第49話 東京で用事を済ませる。 (3)

3人が振り返って見た秋葉原方面は、火災が起きたように煙が立ち昇っている。


ステラ「・・・日本もテロが頻発するようになってしまったのね。」

彼女の選んだ500mlの緑茶はすでに半分ほど飲み干されていた。


ティナ「・・・やっぱ、うまいなぁ。」

と言って、一口味見したシークァーサージュースを一気に飲み干してしまう。


後ろに何か買いたそうな人が待っていたので、あわててお釣りを取り、紅茶を

買うミナコ。


大きな聖橋はすでに見えていた3人だったが、送られてきた写真がどの辺りで

撮影されたのかを確認する必要があった。


ステラ「・・・このへんかしら?」


送られてきた写真画像と実際の風景とを比べていると・・・

「ステラ!!」と、男性の声。

女子会メンバーがいる神田川沿いの歩道からではなく、反対車線側の方からだった。

二枚目の写真と同じく、4台しか駐車できないコインパーキングの一角に停められていた少々ゴツい乗用車。

その車の前で手を振っている白人男性。

それを見たステラの眉間に・・・縦の筋が一本。


御茶ノ水駅方面の車線は渋滞しているとはいえ、徐々に流れ始めていた。

3人はその場を横断する訳にもいかず、いったん聖橋上の横断歩道まで足を

運んだ。


ステラ「エリック・・・ まさか、あなただったなんて・・・」

「会いたかったよーーっ、ステラ!!」

と、互いに頬を寄せ合う欧米式親愛の状を示す挨拶をしようとする男性を・・スルリとかわすステラ。


ミナコ、ティナ「・・・・・・」


「おっと、自己紹介しなくっちゃ! 私、DRAUG日本支部東京都23区担当の・・

エリック・ミラーと申します。 どうぞよろしく。」

FM放送のDJを思わせる声質で、よどみない日本語だった。


女子会メンバー3人を乗せた車がコインパーキングを出ようとすると、

付近を強化パトロール中の警察官に呼び止められた。


「どちらへ行かれますか?」


ミナコ「私たち、王子方面へ向かいたいんですが・・・ダメですか?」


「それでしたら・・・迂回していただくしかないですね。」


エリック「・・・だったら・・・」 ナビを操作し始めた。


ナビ画面には、東京都23区の道路と路線の全体図。

そして、東京メトロ新御茶ノ水駅からわずかに離れた所に緑色のマークが

点灯している。


運転席のエリックは、ナビ画面をスマホのように指でなぞった。

すると・・・

なぞった通りのルートが色分けされて表示され、設定されたルートが作成された。


< 春日通り → 池袋六又陸橋 → 西巣鴨 → 王子 >


エリック「と、まあ・・・こんな感じでどうでしょうか?」


ミナコ「これで行きましょう。」



一行は、設定されたルートに入っているが・・・


エリック「オマワリサンの言ってた通りでしたねー。 こりゃヒドイ。」


見事なまでに渋滞にハマってしまっていた、一行の車。

すでに2時間ほど経過しているが、未だ春日通りにも辿り着けていない。


ミナコ「お二人とも、お腹空いたとか、トイレに行きたいとか、早めに言って

くださいねー!」 と、助手席から後部座席のステラとティナに呼びかけたが

・・・・・  いつのまにか、二人とも寝息を立てていた。


ミナコ「あらあら・・・」


エリック「ミナコサン・・・今のこの状況、すごくヤバイ気がします。」


ミナコ「え・・・?」


神妙な面持ちのエリック。

そして、車内に微かながら響く『ピーー』の音。 








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