こちらVR事件担当係、風見です

モンスターなカバハウス

こちらVR事件担当係、新人です

「はい、こちらVR事件担当係の風見です。はい、ええ調べてますよ。『スライム化事件』。はい、勿論です。ええ、では失礼します」


はぁ。

なんで俺一人で捜査しなきゃいけないんだ。

まだ警察になったばかりの新人だと言うのに。


俺こと風見雄二は警察官である。

正確には警察官になってまだ3日すら経っていないフレッシュな人材だ。

最近の新入社員は1年以内に辞めてしまう人が増えてるらしい。

その気持ちは良く分かる。

俺も今の仕事を辞めてしまいたい。

だがそれすら俺の自由意思が存在しない。

なぜかというと初日の日に


「名前は?」

「は!自分は風見雄二です!今日からよろしくお願いします!」

「うむ、元気があってよろしい」


なぜか俺一人だけ圧迫面接のように偉そうなおっさんたちがズラリと並んだ部屋に呼ばれた。

まだ警察官になったばかりだから俺何もやらかしてないはずなんだけどと思っていたら


「ところで風見くん。ゲームは好きかね?」

「はい?ええ嗜む程度には」


思いっきり嘘です。

ゲーム無しでは俺は生きてけない。

朝飯、ゲーム、昼飯、ゲーム、夕飯、ゲーム、ゲーム、ゲームこそジャスティス。

特にVRゲームは最高だ。

なんといってもあの没入感がたまらない。

今のVRゲームはヘッドセットをはめるだけで五感すべてを味わうことが出来るので現実と何も変わらない。

正直金に余裕があれば仕事を辞めてずっとゲームをしてたい。

でもそんなこと口が裂けても言えない。

警察では何かに異常に執着することをよしとしてないからだ。

面接で趣味を聞かれ、熱く語ってしまった場合はアウト。

世知辛い世の中である。

銃を持った犯人が人質を取っていた場合どうする?という質問より難しい。

特にVRがまずい。

のめり込み過ぎたやつが一人盛大にやらかした。


ライカンスロープ事件


VRのゲーム内でいろんな種族を自分のキャラクターとして選べるゲームが存在した。

その中でもライカンスロープという種族は他と一風変わっていた。

いわゆる狼男になれるというやつだ。

しかもそのゲームではライカンスロープは他のプレイヤーを殺害し、捕食することで強くなるという残酷な方法が推奨されていた種族でもある。

俺も一度そのゲームでライカンスロープをやってみたが描写がなかなかリアルなのと相手の悲鳴が捕食中ずっと聞こえてくるのが精神的にキツくて辞めてしまった。

だがそのゲーム内でライカンスロープを極めた男がいた。

後に分かったことだがその男は一日22時間はそのゲームを遊び、仕事をしていなかったという。


倫理観やそのゲームの残虐性が問題となり、しばらくしてからそのゲームが配信中止になった後にことは起きた。

自分の人生ともいえるゲームが無くなったことにより男は狂った行動にでる。

まず自分の両親を殺害。

その後、警察に捕まるまで一般市民を30人殺し、逮捕されるときも警察官2名を殺害している。

被害者はすべて髪が頭から毟り取られていた。

男の逮捕時の姿は全身に毛が生えており、化け物のような姿に変わり果てていたという。


こんな事件が最近起きたんだ。

俺がゲーム好きだというのは絶対にばれてはいけない。

ところが…


「嗜む程度...か」

「ええ」

「VRゲーム100本以上、過去3年の購入履歴がここにあるんだが嗜む...ねぇ」

「うげ!なんでそれを!」

「うちは警察でね。問題のありそうな人物は個人情報まで徹底的に調べるんだよ。世間様にばれちゃいけない方法を取ってでもね」


警察真っ黒やん。


「困るなー風見くん。これだけゲームに執着するような人物を警察官にしてしまったとあれば、まだ記憶に新しいライカンスロープ事件と絡めてメディアがなんて言ってくるか。困ったな。実に困ったなぁ」

「じ、自分クビですか?」


大事な収入源が消えてしまう!


「いや、クビだなんて。風見くんはもう僕ら警察の仲間じゃないか」

「ほ、本当ですか!」

「勿論だとも」

「よかったぁー」


やっぱ警察はホワイトだったんだ!


「で、最近起きたライカンスロープ事件なんだがね。僕らはあまりに無知だったがためにあれだけの被害を出してしまったのではないかと思うんだよ」

「そう…ですか」

「なので新しい、VR関連事件の専門部署を我が署内で設立しようかという話が出ているんだ。世間の皆さまにも我々が如何にこの事件のことを重く受け止めているか証明するためにもね」

「それは素晴らしいお考えです」

「そうか、同意してくれるか」

「勿論です!」


とりあえずNOとは言うな。

親父から教わった社会での処世術。

よいしょよいしょのアダルトライフ。


「ならやはり風見くんに任せよう」

「はい?何をでしょう?」

「そのVR事件専門チームに入ってくれないか?やはり僕らおじさんはVRはからきしでね。ちょうどVRの専門家が欲しいと思っていたんだ。もちろんその分の給料も期待してくれていいから」

「はい!喜んで!」


ゲームと関わる仕事をしながらお給料も出る。

なんて素敵な職場なんだろう!


「そうかそうか。承諾してくれるか。ではこれから一人でも頑張ってくれたまえ」

「はい!ん?一人?」

「言い忘れていたがこの部署の設立に風見くん以外の人員が見つからなかったので人件費がうく...じゃなくて残念ながら一人で捜査してもらうことになるから」

「いや、ちょっと待って。いくらなんでも無理ですって」

「いやー良かった良かった。これで断られていたら風見くんの個人情報、特にこのエロゲの購入リストがどこかにリークされて...退職じゃすまないかもねぇ。しかも世間からは職務ほったらかしでエロゲ遊びまくってた元警官ってことで再就職も難しくなるんじゃないかな?」

「そ、それは」


俺の『夜』のゲームまでリストアップされてるー!

あのお店の店長、絶対に顧客情報を漏らさないとか言ってたくせにー!


「とにかく。わかるだろう?大衆というものは不祥事があると我々警察を責める。そしてその責めに答えてあげるために『形だけでも』何かしたというアピールをしなければいけないのだよ」

「か、形だけでも」

「形だけでも。だからゲームの専門家の風見くんがVR関連事件

を捜査しているというのは大衆への良きアピールになるんだよ。分かってくれるね」

「はい…」

「いやあ、良かった良かった。お互い納得いく結果になって」


納得してねーし!

そう思いながらも俺はさっそく新しい部署の部屋に連れてかれ...


「これ、メディアにはまだ報道されてない事件。犯人は恐らくVRにどっぷりハマってたヤツだ。プロファイリングが上手くいってないし足取り掴めないしで困っててね。よろしく頼むよ」


と笑顔で大量の資料を渡され一人取り残された。

部屋の中にはデスク、固定電話、パソコンが一つずつで他には窓一つ無い。

なぜかVR用のヘッドセットはあるが、一応そういう部署だからお情け感覚の備品?

これ余ってた留置所ちょこっと綺麗にしただけじゃね?

本当に他に人員がいないことを泣きながら悟った。

しょうがないので渋々資料を読むことにした。


ネクロマンサー事件に関するまとめ


はい、もう厄ネタきたよ。

名前がもう駄目だよね。

どうあがいても死体と関わってくるネーミングだもん。

さすがVR関連の事件。

分厚過ぎて全部読む気になれずに目次だけ読んでみると


・事件現場ー観覧注意

・被害者ー観覧注意

・鑑識結果ー観覧注意


「観覧注意ばっかじゃねぇか!」


突っ込みどころしかない資料をデスクに叩きつける。

ホコリが舞っただけだった。

仕方が無いので気分を落ち着かせるためにタバコを吸う。

ストレスが溜まると吸いたくなるのはなんでなんだろう?

ゲームを買うお金が減るので辞めたいんだがしばらく吸ってないと手がどんどん震えて...うん、考えないようにしよう。

ストレス性社会の闇のせいだ。そういうことにしておこう。

しょうがないのでさっき叩きつけた資料をパラパラめくっていく。

でるわでるわお子様に見せたらPTAという国家権力すらも凌駕する団体に一瞬で消されそうな画像がわんさか。

最初に奇妙な遺体が発見された場所が有名な墓地か。


墓地管理人から遺体が掘りおこされているとの通報が入り警察が行ったところでそれを発見。

ていうか未だに遺体があるってことは土葬か。出来るんだね。火葬だけだと思ってたよ。

数日前に埋葬されたばかりの、それも女性の遺体か。

んで、うげ、ああそれで『ネクロマンサー』か。

遺体の中にはまだ動いている臓器が体内にむき出しで詰められており、遺体がそのせいで動いていたと。

それ生で見ちゃった刑事さんはトラウマもんだわ。

その動いている臓器は鑑識の結果別の生きた人間から摘出されたものだと判明。

二つ目の遺体は最初の墓地からそう遠くない神社。

通報があり、向かうと同じような奇妙な遺体を発見。

鑑識の結果『入れ物』の遺体は最初の遺体の臓器の持ち主と判明。

そして今回の臓器は後に教会で見つかる3体目の遺体が持ち主と判明。


「んで、連続殺人事件っていうことにするってことか」


確かにイカれてるし墓地だとか神社だとかに遺体を置いてるところを見ると何かしらの一貫性は感じるけどこれVR関係あんのか?

これただ面倒くさい事件を誰もやりたがらないから新人に押し付けちゃえってことじゃね?

ため息を吐きつつページをめくっていく。


「ん?VRゲームとの関連性?」


目次にも書いてなかった題名が出てきた。ラスト2ページで。


「捜査官の一人が事件の手口がとあるゲーム内でネクロマンサーというキャラクターが行うのと同じような方法を取っていることを発言。なんだ、それなら俺必要ねぇん」


犯行動機もこれで確定だろう。

現実と空想の違いが分からなくなったやつがゲームと同じことをしたと。


「そのゲームが正規で販売されていたものでは無かったらしくそれを購入していた捜査官を逮捕。っておい」


VRゲームには正規のものとそうでないもの、通称『インディーアザー』というゲームが存在する。

VRゲームは精神に強い影響を与えるため、まずは厳しい審査を受けて販売許可認定を貰わなきゃいけないんだがこのインディーアザーはその認定を受けずに勝手に裏ルートで取引されているゲームだ。

最近は刺激が多いゲームが規制されやすいため、さらなる刺激を求めるやつが手をだすため需要は高いらしい。

っていうか一種の麻薬扱いだ。


「その捜査官が黙秘してしまったため家宅捜索したらインディーアザーと思われるゲームデータを入手。別の捜査官が試しに起動したら5分で吐いたと」


あかんやん。


「そのゲームデータがこれ。きちんとプレイして捜査に協力したまえよ。グッドラック」


最後のページに雑にゲームデータが入ってるだろうメモリーチップがテープで張ってあってそう書いてあった。

あー、なるほどなるほど。

そこで俺が入ってくるのか。

なるほどなるほど。


「ふざけんな!」


また資料をデスクに叩きつける。

またホコリが舞っただけだった。

ようするに他の戦力になりそうな人員にグロッキーになられても困るからゲーム脳な俺なら大丈夫だろうと、最悪ダメでも新人だしいっか!ぐらいの軽い気持ちで俺生贄にされてるじゃねぇか!


「はぁ、やってらんね。誰がこんなゲーム…」


じっと資料に張り付けられてたゲームデータが入ってるだろうメモリーチップを見る。


ゴクリ


別に興味があるわけじゃないんだよ。本当だよ。

ただインディーアザーのゲームは今までに聞いたことはあってもそんな裏ルート知らないし仮にも警察になるって人間がそんなのに手出しちゃダメでしょって思ってスルーしてたが。


目の前にあるしなぁー。

許可も貰ってるしなー。

ヘッドセットも何故かあるしなー。


うん、ちょっとだけだから。

仕事だから。

そう仕事なんだからこれは。

自分に何度も言い聞かせながらメモリーチップをヘッドセットに移し、装着する。

そしてゲームを起動した。


『死者の嘆き』


ゲームタイトルがもうまさにって感じだがグラフィックが作り込んででやばいな。

始めたらいきなり動く死体が出てきたがもういろいろドロドロと出ててヤバい。

やべ掴んできた。

そして天の声が聞こえてくる。


【死者は救いを求めている。彼らは悪しき心のネクロマンサーが作り出した失敗作。あなたは彼らをどうするかを決断しなければならない】


おお!やっぱゲームの最初の導入はなぜかテンションがあがる。


【死者を成仏させるもよし。死者を完成させるもよし。死者を可能かは分からないが生き返らせる方法を探るもよし。ただし時間をかければかけるほど彼らの正気は失われていき、最終的には消滅してしまう。心したまえ】


と言い終わったら天の声が消えた。

え、今ので終わり?

そして俺の腕を掴んでいた動く死体が目の前でドロドロと溶けていった。

体の内臓パーツが徐々に溶けていく。

5分で吐いたっててのはこれか。

映像が中々スプラッターでした。

周りをよく見渡してみるとそこは洋風の墓地で十字架が多く、RIPと書かれている墓石らしきものの周りでは先ほどのやつと似た動く死体がうじゃうじゃいた。

こういう目的がはっきりしないゲームの特徴ってチュートリアルがほとんど意味を成してないってことなんだよなぁ。

こりゃ確かにゲーム脳でもないと話が進まずにどんどんタイムアップして目の前で死体がリアルに溶けていくだけの時間が続いてしまう。

試しに比較的綺麗な状態の女性の死体に接触してみた。


「あぁ...たすけて...あぁ...」


そうするとまた天の声が聞こえてきた。

あー、行動するとその都度注釈が入るタイプか。


【彼女は救いを求めている。どうやら他のゾンビと様子が違うようだ。話かけてみよう】


と思ったら特殊イベントですか。


「えーっと。キミ、可愛いね?」


あれ?ただのナンパになってしまった。


「助けて...私を...」


会話成立してなくね?


【どうやら彼女と話すには生きた人間の脳が必要なようだ。調達してこよう】


いきなり話が飛んだよ。

っていうか平然と言わないでくれよ。


【人間は近くの村にいる。一日一人までなら気づかれずに誘拐出来る】


誘拐しろってことね。

目の前に誘拐する?のYES・NOの選択肢が出てきた。

そりゃしないと話が進まないからYESを選ぶとポンと簀巻きになった人間が出てきた。


【ではさっそく脳を取り出して彼女に移植しよう】


ですよねー。

目の前に医療器具がいっぱいでてきた。


【状態の良い脳を取り出せればその分死者は賢くなる。粗末に取り出すとその分死者は頭が悪くなる】


なるほど。

やれと。

これは絶対正規販売されないわ。

さっそく簀巻きにされた人間さんの脳を取り出す。

説明は省きます。

悲鳴がやばかったとだけ。

取り出した後は勝手に死体に入るらしい。

そこは適当なのね。


「ありがとう。やっとまともに喋れるわ。私はネクロマンサーの元恋人なの。でも私が死んじゃって彼は狂ってしまった。私を生き返らせようとして失敗した。それでも納得できずにどんどん動く死者を増やしていく。もう私の声すら届かなくなって…」


【スキップしますか】


迷いなくYESを押した。

ゲームのイベント、好きなのもあるけどやっぱ話長いと疲れるよね。


「じゃあ、私を生き返らせるために死者3体で練習してね!生きた人間の臓器をしかるべき場所で移植すればいいだけだから!」


これは飛ばし過ぎたかもしれん。

こいつしれっと生き返ろうとしてるのか。

てっきり元恋人を止めてとか成仏させてとかと思ったらそこは蘇りたいのか。


【死者の生き返りが出来る場所は墓地、神社、教会である】


神社だけ世界観が違うのは気にしたら負けなのか。

でもこの三つの場所って事件で書かれてた場所か。


「無事練習が終わったら私に話かけてね。私は墓地で生き返りたいから」


墓地か。

もしこのゲームに沿って犯人が行動してるなら。

一旦ゲームをセーブして中断する。

資料をまた読んでみる。


「最初の遺体が墓地、次の遺体が神社、最後に教会。ゲームの情報と一緒だな」


そしてまた墓地か。

ってことは。


「今までのが練習だったとすると次が本番?」


ってことはまた墓地に戻ってくる可能性が高いわけか。

んで女性の死体が必要?

ってことはこの犯人、本気で誰かを蘇らせようとしてる感じ?


「うーん?まぁ復活を信じてないとわざわざあんな手間が掛かる殺し方しないよなぁ」


とりあえずこのプロセスを本気で真似した場合、最初の墓地に戻ってくる可能性が高い。

というわけでこれ以上俺ではどうにもならないので日報メールをおっさん共に送り、帰宅することにした。

ヘッドセットは偶然俺のカバンに入ってしまったのでとりあえず持ち帰ることにした。


翌日職場に向かうとまた例のおっさんに呼び出された。


「やあ!さっそく成果を上げてくれたようだね!」

「え?あの何の話ですか?」

「あの事件の犯人、捕まったってさ」

「え?昨日の今日で?」


早すぎない?


「例の犯人が墓地に戻ってくる可能性があるってキミのメールを読んでね。周辺を何人かにパトロールさせたらドンピシャだったよ」

「そうですか。良かったです」

「でね。どうだったかね?例のゲームは」

「え?ああ、多少グロテスクでしたが普通でしたよ」

「それだけかい?」

「ええ、まぁ」


なんかやけに食いつくな。


「いやー、ゲームをわざわざ持ち帰ってまで仕事をしていたと聞いたのでね」

「え?あはは、そんなわけないじゃないですか」


バレてる!

案外ゲーム自体結構面白そうだったので事件解決するまでに遊び尽くそうと思ったのに!


「後で一応私の知り合いの精神科医を紹介するから一応見てもらいなさい」

「はい...すみませんでした」

「話を戻すが犯人、実は外科医だったらしい」

「医者ですか!?なんでまた」

「あのゲームをプレイしてから人が本当に生き返る気がしてきたと自白したよ。そう思うようになったのもあのゲームを『とある段階』までプレイしたかららしいよ。それってどこまでのことを言ってると思うかな?風見くん?」

「ど、何処まででしょうね?」


冷や汗がダラダラ出てくる。

俺もうちょっとであの女性の生き返りのプロセスのところまで終わらせるところだった。


「本人も警察に捕まってから現実がだんだん分かってきた様子で、『死者の女性』を復活させてからおかしくなったそうだよ。あの墓地で女性の幽霊が見えるようになってたとかなんとか。風見くんはそこまで遊んでないよね?」

「も、もちろんですとも!」

「あのゲームを遊んでいくと嘘か本当か見えてはいけないものがどんどん見えるようになってくるらしいよ」


危ねぇ!

っていうかこんなに危険なゲームだったのかあれ。


「不思議な話でね、その土葬された遺体の墓場には名前が苗字しか記載されていなかったから女性かどうか分かるはずないんだけどね」


・・・

あれ、それって本当に幽霊が見えてたんじゃ。


「もしかしたら幽霊の方から臓器が簡単に手に入れることが出来る人物にゲームを遊ぶよう仕組んだのかもしれないね。ゲームはほどほどにね」


と肩をポンと叩いた後におっさんは去っていった。

ふう、緊張した。

とりあえずゲームを持ち帰ったことは許してくれるみたい。

と油断していたら後ろから声をかけられた。


「やあ、風見くん!さっそく成果をあげてくれたみたいだね!」


とおっさんがなぜかまた背後から出てきた。


「あ、おはようございます。ってあれ?さっきもその話しましたよね?」

「うん?なんのことだ?私はついさっきここについたばっかりだ」

「あれ?じゃあさっきの人って」


先ほど俺が触られた肩が人の手の形状で濡れていた。


「大丈夫か風見くん。顔が真っ青だぞ」

「いや、あの大丈夫です。多分。犯人捕まったんですよね?」

「なんだもう知っていたのか。これからもこの調子で頼むよ」

「え?これからもって?」

「まだまだ未解決でVRに関連する事件は山ほどあるからね。配属初日で見事事件を解決に導いたきみなら頑張ってくれると信じてるよ」


そしてまたもやおっさんは去っていった。

そして俺は過酷な現実を受け止められずその場でくずおれた。

ゲームは好きだけど、好きだけど!

今日はっきりと現実とゲームは一緒にしてはいけないと再確認した。

これから待ち受ける数多の恐ろしいVR関連事件を思い、足取りが重くなっていく。

とりあえず半泣きになりつつも自分一人しかいない職場に向かっていくことにした。


・・・・・


待てよ。一人しかいないんだからゲームやりまくってても誰にもバレないんじゃ...

ちょっとだけなら...

そうと決まったらさっそくヘッドセットを取り出してってあれ?


「そうだ、例の危ないゲームのデータ返さないと」


思い出して返すためにメモリーチップを外そうとしたときに


「せっかく生き返れると思ったのに…」


という声が聞こえてきた。

慌てて周りを見渡すと誰もそこにはいなかった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

こちらVR事件担当係、風見です モンスターなカバハウス @monsterkabahouse

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ