い分だと絶対サルタナちゃんが正しいね。
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