サルタナちゃんかわいい
森から出たのはもう100年ぶりくらいになるのかな?
何らかの集落に訪れるってなったらサルタナちゃんを拾うよりずっと前だし500年くらいかな~?
そういえばロゥタルが見せた記憶のサルタナちゃんはあまり成長した様子なかったけど進化によって成長までの時間が延びているか私と同じで不老なのかも。
それならずっと一緒にいられるんだしあまり無茶しないでもらいたい所だけど、親としても姉としてもサルタナちゃんがすると決めた事に口を出すつもりはない。
ただ、サルタナちゃんがどうしようもなくなった時に助けてあげる。
それが私の役割で、私が今の魔王に付いていこうと決めた要因。
「これが魔王城……」
「仮です。"魔王城仮"ですから。
そこのところ間違えないでください」
「いやいや、覚醒したての魔王がどんなのかちゃんと理解してるから大丈夫、分かってるから」
私が前所属していた頃は既に戦いの折り返しに入るか入らないかって頃で城も立派だったけど、古参から話で聞いたものと、実際に見たものじゃ全然違うなぁ~。
適当に作った柱になる木材に無理やり板を張り付けたようなすきま風も雨漏りもどんとこいと言いたげな一軒家はなんとも頼りないね。
「それではアルカネットを入れて第五回魔王会議をさせていただきます」
「え?なにその名前ダサくない?」
私が作ったテーブルよりもデコボコしたのを囲んで始まった第五回魔王会議の最初の発言でシンって静まり返った。
あれ?そう思ったの私だけ?
「貴様!兄上が決めた名前が不満だと言うつもりか!!!」
「いや別に不満では無いけどさ、何で今怒鳴られたの私?」
素直にそう思っただけって言ったらまた怒鳴られる気がするからそれは黙っとこ。
「そんな怒鳴ってばかりいては弱く見えますよ?」
「私が弱いと言うのか!?」
「少なくともアルカネットさんは当然、私よりも弱いと思いますけど?」
「ぐ……ああそうかもね!それってつまりアンタらがその分長く生きたババアってだけの事だろ!」
「ば……ババア?」
「私もそこまで年食ってないけどなぁ。
そんな私から見ても二人とも生まれたても良いところなんだよねぇ……」
ドングリの背比べみたいな事で熱くなって二人とも子供だなぁ。
でもこう見ると可愛く思えてくるね。
サルタナちゃんは反抗期迎える前にヒューマンに委ねるしかなかったから新鮮。
「は?……そりゃ私はピチピチの213歳なんだけど、生まれたてはないでしょ?」
「あれ?サルタナちゃんより年下なんだね意外」
「サルタナは16歳ですよアルカネットさん」
あ、まだそんなもんだったんだ。
サルタナちゃんが居なくなってから一睡もしてないから時間の感覚狂ってた。
……いや、長く感じたのも当然ね。
サルタナちゃんが居なくなってから心配はすることはあってもとにかく退屈だったのだから当然だっただけ。
「てっきり500年くらい建ってたと思ってたんだけど……
まあ1日も100年そんなに違いは無いから誤差だよアハハハハ」
「おい……ロゥタルもコイツと同じ事言い出さないよな?」
「いや、流石にこれはおかしいですよ」
「そうか。だよな……」
むう、自分で言うのも難だけど私はおおらかな性格してるとはいえ傷つくものは傷つくよ?
確かに私は森に来た奴を積極的に帰そうとする変わり者って言われがちだけど、森で一番の新参者だったし私の時間感覚はまだマシな方なんだよ?
というよりあの森で時間感覚なんて概念はまず必要無いし。
「コホン、話が反れましたが今回話す内容はサルタナの事とアルカネットさんへの扱いなんですけど、私はアルカネットさんは四天王にしとかないと他に今後入る配下の指揮に関わると思うんですけどどうですか?」
「え?四天王って事は名付けするつもり?
先に言っとくけど私に名付けなんてしようとするなら殺してでも止めさせるからね?
これ以上強くなってサルタナちゃんに触れるだけで傷つけちゃうなんてなったら困るもん」
基本名付けの済んだ者に対して如何なる手段でも更なる名付けをする事はできないのが常識。
けれど魔王が四天王として選んだ存在は別というのも常識。
四天王とは魔王が名付けを施した特別な魔族部隊の事を指す。
魔王が名付けをできる数は魔王としての力に比例しており、四天王というのは初代魔王が四人にだけ名付けを施したからであって、他の魔王達を見れば二人だったり六人の四天王がいたりとまちまちだ。
そして名付けは魔族にとって様々な恩恵がある。
その中で最も分かりやすいのは何かしらの力を得る事。
私がこれ以上強くなってサルタナちゃんの頭を撫でる拍子に首を折っちゃったなんてなったら私は混乱と絶望で何しはじめるか分からなくなる自信がある。
「し……しかし…………」
「しかし何?」
「……そうか、分かった」
今まで黙っていたスマウグが口を開けて皆そちらに視線を向ける。
「ならサルタナにも名付けをすれば問題無いんだな?」
「「え?」」
「って事があってね、私とサルタナちゃんは家族だし双頭龍、頭片方づつってことで一緒にしてしまおうって決まった訳」
「それ……大丈夫なの?」
「スマウグちゃんの頭なら手遅れじゃないの?」
「違うよー!!!姉さん分かってるのになんでいつもそーゆーこと言うのぉ!?それにスマウグ様だよ!?」
スマウグ様ねぇ……
まぁ、お姉ちゃんはそんな世間体なんかよりサルタナちゃんが心配だな~。
だってサルタナちゃん他に同じ種族のいない完全ユニーク種族だった訳だし、それが更に進化して新たに龍種まで入っちゃって大丈夫なの?
あくまでもヒューマンでありながらドラゴンでラミアなんだよサルタナちゃんは。
これもうキメラって言った方が良いんじゃないかな?
「アハハゴメンね~。でもスマウグちゃんはスマウグちゃんだって」
「そんな呼び方で大丈夫なの?」
「お姉ちゃんの方が強いからね~」
「嘘ばっかり」
「私が嘘ついた事なんて無いでしょ?」
「………星の数ほどあると思う」
~っもう!
そんなジトッとした顔も可愛いな~!!
サルタナちゃん素直すぎてからかうのが楽しいのが悪い!
まあ、今回は嘘なんて付いてないのに少し悲しいなあ。
確かに今後私より強くなるかもしれないけど今は私に負ける要素が無いくらいだけど教えてあげない。
だってそっちの方が楽しそうだし。
「何お~!そんなこと無いぞ~!」
「あ!ちょっとそこ、だ……うはは!うきゃきゃきゃきゃ!!」
あ、お腹のところ弱いの全然直ってない。
進化しても変わらないんだねこういうところ。
「サルタナちゃん!?」
あら、サルタナちゃんのお友達のシェリーちゃんね。
「はぁ……はぁ……しぇ……シェリー助かったぁ……」
う~ん、この押し倒しちゃって涙目の弱ったサルタナちゃんもまた可愛…………ん?
あれ?サルタナちゃんの髪のこの辺……少し剥げてる?
まさか………ストレス?
…………………ちょっとヒューマン滅ぼすの積極的にいこうかしら?
「ね!姉さんもそう思うでしょ!」
「え?ごめんなさい聞いてなかった」
「むぅ~!相変わらずぼ~っとして!」
そうねぇ、私は昔から頭は良いけどバカだよねぇ。
逆にサルタナちゃんは昔からバカだけど物覚え良くて頭も良いわよねぇ。
そこがすっごく可愛いんだけど。
「今の姉さんがドラゴニュートみたいって言うんだよ!?
私も言われたけどそんなことないよね!!!」
「でもサルタナちゃん前認めたし……格好いいよ?」
「人種扱いが嬉しくないの!私は魔族!
そうでしょ姉さん!」
サルタナちゃんが興奮しすぎて嘘ついてるのに気付いてない。
珍しいわね。
「魔族は置いといて、そう言われれば似てるんじゃないかしら?」
今は人化で二足歩行だし羽あるし尻尾あるし間違ってないんじゃない?
「ね、姉さんの裏切り者ーっ!!!
良いもんフォルトに聞いてくる!!!」
とか言って走り出して………あっれ~?これもしかしなくてもサルタナちゃんはまぁ~るで成長してないんじゃないのかな~?
森にいた頃と同じでバカだけど……バカなのも可愛い。
「ちょ、ちょっとサルタナちゃん!?」
「あ、大丈夫だよシェリーちゃん。
すぐ戻ってくる」
「そう……ですか?
あぁ……サルタナちゃんのイメージが粉々に崩れ去っていく……」
「サルタナちゃんは昔からあんな感じの子だよ?
昔から覚えることは得意だけどどこか変わってるよね~」
「アハハ、そうなんですね。
……でも、フォルトは今稽古終わって皆でお風呂入ったばかりだから」
「いくら何でも人種はオスとメスで入る場所違う事サルタナちゃんは知ってるでしょ?
10年くらいここで住んでたんでしょ?」
「5年ですよ。
……人種はって事は魔族は分けないんですか?」
「種族にもよるけど大抵分けないわね。
そもそも複数固まるなんて事がまず無いもの。
ほら、ドラゴンなんかは面積大きすぎて体洗うのに一々分けてらんないでしょ?」
「……確かに」
その後サルタナちゃんが男湯に突入した挙げ句ドラゴニュート扱いされて完全に拗ねて良く分からない怒り方をし始めてしまい、私もそこらのオスがサルタナちゃんの裸体を直視した事にキレたりして一騒動があったらしいけど怒りすぎてあまり良く覚えてない。
気が付いたらロゥタルちゃんの夢の世界にご招待されていた。
うん、こんなに怒ったの何千年ぶりかな?
我ながらサルタナちゃんに依存しすぎね。
直す気なんて無いけど。
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