第50話 東京で用事を済ませる。 (4)
ミナコ「今の音・・・何なんですか?」
エリック「ナックルボールが発する特有の電波をキャッチした、という、
警報アラームです。」
ミナコ「じゃあ、近くにいるって事ですか?」
エリック(ナビをチラ見しながら)「2~3km離れているんですがね・・・」
ミナコ「・・・」
エリック「射程距離・・・じゃなくて、あー、なんて言うべきかな・・・
被害を受けてしまう範囲!それがですね、僕らも入っちゃうんですよ、どうやら。」
ミナコ「・・・・・」
渋滞最後尾の数ある車の中の一台に二人の老人が乗っていた。
「ああ、誰か感付いた人がいるみたいだねぇ。」
と、後部座席に座る丸メガネに長い白ひげの大男老人が、ポツリと呟く。
「その方、大惨事になってしまうのでは?と、心配しているんでしょうね。」
と、執事のような運転手。
「うーーん・・・安全なんだけどなぁ。直接そう言ってやりたいよ。」
「でも、その荷物は何だ?なんて邪魔される訳にもいきませんよね。」
「それもそうだ。大事なお届け物なんだし。」
「それにしても、この渋滞・・現地に到着するのは真夜中になってしまいますよ?」
「仕方ないさ。肝心なのは、じっくりとチャージすること。だから屋根にあんな物を
付けたんだからね。」
二人の老人の乗る、トラバント風乗用車の屋根一面にソーラーパネル。
「バート、僕はそろそろ空腹になろうとしているんだが、君はどうなんだい?」
「私なんて、とっくにですよ。池袋に着いたらランチにしようと思ったんですが…」
「おぉ、いいじゃないか! 何か問題でも?」
「先ほど、池袋のコインパーキング情報を検索しましたらですね・・・」
「まさか・・・?」
「軒並み満車・・・だそうです。」
「・・・・・・」
「甲州街道へ入るまでのご辛抱です。そこで駐車場のあるレストランを見つけたら、
迷わずそこへ入りましょう。 その際、カテゴリーに文句をつけるのは無し!
よろしいですね?」
「・・・分かったよ。その辺は君にお任せしよう。」
女子会メンバー3人を乗せた車は辛うじて(?)池袋六又陸橋までたどり着いた。
エリック「どうやら危険は去ってくれたようです。」
ミナコ「そう言えばピーって音、聞こえなくなりましたね。」
ティナ「えっ? なんかあったの?」
ミナコ「なんかね、渋滞してた時、近くにナックルボールがいたらしいって。」
ティナ「・・・マジで??」
その時、青ざめた表情をしたエリック。
ステラ「今、ナックルボールというワードが聞こえたんだけど・・・?」
エリック「そ、そうかい? ス、ステラも空耳が聞こえる年になっ・・・あっ!」
自分の発した言葉が、火に油を注ぐ事態に気付く。
ステラ「詳しく話を聞かせてくれるかしら?」
エリックとステラとの間に不穏な空気。
どうにも困った様子で二人を見比べるミナコとティナ。
一行の車が西巣鴨交差点を通過、明治通りを王子方面にさしかかってしばらくした時、ある事に気付いたミナコ。
滝野川一丁目の、ある一角がやけに殺風景になっていたが・・・
ミナコ「あった! エリックさん、ちょっと車止めてください!」
その辺一帯は、〝再開発予定地〟と記された簡易バリケードが立ち並んでいる更地。
そこに、ポツンと一軒だけある小さな店舗。
どうやらミナコはその店を訪れるようだった。
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