強い奴ら
「とうっ!」
ジャンプしくるりと宙返り、そのまま階段を過ぎ去り地下一階に華麗に着地。
「ん……あれ?思ったより弱そう?」
目の前の訓練場でまるで大きな白虎の男と、長い髪を持つ美しい狼のような女が対峙している。
男の方も女の方も大したことない?
あと、その周囲に気絶してるワービーストが何人かいるけど問題ないよね。
ってあれ?二人ともまだ来ないの?
「シェリー!フォルトー!早くー!うわっ」
私が二人を呼ぶと女と男が一斉に動く。
同時に一気に強い気配が膨れ上がる。
でも速さが少し足りないね、これだけ遅ければ私なら余裕で間に合う。
「こんにちは~」
間に入って挨拶する。挨拶は大事だもんね。
「ウオッ!?」
「キャッ!?」
一斉に二人とも飛び引いて私から距離を取る。
うん、いい判断。
「お前とお前、あとお前、強いでしょ?私も混ぜて~」
二人を指差して、最後に倒れている山羊の角を持つ男の人を指差す。
この若い山羊の人、魔力が膨れ上がったのに反応して一緒に膨れ上がったんだもん。
私の感覚は誤魔化せないよ~。
「……えっと、君名前は?私は幻狼って言うんだ」
そう言話しかけてきたのはさっき「キャッ!?」て可愛い反応した美しい狼のような女性。
背中よりも長い髪って手入れ大変そうだけど茶色いのに光を反射してて綺麗な髪だなぁ。
「げんろう?なんか変わった名前だね」
「一応私は希少種でね。私の一族で受け継がれる古代の名前だから。
私はもう三十二代目幻狼になるのよ」
「そんな前なのか~。あ、私はサルタナだよ!
じゃあ3人ともやろうよ!私入れて丁度4人だし!
こういうのバトル・ロワイアルって言うんでしょ!
そうなんでしょ!?」
「えっと……これ私達の個人的な喧嘩だから……」
「え?喧嘩だったの?」
腕組みしてる大きな虎みたいの筋肉男につい目を向けと幻狼が強く頷く。
「そう、あの分らず屋が予定通り山の方行こうって言うのよ。
せっかくダンジョン見つけたんだからそっちの方が面白そうじゃん」
「ダンジョン!!……さあ!2対2だよ!私こっち味方する!そっちの方が面白そう!」
「そーだそーだ!この分からず屋の筋肉魔術師ぃ~!」
「幻狼テメェ!」
「俺を巻き込むな……意味無く殴られるのは勘弁」
「そこに割り込んだゴルドが悪い!」
あ、だから倒れてたんだ。
もしかしてダンジョンでも山でもどっちでも良いって考えかな?
というよりこの3人冒険者パーティなのかな?
じゃあ他の倒れている人達は……あ、弱すぎて余波でやられたのかな?
友達のミリアーナと喧嘩した後ってどうしてもこんな感じになってたしね。
「よーし!2対1だよ!行けサルタナちゃん!」
「よし来た!バーストフレア!」
「なっ!?」
手の平から炎属性魔法弾を放つ。
それが虎みたいな男の足元少し前で爆発して目眩ましになる。
それと同時に私は無詠唱でストーンウォールを使い岩盤を出現させる。
「ナイス!」
「おっと……ハァッ!!!」
無詠唱で使う魔法は脆いからね、ワンテンポ送らせて殴り壊して石の礫として吹き飛ばす。
「死ねこの色魔ァーッ!!!」
「ウオォッ!!!」
私が砕く前に幻狼がストーンウォールを踏み台にし跳躍していて、礫の後に程良いタイミングで幻狼の踵落としが炸裂して地面が砕け、風圧で目眩ましが吹き飛ぶ。
けど残念、私の無詠唱のバインドが間に合わず避けられてしまった。
「テメー今の本気で殺す気か!!!」
「チッ、色街通いつめの男なんて死ねば良いのに。
あ、サルタナちゃんナイス!強いねサルタナちゃん。
もしかして私より強かったりするかもね」
「ありがとう。でも幻狼、今更だけどちゃん付けはまだ駄目、ちゃん付けを許してるのは姉さんとシェリーだけだから止めて」
「そうなの?ごめんね、気に触るならそうするね」
「ん。あと、私が強いのは当然、私は四天王最弱だからね」
「ん?へ~、そうなんだ?凄いね?」
なんでそんな頭をかしげるのかな?
まあ四天王がどれくらい凄いのか知らなけらば分かんないもんね。
「ま、参った参った!ダンジョンで良いから!
流石にこりゃ勝てねーって、てか本当に強いなガキ……いや、サルタナ。
お前ランク何だ?」
私達が気配を変えて構え直した瞬間投了って……男ならもっと頑張ろうよ。
なんかガッカリ。
「ん~……私のランクはCランクだよ」
「不満そうね。あれだけじゃ満足できないのも当然だけど。
この腰抜け」
「あ?」
「それよりサルタナならもっと高いはずよね?
ギルドがまたつまらない理由でこんな逸材を……ちょっと抗議してくるわね」
抗議……ランク上げようとしてくれてるのか。
少し前なら良かったけど今は勘弁だね。
「いやいや、友達が冒険者になったばかりだからパーティ組むのに丁度良いからしなくて良いよ。ね、シェリー」
「えっ!?あ、えっと……」
私がチャンバラ始めてしまって声かけられなくなったシェリーに話を振ると、ビクリと凄い反応された。
何に驚いたんだろ?
もしかしてランク離れすぎるとパーティ組めない規則知らなかったかな?
「……どうしたの?」
「あ、いや……このお方々はSランク冒険者だよ、サルタナちゃん」
「え?そうなの?」
「そうだよ~」
え……Sランクってこの世界に10チームもいない冒険者の最高峰だったよね?
そのSランクの強さがコレ?
いや、確かに本気じゃなかったし切り札もあるんだろうけどそれは私も同じだし、それでコレ……人類詰んでるんじゃないの?
私より強い人なんて魔族サイドには山のようにいると思うよ?
モル爺とか姉さんとかミリアーナと、ミリアーナが発生した原因の二人とか……というより私の実家だと私の実力なんて下から数えた方が早いくらいだよ?
「あの、幻狼さん、その……私、貴女のファンで……その、今こんな物しか無いんですけどサイン下さい!」
そう言って取り出したシェリーは護身用ナイフとペンを出す。
シェリーって冒険者のシステムとか詳しくないけど、冒険者パーティの名前はそこそこ……というより私よりは知ってるしね。
それにシェリーと同じワービーストでしかもSランクとなれば知らない方がおかしいのかな?
私はシステムくらいでパーティ名なんて知ったこっちゃ無かったけど調べた方がシェリーと話が弾むかも、今度調べよ。
「お、私のファンの子かぁ~。
普段は絶対ダメだけどサルタナの友達なら良いわよ。
本当に良いもの見せてもらったから、ねえゴルド?」
「そうだな、今の魔術訳が分からなかった。
術式を完全に隠す魔術だろうか?」
「う~ん……ないしょ」
さっきまで横になってた山羊の人が起き上がりそう聞いてきたけど、これはすぐには教えられないかな。
というか、この人強いのは分かるんだけど、この人がいる場所だけポッカリと何も無くなったように何も感じなくてね、気配消すの上手すぎて少し気持ち悪いんだけどこの山羊の人。
「もしかしてゴルドが気持ち悪いから教えてくれねーんじゃねーか?」
「不愉快極まりないけど同意見ね」
「五月蝿い黙れ」
ん……パーティ組んでるっぽいから仲良くて冗談で言ってる感じだと思ってたけど、もしかして本音?
仲悪いの?なんで???
「はい、これからも応援よろしく」
「ありがとうございます!!!」
本当に興奮して仕方ないって感じで大事そうにナイフを抱き締めて頭を下げてる。
うん、強いのは認めるけど、そんなになの?
そういえば虎の人名前まだ名前聞いてないや
「それで、そこの虎の人は何て言うの?」
「サルタナちゃん本当に知らないの?Sランクだよ?」
信じられないって顔された。
いや、そんな常識知らずみたいな……
興味なかったし、優先して調べる事なんて山のようにあったしね。
「え~、そんな事言われても興味なかったし忙しかったんだもん。
だから教えて、ね?」
「う、うん、しょうがないなぁ……
えっとじゃあ順番に……このお方があのスリービーストの特攻を勤める最強の素手格闘の使い手において頂点にいる幻狼さんだよ!
幻狼さんの活躍と来たらこの街にいたらまず聞かないなんて無いんだから!」
お、おぉ?こんなシェリー初めて見た。
それから説明を聞き続けてるけど中々止まらない。
なんか凄く語ってるけど、これどこで止めたら良いんだろ?
でもお陰で良く分かった。
元々冒険者はソロで上げられるランクの限界はBランクなんだ。
20歳越える前の限界はCランクだけどね。
何かしらの功績が認められた人は例外としてソロでもBやAランクになれて、Sランクになれるような例外となると一国の危機を単独で解決するくらいの実績が必要になるんだよね。
そしてそんな事件はそうそう起こらないのが現実。
起きないなら起こせば良いってバカのお陰で一度国が滅んだ歴史がある。
こんなアホなのにヒューマンってなんで絶滅しないの?
したって構わないんだよ?
それで、幻狼達は全員ソロでAランクなんだけど、Sランクでなければ幻狼達が踏み入れたい場所まで満足に行動する事を許されない。
無視すれば良いかもしれないけど、冒険者ギルドは便利だし、無視ばかりしてると最悪辞めさせられるし、辞めた瞬間から国に抱え込まれて戦争の戦略的武力として使い潰される可能性もある。
それを受け入れなければ指名手配され国で満足に行動できなくなったしてしまう。
1国家の所有物ではない、人類国家連盟組織である冒険者ギルドの庇護下にあるからワガママが許されているのであって、現状が最低限の譲歩であると3人とも理解しているからパーティを組んでるんだろうね。
尚、ギルドの戦力がどうしても欲しくて無理矢理国内にあるギルドを抱え込んだ結果、他国のギルド四方八方から襲われ、抱え込んだギルドからも納得してない方々が爆発して完膚なきまでに叩き潰された馬鹿なヒューマン国家があるという歴史がある。
帝国が面白おかしく改編した歴史の可能性もあるけど馬鹿すぎて言葉も出なかったのを覚えてる。
なんでヒューマン滅びないの?
というか絶滅しろ。
「そ、そうなんだ。
幻狼さんの事は分かったから次の人の事を教えて」
「いや、せっかくだし私がするよ。ここまで誉められると流石にこそばゆい。
それで、アイツはマルク。脳ミソが股間にあるような奴だからサルタナちゃんも気を付けないと食べられちゃうわよ?性的に」
「流石にこんな子供襲わねーよ!」
「聞いた?否定しなかったわよ?」
「言葉の綾だろうが!!!」
「うん、よく分からないけど最大限警戒する」
なんか唖然とした感じでマルクに見られる。
知らないって、色街とかって読んだ事はあるけど子孫を残すのにそんな面倒なことする意味が分からないし、劣等種がそんな事してたら絶滅するよ?
ヒューマンは絶滅して良いけどワービーストは困る。
「それで、ダンジョンって何処にあるの?
私達も行きたいんだけど行って良い?」
「う~ん……そうね、なら私と一緒に組まない?
マルク達より断然良い関係になれそうだし」
「あ?」
「事実でしょうが、同格がいないから半分くらい無理矢理組まされたパーティなんだし、私とアンタの仲の悪さはお互い認めてるでしょ?」
「……まあな。金を払われてもお前と一夜過ごすとかねーし」
「………本当にアンタ最低ね」
まあ、さっきの膨れ上がった力を見れば人種では同等に並ぶ人なんて中々いないもんね。
もし居たら私が帝国落とした時に少しくらい抵抗してくれてたからね。
まあ、そんな状態で、更に王なんかも含めた周囲のヒューマンを庇いながら私に勝てるものなら勝ってみろって感じがするけど。
それで、把握してる限りじゃ単純な能力だけなら幻狼達より強い私だから実力的に申し分ないって事か。
「それでどうかな?」
「うん、良いよ~」
「やった!サルタナの腕前は頼りにさせてもらうわね。
それじゃすぐにでも行きたいんだけどどうかな?」
「ちょっと待て!俺も行かないとは言ってないだろ!?」
「チッ、五月蝿わね!来たいなら勝手に来れば良いでしょ。
私に話し掛けないでバカ!」
なんか、本当に嫌いなんだな。
二人の様子を見てシェリーに小さく耳打ちする。
「……ねえシェリー、二人とも本当にパーティ組んでるの?」
流石に仲悪すぎと思って聞いてみた。
ここまで仲悪いなら私だったらSランクで居続けるよりAランクになる事を選ぶ。
「うん、不仲は有名だけど大きな問題になったことはないから多少はね……」
「多少……」
まあ、死人出てないし良いのかな?
それから結局マルクとゴルドも来る事になって一緒に門へと向かう事にした。
あ、姉さんに使い魔飛ばしとこ。
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