第36話 意外な対戦相手 (4)

周囲200mなんて設定をしないで、もう少し範囲を広げればよかった。

ミサイルほど速くは無いが、真っすぐこちらに向かって来ている。

もっと前の距離で撃墜しないと・・・

でも、今から設定の変更など、もう間に合わない。

奇妙な黒い対戦相手が打ち放ったボールが設定されたエリアに突入した瞬間、

ティナとミナコの乗る砲台が反応した。


雷の直撃をさらに大きくしたような、大音響の爆発。

爆風で煙幕は吹き飛んだが、すでにペイント弾ミサイルは発射されていた。

地上、わずか1mほどの超低空。

腹這いになって身構えていた奇妙な黒い対戦相手は、勝ちを確信した。

だが・・・

鞭を硬い地面に思いっきり打ち叩いたような音。

ミサイルは爆発、粉塵を含んだ煙は再び吹き始めた風に流されていった。


『・・・・たいしたもんだ。』


ゆっくりと立ち上がる、奇妙な黒い対戦相手。

そして、ステラのいるFLAT TRACK CAFEの方角へ手を上げて合図を送った。


ミナコ「見て、ステラさんのとこ!」

監査官ステラの掲げるサインボードの文字は、GAME OVER とあった。

ティナ「はぁ~・・・ お疲れーっす!」

ミナコ「ホント、一時はどうなるかと思った。」

ティナ「あれ? 見て! アイツ、後片付けしてる!」

自らが放り投げた幌を拾い、丁寧に折りたたんでいる奇妙な黒い対戦相手。

ミナコ「あれって、近くへ行ってみたら・・・すごい大きいんでしょ?」

その様子を唖然として眺めていたケンだったが・・・

突然、操縦席のパネルスクリーンに “ 警報 ” の文字が点灯。

ケン「マークン、何があった!?」


  ・所属不明のドローンが潜伏しています・

  ・こちらの情報を搾取された可能性があります・

  ・選んでください・


  1、撃墜   2、捕獲   3、見逃す


ケンは一瞬ためらったが、1に手を翳した。

すると、レトロな戦車ことマークンは自動運転に切り替わり、ゆっくりと

方向転換した。

機首の方向が小高い丘陵に指しかかろうとした時・・・

一際大きい、地面に鞭を思いっきり撃ち叩いたような音。

0.5秒後にパン、パンと拍手(かしわで)を打ったような音も続いた。

だが・・・

メンバーから見た映像では遠すぎて、小高い丘陵に向かって空撃ちしたとしか

思えなかった。 

      

      ・ドローン2機 撃墜・

      ・コントローラー破壊・

      ・ついでに操縦者の両足も射抜いておきました・


ティナ、ミナコ「・・・・・・・」

ケン「マークン、そのドローンを撃墜した地図上のデータ・・表示してくれ。」

操縦席タッチパネルに『・・・』が現れたその3秒後、

緯度と経度の詳しい数値が記された地図が表示された。

すかさず、自分のスマホでそれを撮影するケン。

操縦席を離れ、外へ出るハッチを半開きにしてスマホを操作、耳に当てたが・・・

ケン「・・・だめだ、繋がらない!」

ティナ「リーダー、ステラさんのとこ?」

ケン「うん、そうなんだけど・・・」

ミナコ「いったん、戻ろ! 話はその後! ね?」


帰り際、視界にコンボイ級トレーラーと奇妙な黒い対戦相手が見えたが、まだ

その場にいるようだった。

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