第44話 緊急臨時ミッション (2)

「まだ応援は来ないんかい?」

「だったら、俺たちでカタをつければいいだけの事だ。」

「とにかく、撃ちまくってください!だってさ。」


人数は多いチ-ム、『ハンドガン・マニアックス』。

その名の通り、筋金入りのマニアの集まり。

チーム総勢100人の全てが、アンティークな拳銃を所持。

やはりマニアだけあって、第二次世界大戦の期間中あるいは戦後10年間に

製造されたモデルが大半を占めるが、中には西部開拓時代に製造された物を

実弾発射可能なレベルまで整備し、所持しているツワモノまでいる。


そんな彼らが、緊急臨時ミッションに参加せねばならなかった理由はもう一つ。

いわゆる、“御禁制”の弾丸をメンバーの多くが多数所持していた事が発覚。

監査官から「今後、グループを存続し活動の継続を望むのであれば、所持している禁止指定弾丸を全部献上するか、今回のミッションで全て使い切る事。なお、一切使用せず単に保管する目的であっても、それは認められない。」との通達があったためでもあった。


今回禁止指定された弾丸は、大まかに分けて六種類。


1、ダムダム弾*

2、F.M.J(フルメタルジャケット)

3、A.P(アーマーピアシング)

4、J.H.P(ジャケッテッドホローポイント)

5、ナイグラッド

6、(規制前の)散弾実包(ショットシェル)


これら、全ての弾丸は(威力を高めるため)鉛を用いている。

その鉛を用いる弾丸の製造、使用、保管の全面禁止が新国連の議会により決定。

『有毒』が表立った規制の理由だったが、実際は大量生産が可能になった新型銃弾

と従来の手工業で製造される銃弾との明確な区別(差別化)を図るためであった。


*はるか昔に禁止指定されていたが、近年になって密造物が裏社会において流通

していた事が分かり、改めて規制強化の対象となった。



双眼鏡を覗いていた隊員が叫んだ。

「ターゲット、確認! ・・・アイツ、シールドを強化しているようです!!」

コンボイ級の大型トレーラーだったが、運転席と側面の窓、ラジエター、タイヤを

全て分厚そうな鉄板で覆われていて、一見電車のように見える。

トラック自体はハイブリッドだったらしく、今はモーターだけで駆動している様子

だった。 何故か、時速は30kmほど。

その異様なコンボイ級トレーラーが、ゆっくりと・・道の両端に立つカラーコーン

のそばを通過。

監査官は思い切りホイッスルを吹くと、全隊員が一斉に銃を構えた。そして・・・

(競技に使われる)スターターピストルを上空に向け、引き金を引いた。

           パァン!!

学校の体育祭や陸上競技でよく耳にする音。その音が文字通り、合図となった。

全隊員の構えていた銃が一斉に火を噴く。

調子がイマイチな感じの旧式マシンガンのような、連続する銃声。

異様な車体に浴びせられる、数多くの火花。

硬い鉄板に、金鎚を何度も何度も打ちつけるような金属音。

いい加減に造られたと思われる装甲は所々凹んできたり、穴も開いたりするが、

それでも、じりじりと進行を止めない。


「ちっきしょーっ!! こんな時に故障しやがって!!」

「弾は残っているか? 俺が全部使ってやる! 装填手伝え!」

「・・・ちっ、仕方ねえ!」


「ちょっと、肩・・貸せ。」

「うわっ、それは・・・」

「(C社)SAA12インチ銃身(モデル)だ。よもや、コイツの出番が来るとは。」

そう言って装填係の肩に乗せたのは、溶接工が使う革軍手だった。

「耳、しっかり塞いでおけ。 行くぞ!」


「コイツのキックバック(衝撃)はハンパねえからな・・・ とてもじゃねえが、

片手で撃つ自信・・・ 今の俺にはねえんだ。 笑われても仕方ねえな。」

「なんでえ、隊長もかい!  そもそも44マグナム弾を発射するタイプの銃は

両手でしっかり構えるのが基本だろ?まあ、お互い基本に立ち返ったって事さ。」

「そうですよ!お二人とも若くないんだし、御無理なさらずプローンポジション

か、シッティングポジションでの射撃をお勧めします!」

「言ってくれるぜ、ウィル。 そうさせて貰うけどよ、おめえのは楽でいいよな。

45マグナム弾でありながら、ガス・オペレーションなんだろ?」

「何言ってるんですか、副隊長。この銃はキックバックがマイルドなんて言われて

ますけどね、とんでもない! すごい事には変わりないですから!」


ポツンポツンと、所持していた弾丸を撃ち尽くしてしまった隊員が続出するなか、

担当監査官のスマホにメールが届いた。

「・・・・・!」

監査官はMVA信号拳銃に持ち替え、実包を装填し、銃を空に向けた。

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