第38話  奇妙な黒い対戦相手にも名前があった。

離れた所から「マジか!?」と声がした。

メンバーの目の前に、いつの間にか停車していたコンボイ級トラック。

そして・・・ 片膝立てて座っている、奇妙な黒い対戦相手。

向き合っている黒人中年男がケンに話しかけた。

「その中・・・ちょいとばかし見せてもらえるってワケにはいかねえか?」

ケン「それ、やめたほうがいいです。ぼくら、これのA Iに退出要求されました。」

「ほう、そりゃまたどうして?」

ケン「なんでもアップデートを施す間、動力系統が停止してしまうそうなんで、しばらく使えないみたいです。 ですから、迂闊に入ってしまうと閉じ込められてしまう危険性がありますので。何も無い中2週間過ごすのはさすがに無理だと思います。」

「・・・そうか・・それは残念だ。」

いつの間にか話しに加わっていた、口髭を生やしている男。

「カピタン、来てくれ。」と、カフェの方から黒縁メガネに頬まで髭の男。    両手人差し指を自分の頭に突き立て、角が生えているポーズ。

「・・・やっぱりそうか・・・ アレ、使ったからだよな?」

「しかたねえよ、カピタン。代表して説教されてこいや、なあ!」

ケン「え? 何かあったんですか?」

「ま、詳しい事は中で話す。ちょっと付き合ってくれるか?」

そう言って、口髭を生やしている男はバツが悪そうにカフェへ入って行った。


ケン「ステラさん、不法侵入のドローンの件、どうなりました?」

ステラ「あ、リーダー、お疲れ様。 本部もある程度情報は入ってたみたい。で、

これ(ケンのスマホ)の地図情報も送っておいたから、後は本部に任せましょ。」

そう言った後、ステラはカピタンと呼ばれる(口髭を生やした)男の方を向いた。


ステラ「あなたには一言・・・EMP爆弾を使うって言ってほしかったです!!」

指差す方向には、爆風で飛んできた石によると思われる窓ガラスの破損。

そして、突きつけられた、粗い波線の表示しか出ないスマホだった。

「・・・いや、何と言うべきか・・・申し訳ない事をした。」

ケン「あれって、EMP爆弾だったんですか!?」

「という事は・・・やっぱり効いてなかったんだな・・・ そうか。」


ステラは、カピタンと呼ばれる男に一枚の紙切れを手渡した。

そこ記載されていたのは・・・

窓ガラス交換、PC端末およびスマートフォン交換、それらに伴う購入費と工事費

並びにPCのデータ移植を含むセッティングにかかる費用。

それらの請求書だった。(ケンのスマホで作成)


「・・・・・・」  それを見て黙ってしまう、カピタンと呼ばれる男。

覗き込む、黒人中年男。

「・・・ネーちゃん、これは吹っかけ過ぎじゃねえのかい?」

ステラ「そう思われますか?でも不問にできる方法もあるんですよ。聞きます?」

「聞かせてくれ。」と、カピタンと呼ばれる男。

ステラ「決して悪い話ではない、と思います。」

ケン( もしかして・・・? )

ほんの数秒ほど間があった。

ステラ「新国連特殊諜報組織DRAUGは、ティームTESORO de GITANOSに正式な要請をいたします。」

「!?」

ステラ「まずは・・・我々の組織、DRAUGの傘下に入っていただきましょう!」

ケンは改めてカピタンと呼ばれる男を見てみた。

特に動揺している訳でもなく、落ち着いているように見える。

ステラ「通常では配信されない情報の入手や・・・特殊な依頼を受ける事が可能と

なります。 いかがいたしますか?」

すると、ツカツカとステラのもとへ歩み寄る、カピタンと呼ばれる男。

「傘下に入ることを希望する。俺たちは、まだまだ情報不足なんでね。」

そう言って右手を差し出した。

がっちりと握手を交わす、監査官ステラとカピタンと呼ばれる男。

ステラ「そうと決まれば自己紹介よね!」


カピタン「このティームの代表、カルロス・サンタンジェロだ。 実を言うと、

俺たちは危機的状況だった。 ここに来る一ヶ月前、“新兵器狩り”に出くわして

しまい、現在残っている戦力は・・・アイツだけ。」

指差す方向には、片膝立てて座っている、奇妙な黒い対戦相手。

カピタン「そんな時、珍しく国連が{ 新兵器のテスト レトロな戦車にミサイルをブチ当てて、賞金をゲットしよう! }な~んて宣伝していたもんだから・・・即、応募した。・・・で、今こうやって話が出来ている。」

ケン「あの黒いロボット、名前はもう付いているんですか?」

カピタン「ああ、シャンゴ(SHANGO)にした。始めて乗り込んだ時、名前を登録

しないと動かせないみたいだったんでね。ところで、君の戦車は何て名だい?」

ケン「マークン(MARK'N)といいます。・・・対戦した時、ピンと感じたんですが

・・・出所などに色々と共通点があるような気がしました。」

カピタン「共通点どころじゃない。おそらく一緒だろうな。・・・まあ、この事は後でじっくり話そう。」

ケン「分かりました。」


「ボーイ、アップデートってヤツが終わったら、戦車の中、見学させてくれよ!」

と、少ししゃがれた声。 黒人の中年男改め・・・

ペーニャ「メカニック担当の、アルマンド・ペーニャだぜぇ。いくらベテランの俺

でも、シャンゴに関して言えば・・・お手上げ。けど、他の機械ならお任せだ。」


「チーフ、“昔の”を言い忘れてますよ?」

ペーニャ「うるせえっ!!」

黒縁メガネに頬まで髭の男改め・・・

コスタ「PC担当のバスコ・ダ・コスタです、よろしく。 DRAUGの傘下に入る

となれば、戦力の補強などのサポートは期待していいのか、どうか?なんですが。

代表が先走ってしまって迷惑掛けた手前、こんなことを言えた義理ではないのは

重々承知しています。」

ステラ「問題ありませんよ。  もうじき、発注可能な戦力のラインナップが配信されますので、御相談の上、よく検討してみてください。」


そして、MOTOI-CREWのメンバー自己紹介の後、ケンはレトロな戦車、MARK'N

取得の経緯をカピタンらに全て話した。



       


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