第55話 新戦力は・・・
PCに着信音。 同時にプリンターが作動し始めた。
プリントアウトされた書類は計6枚。
ケン「・・・これ、部長からです。」
カピタン「お、来たか。見せてくれ。」
コスタ「チーフは気にいったの・・・何かありました?」
ペーニャ「あ? ああ、そうだなぁ・・・」
4人が見ている書類は言わば中古兵器のカタログのような内容だった。
For Tesoro de Gitanos と、ある。
カピタン「で、この中から選べ・・・か。」
コスタ「どれもこれも他のチームからの払い下げ。しかも、高額です。」
ペーニャ「いくら修理済みって言ってもよ・・・ 弾薬と燃料は事前に確保
しておいてください・・・だぜ?」
コスタ「メンバーの入院費、治療費。加えて今回のトレーラーレンタル代。これだけで2年分の経費を超えようとしています。」
カピタン「え、そんなになるのか!?」
ペーニャ「このままじゃ、やってけねえのは確かだなぁ。」
カピタンらが頭を抱えている最中、ケンは6枚目の書類に注目していた。
ケン「みなさん、こんなのどうでしょう?」
一見すると上陸用舟艇。
戦車のような砲台が備わっているが、武装ではなくカメラらしい。
カピタン「いや、俺たちは海だけを主要な活動区域にするつもりは無いぞ。」
ケン「まあ、見てみましょう。」
と、印刷されたQRコードに自分のスマホを翳して見る。
【 陸上走行モード 】 と、タイトル。
上陸用舟艇の船体横から、突如現れる筒状の物体。 それはさらに伸び・・・
計4か所生えると、その立ち姿は動物を連想させた。
以下、それぞれタイトルが付けられた三つの短い動画。
1,象のように歩いてみた。
2,虫のように這いつくばって動き回ってみた。
3,タイヤ付きホイールに履き替えて高速移動してみた。
カピタン「・・・・・・まあ、機動性があるのは分かった。」
コスタ「やはりですね・・・武装が無いに等しいのは・・・」
ペーニャ「コレなあ・・・見た目が・・・どうにも気に入らねえんだよ。」
評判が芳しくない。
ケン「??」
6番目の印刷物を改めて見直していたケンがある事に気付いたようだった。
ケン「本部へ連絡して、確認取ってみます。 結論出すのはその後でもいいじゃないですか!」
カピタン「ケン、これは俺たちの問題だ。そこまでしてもらわなくても・・・」
構わずPCを使い、本部にアポイントメントを取ろうとするケン。
『 Team MOTOI-CREW Reader Ken-Motoi ・・・』
チーム名、役職、自分の名前とパスワードを入力するとウェブカメラ経由であろう
顔および眼紋認識をスキャンしているらしいケンの静止画像に切り替わった。
そして・・・
アルファベット大文字〝D〟の周りを回る人工衛星のCG映像が現れ、数秒間ほど続いた。
『本人確認の照合が完了しました。 ご用件をどうぞ。』
ケン「諜報部部長I・Jに、送られてきた書類の件で確認したい事があります。
と、伝えてください。」
『しばらくお待ちください。』
数十秒後、いきなりI・Jの上半身が映し出された。
I・J『ケン、確認したい事とはなんだ?』
ケン「6枚目の、シリコンプレーリードッグス所有だったアーリントン・1という
機体なんですけど・・・〝0ドル〟って本当なんですか?」
カピタン、ペーニャ、コスタ「!!!???」
I・J『本当だ。 というより、価格は記載してあるはずだが?』
カピタン「ちょっと見せてくれ!」
ペーニャ「・・・紛らわしい書き方しやがって! しかも小せえ!」
コスタ「ゼロの中にスラッシュは入れないで欲しかったですね。」
000,00000$ と、小さく記載されている。
ケン「でも、何故なんですか?」
I・J『所有していたチームがそれを手放す際、TEAM専用のオークションサイトに
出品したそうだ。 で、過去3回出品したが・・・何れも入札0だったらしい。』
ペーニャ「それってよお、人気無かったって事なんだろ?」
I・J『その通り。 ちゃんと理由もある。』
1,唯一の武装が使用不可の状態になったままである事。
2,陸海の機動性はあるものの、それほど特筆すべき性能ではない事。
3,後付けで武装改造しようとしても、砲弾を貯蔵できるスペースが無い事。
4,重量が普通のダンプトラック程度しかなく、装甲強度に問題がある事。
5,出品時、強気な価格設定だった事。
I・J『これらは寄せられた全てのレビューを要約し、抜粋したものだ。』
ケン「でも、なんでまたDRAUGにその機体があるんですか?」
I・J『所有していたチームが所有権を放棄したためだ。
オークションサイトに出品するたび、エントリー代と輸送費、保管料がかかる。
当然のこと、チーム内に役立たずで金を食いつぶすだけの存在があったとしたら、
排除をしたい。でも、そうするにはどうしたらいいですか?と・・・
まあ、そう言った内容をだ、相談がてら運営側に泣きついて来た、という訳だ。』
ケン「で、向こう(運営側)は何と言ってきたんですか?」
I・J『ナントカしてくれ!だと。まあ、体よく丸投げされた感はあったが・・・
こちらとしては敢えて引き受ける事にした。』
カピタン「・・・何か訳あり・・・なのか?」
I・J『北太平洋第七艦隊の駆逐艦ニイハウ艦長アグバヤニという男の強い勧めが
あって、運営側から譲渡された・・・と、聞いている。』
ケン「なんで第七艦隊が話に出てくるんですか?」
カピタン「I・J、もう少し詳しく話を聞かせてくれないか?」
I・Jの口角が少し吊り上がった。
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