ロゥタル


 ガーランド帝国で今の魔族よりもよっぽど魔族らしい人種であるサルタナと出会ってから1週間程建った頃、私達は彼女の記憶の中にあった小さな村に訪れていた。


「これが噂に聞くヒューマンの都か」


「違います、何処をどう見てもド田舎ですよ?

寝ぼけておられるのですかスマウグ様?」


「……は?ちょっと待てあの長の家なんか魔王城より立派だろ?」


 私達の目の前にある一回り大きな木の家を指差し驚くスマウグ様に呆れてため息が出そうになったのを無理やり飲み込んだ。

 こんな洞窟の奥底に引き込もって出ないおトカゲ様が魔王なんて悲しくなってくるが前魔王様の遺言だしちゃんと現在の魔王を導かなければならない。


「確かにそうですね、私達に現在こういった建物を立てる技術や能力を持つ者はいませんからそれも当然でしょう。

 ヒューマンはこれを魔法でなく手作業で作り上げるのですよ」


「なんだと……ヒューマンを嘗めていたか………」


 嘗めるって……

 魔王として覚醒してまだ数ヶ月しか建っておらず、体が馴染んでないスマウグ様は魔力で右に並ぶものはそうそういなくとも肉体はワイバーンとかドラゴンの成底ないにも劣っていそうな状況だというのに嘗めるなんて馬鹿な事をしていたのでしょうかこのおトカゲ様は?


 そう考えると私の判断はあっていた訳か。

 少し帝国をつついてスタンピード後の後処理として他国に対しての報告をどうするのかを見てから今後を考えようとしていた。

 元々スタンピードの様子も過程なんかもどうでも良くて、準備だけしてオーガに指定の日時に襲うように指示して帰る予定だったけど、ただの気まぐれで帰る前に少しだけ町の様子を覗いた。

 そんな時に贅沢な魔力の使い方をして城に乗り込む気配を感じ取った。


 その認識阻害は確かに五感での認識は不可能な領域であり、拘束でもしなければ触れられようとも認識できない領域であったが魔力を感じ取れる存在なら過剰な魔力が原因で逆に察知されやすくなっている。

 だから簡単に気付いた。

 あれが人種が魔力をエネルギーとして使う魔法とは違う力ではなく、我々が使う魔法と完璧に一致している事に。


 人種があれだけの魔力を呼吸するように使うんだから興味を引かれるのは当然であり、力を持つ者なのだから殺せるようなら殺しておくつもりだった。

 けれどその存在、サルタナのヒューマンに対する敵意はこの私とでは比較にならない程に大きくて更に興味を引いた。


 最後にはあのラミア発言からのヒューマンへの並外れた嫌悪。

 それでも尚正々堂々とした、今時の上位魔族より魔族らしいどんな憎たらしい敵でもフェアーな感じで戦いを望もうとする姿がとても気に入った。


 だからこそサルタナの要求が通ってくれるよう全力を尽くす。

 けど、そんな努力は必要なさそうよね。


 何故ならあのアルカネットというラミア、間違いなく私より前に魔王軍として戦った存在でしょうし。

 そして、そんな長い時の流れを過ごした魔族が名付けで名を得たって事はそれはもう苦戦しそうよね。

 負けることは無くとも間違いなく私などでは勝とうなんて思って良い存在じゃないでしょう。

 私の能力はとにかく時間を稼ぐ事に特化してるんだよ。


「兄上も"夢幻泡影ロゥタル"もそんな事どうでも良いでしょう?

 早く案内してくれないかしら?」


「それもそうですね」


 今私に声かけた青い鱗が特徴的なドラゴニュートへ人化しているドラゴンはスマウグ様の妹であり、私の同僚で四天王"氷結龍グラキエーヌ"。

 四天王と言ってもまだ私と彼女しかおらず何もかも全然足りていない。


「それならばこの様な場所見せる必要なかったでしょ!

 ただでさえ兄上は拾い癖が激しいというのに……」


「そうなのですか?」


「しらんな」


 驚いた、偏屈なくせして魔族らしい所があるんだ。

 そもそも引きこもりなのが魔族らしくない。

 ドラゴンの本能は魔族より魔物寄りなのは確かだがそれでも魔族だし、どちらかと言うと妹であるグラキエーヌの方が魔族らしい。

 引きこもりは魔族らしくない。何故スマウグ様が魔王なんだ?

 そのくせ喧嘩っぱやいし。

 そこは勝負事が好きな魔族っぽいんだけど……


「そうですか。

 それではスマウグ様、グラキエーヌ。

 これより魔力を辿り森へと向かいますが念のために認識阻害を止めるような事はしないでくださいませ」


「そんなの常識でしょ?」


「…………」


 スマウグ様が町から出ると分かった瞬間解除しようとしたのを見逃せる程私は甘くありません。

 兄の威厳を保とうとしてるのか誤魔化そうと黙ってるので私も黙ってあげますけど。







「ちょっとまだつかないの?"夢幻泡影ロゥタル"」


 歩き始めて既に15時間が建っていた。

 森まで1時間と少し、魔物を倒しながら進んでいた事を考えてもかなりの時間歩いている事を考えれば

 この巨大な森の奥の方まで来ているはず。


「………確かにおかしいですね。

 私はちゃんと魔力を辿って来ていますが………まさか、幻覚?」


 おかしい事には気付いてた。

 普段格好いいからという理由でグラキエーヌからは四天王名で呼ばれるけれど、夢幻泡影と言われてその可能性に気が付く事ができた。

 私は夢幻泡影なんて呼ばれるくらい幻覚、夢、幻等といったものにこれ以上無い程の自信があったからその可能性を切り捨てていた事に気が付いた。


「何馬鹿な事言ってるのよ?

 "夢幻泡影ロゥタル"が幻覚に掛かるなんてあり得ないでしょ?

 ……ちょっと、返事くらいしなさいよ」


「今集中してる、話しかけるな」


「はぁ!?なによ!」


「五月蝿いぞグラキエーヌ」


「だけど!!」


「黙れ」


「ッ……」


 やっと黙ってくれた。さて集中。

 五感に頼ることなく魔感のみで周囲の風景を見回しはじめる。


 周囲は草木が生い茂り、まるで木々に巻き付く蔦のように青紫色の花を咲かす植物が生い茂っている。


 けれど分からない……だからもっと集中する。

 すると違和感を感じることができた。


 更に私はもう戻れなくなるのではと思うくらい集中した。

 意識がまるで魔に飲まれてしまうと錯覚する程で背中に汗をかくのが分かるくらいにしてようやく見つけた。


「…………まさか」


「っ!?ちょっとロゥタル!?」


 魔法を放つ前に属性に気が付くのは流石。

 しかし無視して放つ。


「フレイムライン!!」


 手から放たれた五つの炎が不規則に直角に曲がりながらも真っ正面へと地を走り線を退いていく。


「これは……」


「当たりみたいですね」


 炎の線を地が……

 いや、青紫の花を咲かす草が飲み込み鎮火してしまった。


「こんな森の中で火を放つなんて思ってた以上に常識の無い方々なのね」


「誰よ!姿を見せなさい卑怯もの!!!」


「卑怯?」


 そんな疑問の言葉と共に木々に絡まる花と地を埋め尽くす花が動き始め、地割れのように裂けた花の階段を上り一匹の赤いラミアが現れた。


「卑怯とはまた違うでしょ?これは警告だもん。

 ここから先に向かうならこれくらいのトリック片手間で見抜いたり無理やり突破できないようじゃお話しにならないじゃん。

 悪いことは言わないからさぁ、興味本位だけで来たらなら帰ってくれないかな?

 この森の真の主は静かにしたいだけで、私は大切な子を待っているだけだからさ、魔王様ご一行様?」


 ……なるほど。

 本来なら嘗められていると考えるべきでしょうけど、私は彼女の事を良く知っている。

 賢いけど考えの甘いラミアは本当にただの忠告としてこの花の迷宮を用意した。

 本来なら絶対に効果の及ばない程軟弱な幻覚に加え、幻覚なんて無くても方向感覚を狂わせ一定の距離が離れると花の配置が変わりまるで別の通りとしか見えない道を作り続け無限に迷わせる。

 たぶん、本気で帰りたいと音を上げたら帰れるよう誘導してくれるんでしょうね、このアルカネット姉さんなら。


 だからこそ嘘じゃない。

 この先にお優しいアルカネット姉さんが忠告する程の化け物が居る。


「赤いラミア……あんたが話に聞いたアルカネットね!」


「え?えぇ、まあ私はアルカネットだけど、私に用だったの?

 それならもっと早く教えてよ、そう言ってくれればすぐ出てあげたのに」


 むぅっと頬を膨らませて不貞腐れたような態度を取る姿も夢の中で見た光景の中にあるアルカネットらしい行動。

 これだけの力がありながらあの振る舞いが素の姿なのか……


「それなら話は早い!私は四天王"氷結龍グラキエーヌ!"

 とりあえずアンタの実力を見せてもらうわよ!」


 止める間もなく初手ドラゴンブレス。

 氷属性のマジックレーザーで、元々マジックレーザーがドラゴンブレスの劣化番として他の魔族が作った魔法であり、ドラゴンが体に持つ魔力袋から適当に魔力を吐き出すのがドラゴンブレス。

 ただ、上位のドラゴンはドラゴンブレスを態々口から出して隙を作るなんて事はしない。

 指先や角、尻尾から放つなんて事が多い。


 そして人種形態のグラキエーヌは手からドラゴンブレスを放った。


「ジャガーノート」


「なっ!?」


 ドラゴンブレスの放出を緊急停止し翼も使い無理やり飛び退く。

 ジャガーノートはドラゴンブレスの魔法構成を高速で破壊し魔力へ還しながら進み、グラキエーヌが立っていた場所より少し前で四散した。


 思ったよりグラキエーヌは咄嗟の判断ができるようね。

 けど、やっぱりアルカネットはただ者じゃないようですね。

 ドラゴンブレスもジャガーノートも魔力使用料事態はそんな違いは無いけれど求められる魔力操作能力には天と地ほど差が生じる。

 ドラゴンブレスは力だけあれば誰でも使える。

 けれどジャガーノートは力に加えパリィやカウンターのような高度な技術を要求され、少なくともグラキエーヌやスマウグ様が使える魔法ではない。

 私は単純に生まれの関係でドラゴンブレスもジャガーノートも使えない。

 どんな事にだって例外はある。


「あ、そんな飛び退く必要無かったのに。

 当たる前に四散するように使ったから」


「馬鹿にしてるの!?」


「いやいや目的見失わないでよ。

 力が見たいって言ったのそっちだったよね?

 もしかして……今のだけじゃ不合格だからちゃんと戦えって事?

 それなら今度は痛い目にあうかもよ」


 アルカネットの瞳が一瞬光り、赤い瞳が本当にルビーのような透き通った赤い瞳に変わった。

 これは種族としての生まれもった特殊な魔力の使い方をしている証拠だ。

 ドラゴンなら魔力袋からブレスを吐くのと同じようにやろうとすれば他種族でも使用可能ではあるが、彼女のこれは他種族が使う場合難易度はドラゴンブレスと比較にならないでしょうね。


 何故って……こんな森の全てを攻撃の手段として使ってるような光景見たことが無いもの。


「なぁッ!?」


 森が押し寄せる。


 足場として歩いてきた青紫の花を持つ植物が全て動き始め、足を絡めとろうとするのを察し空へ逃げれば平らだった足場は巨大な津波のようになり私達を飲み込もうと襲いかかってきた。


「こんなもの!」


「くっ、バカッ!」


 グラキエーヌが何の考えも無しに植物の波へと魔法を放とうとしていたのを蹴り飛ばして止めさせた。


「ぐっ!夢幻泡影ロゥ………ッ!?」


 怒った様子のグラキエーヌが私の状態を見て言葉をと切る。

 波とは別に激流のように押し寄せてきた蝙蝠の大群に私はグラキエーヌの身代わりとして飲み込まれ……


「あれ?」


 波へと叩き落とそうとした杖での攻撃だったのでしょうけど、残念ながら現実世界の私に普通の物理攻撃は効かない。

 とはいえ体が真っ二つになる幻影は気持ちの良いものじゃないわね。


「捕まえた」


 実践経験が少ないのか長年のブランクからか……

 まあ後者でしょうけど、驚きで体を硬直させたアルカネットの腕を掴み、空間を歪ませ真っ白で何もない私の世界へと引きずり込んだ。


「流石夢幻泡影ロゥタル!ここなら使い魔も植物も使えない!」


「それはどうかな~?」


「つ……強がるのもいい加減にしなさい!」


 アルカネットの楽しそうな笑みと先程の光景で完全に気圧されている。

 無理もない、あの光景は安全な場所にいた私でも普通に怖かった。


「目的を見失わないでくださいグラキエーヌ。

 十分すぎる程実力は見たでしょ?

 今回は単純に私がアルカネットさんと相性が良かったから無傷でしたが、手加減してあれって下手したらこっちが全滅しますよ?」


「うぐ……」


 もし私が庇わないで叩き落とされて植物の波に飲み込まれたら人化を止めたとしても遅い可能性が高く、そもそもドラゴンに戻っても的にしかならないと理解できるのでしょう。


「えぇ~、もう終わり~?

 ……でも助かったかな。これは勝てないや」


「それにしては余裕そうだな」


「ええ、だって私は契約上あの森の真の主の庇護下にあるもの。

 交渉材料に使われる事はあってもそれなりに危害を加えられたら助けに来てくれるもん。

 当然私や元同僚のプラントドラゴンさんなんかとじゃ比較にならない強さだよ」


 だとしたら確かに危害を加えられないけど、この余裕は絶対にそんな他力本願な所から来ていない。

 もしかして杖で叩き落とす攻撃すらフェイクとか?


 いやいや、考えても仕方ないしそもそも目的は戦う事じゃない。


「そうですか。

 ところで、サルタナってヒューマンの子供の事を知っていますか?」


「……なんでサルタナちゃんが出てくるの」


 グラキエーヌが咄嗟に身構えたがそれは仕方ない。

 今まで敵意を感じられず穏やかだった気配が全身を切り刻もうとする程鋭い殺気に変わり、アルカネットの裾からゆっくりと草が這えるように腕を伝いはじめたのだから。

 ただの草だというのにどんな凶器よりも警戒させられる恐ろしさがある。


 やはり先程の予感は間違ってなかった。

 覚醒したての魔王と手下程度なら彼女は3対1でも勝算がある。


「いえ、ただ私はサルタナと交渉をする事になりまして、これが上手く行けばサルタナは私達の仲間になりそうなので、サルタナの姉である貴女も入りませんかと勧誘しに来たのです」


「サルタナちゃんが?」


 なるべく刺激しないように表情の変化を押さえて話した自分を誉めてあげたい。

 お陰で殺気を納め、腕を這っていた草も枯れ落ちさせてくれた。

 それを見て胸を撫で下ろしたい気持ちになったしグラキエーヌもスマウグ様も明らかに安堵の色を見せている。


 今回こうなったのはグラキエーヌが原因であり、彼女が試さないと気が済まないなんて言い出しスマウグ様もスマウグ様で何も考えず許可を出したのも悪い。

 許可出したのに無責任に助けるそぶりすら見せない辺りスマウグ様はその辺大雑把というか適当ですよね。


「ええ、そうなった経緯を手っ取り早く伝えるのに貴女をここへご招待させていただきました。先輩」


「あれ?私そんな事教えたっけ?」


「いいえ。ですがサルタナから教えてもらってそんな気はしていました。

 それに、先ほどプラントドラゴンと同僚なんて言い方してましたからね。プラントドラゴンとラミアが何かの組織に組居るなんて魔王関係しかありませんから」


「へ~……抜け目無いね~。

 でもそんな事どうでも良いよ。サルタナちゃんは?」


「今お見せしますが、彼女は覚悟の上でその過酷な状況で過ごしてきました。

 いくら姉といってもそれを否定する事を私は許しません」


「……何かあったって事?分かった、覚悟はしておく」


 アルカネットが頷いたのを確認し世界に色を宿らせあの時見たサルタナの記憶を見せる。

 その光景を見たアルカネットの反応は劇的なものだった。

 とくに衝撃を受けていたのはサルタナの髪が真っ白になり泣きわめいた時で、アルカネット程の強者がただ涙を流しどうしたら良いか分からないと見ただけで分かるような姿を見るなんて思いもしなかった。


 ここで止めようかと私は聞いたけれど、「いい、続けて。私はこれを全部見ないといけないから」と言って終わっても二回、三回と彼女の要望で見直しする事になった。





「大丈夫ですか?」


「いいえ……正直どうしたら良いんだろ私………」


「一応言っておきますけど、サルタナの覚悟を踏みにじるような結論は出さないでくださいね。

 貴女の覚悟の重さも先程見させていただきましたがそれでもです」


「覚悟って……サルタナちゃんは私の子よ?当然じゃない」


 本当にそう思っているんでしょうね。

 サルタナもそう思っている感じはあったけど、それは当然の事ではないのが普通だと私は思う。

 よく子離れ親離れができたものですね。


「さて、私もサルタナちゃんの所に行くっていうのは良いんだけど、その前に持ってく物と挨拶してきて良いかな?」


「誰にです?」


「この森の真の主で世界最高齢の…………」






「……………え?」


「あ、起きた?

 けっこう長く精神の眠り状態だったから心配したよ。水飲む?」


「え……えぇ」


 気が付いたら森の入り口付近に私達はいた。

 目の前の人化したアルカネットに水袋を受け取り水を飲み周囲を見る。


 周囲で真っ先に気になったのは人化して二足歩行しているアルカネットであり、これ程までヒューマンと誤認する人化魔法を使えるとは。飲んでた水がむせそうになったくらい驚いたよ。


 次に目に入ったのはぐったりと座り込んだスマウグ様だ。

 魔王になって調子のってるスマウグ様がこんな姿見せるなんて何があったというのか。


 あと、グラキエーヌが虚空を見つめて動かない。

 もしかして今さっきまで私もそんな状態だったのでしょうか?


「えっと……何が起きたんです?」


「モルツェ爺さんに記憶を消されて森の外まで飛ばされたのよ」


「モルツェ爺さん?」


「どれくらい前かしらないけど、ずっと昔にあなた達と同じ四天王してたドラゴンで私の知る中で最も古き時代から生きてきた最古のドラゴンだよ」


「そんな化け物とあってたんですか!?」


 寿命の存在しない部類の魔族は長く生きれば生きるだけ強大で強靭な存在へとなる。

 当初四天王になれるだけの実力を持ち尚且つそんな長い時間生きていたドラゴンとなればもうその強さは想像すらできない。


「化け物って……どれだけ強くなっても過去には行けないって結論出してからくたびれちゃったドラゴンだよ?

 ただ静かに暮らしたいって理由であそこに住んでて、そのわりに子供好きで私やサルタナちゃんを孫なんて呼び始めたりして、確かに私は近い関係ではあるんだけど正確には違うのにね。

 そんなだから怖くはないよ」


「なるほど……?」


 それ、身内に対して甘いだけなのでは?

 というよりスマウグ様が疲れきってるのはそれか。

 魔王として覚醒して尚ドラゴンとして格付けが済んでしまったのでしょう。

 魔王は確かに特別だけれど絶対ではない。

 かつての魔王の中には魔族による反乱で滅んだ魔王もいるくらいなのだから。


「まあ……いろいろ思うところはありますが現在最強のアルカネットという私と同じ四天王経験者が仲間に加わりましたし良しとしましょう」


「え?いやいや何言ってるの?

 私なんてただ最終進化まで行っただけの普通のラミアだったんだから四天王なんかに入れた訳がないじゃん」


「……………はぁ?」


 ようやく顔を上げたスマウグ様の言葉は私の気持ちを代弁していた。

 え?ちょっと待って?

 間違いなくアルカネットは四天王候補であると同じに現在の四天王において最強………あれ?

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