第34話 意外な対戦相手 (2)

突然、トレーラーに掛けられていた幌が内側から突き上げられたように見えた。

宙を舞い、白い塩の大地に落ちる幌。


ケン「・・・まさか、もう実用化されたのか・・・?」

映像には、真正面に停車しているコンボイ級のトラックから “腕” が生えてきた

ように見えていた。

ティナ『もしかしたら、ロボットってヤツ?』

ケン「たぶん、正解だと思う。」

トレーラーから起き上がった姿は、まさに“人型”と呼ぶに相応しいが・・・

まるで、戦国武将の甲冑を連想させる、その出で立ち。

ボディ全体は、つやの無い黒一色で統一されている。

だが最大の特徴は、そのボディに似つかわしくない、奇妙な頭部。

ケン「・・・・・・・」    

透明なドーム内に、つやの無い暗黒の球体。

見様によっては、1950年代のSFに描かれていた宇宙飛行士のヘルメットに、

顔の概念が無い球体の頭部・・・に見えなくも無い。

その奇妙な対戦相手は、とにかく動きが滑らかだった。

まるでCGのようでもあり、大袈裟な動力音も聞こえてこない。

隣に停車中のコンボイ級トラックが無ければ、大きさを錯覚してしまいそうな、

不自然さを感じさせない人間らしい動き方。  その様子を観察していると・・・

何か動作を確認しているらしく、膝をわざと高めに上げて少し歩いてみたり、

腕や肩を回す動作、自分の手を顔(?)に近づけ、握ったり開いたりを何回か

繰り返していた。

ただ、顔の概念が無い頭部ゆえ、実際に手を見つめているかどうかは不明だった。


ミナコ「なんか、ウォーミングアップしてるみたい。」

ティナ「すごい余裕ぶっこいてるなあ、アイツ。」

ケン『・・・・・・』

見覚えがあった。

研究所跡の地下室にいた、ミサイルの弾頭のような物体の先端部分。

透明なドームの内部に、その部分だけ暗黒のような黒い球。

ケン(・・・という事は、出所が同じって事になる訳か・・・!)


『もうひとつ、言い忘れていた。』

ステラ「なんでしょう?」

『直接車体に当てない、間接的な攻撃も併用していいか?』

「・・・そうですね・・・ 許可はします。ですが、こちらの判断で中止の場合

、それに従って下さい。」

『了解した。』


トレーラーに積んである球状の物体を一個だけ摘み取る、黒い奇妙な対戦相手。

それを、白い塩の大地へ置いた。  何故か丁寧に。 

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