第30話 “ 名前 ” を決める。
ミナコ「すいません! 今、開けます!」
ティナ「リーダー、起きて! お客さんだよ!!」
ケンが目を覚ますと、玄関の向こうに監査官のステラが待っていた。
さらに、その後方には荷物を搬入しようと待機している職員数名。
少しあわててしまうケン。
結局の所、ケンはメンバーと監査官の朝食を作り、ティナとミナコは
荷物の搬入を手伝い、ステラは新しく持ち込まれたPC端末のセッティング。
ステラ「・・・・・ これで、完了。 じゃ、みなさん集合してください。」
ケン 「いよいよか・・・。」
ステラによると、模擬戦の概要は次の通り。
1、今回の模擬戦は安全性を考慮し、対戦相手はペイント弾を使用。
2、勝利条件は、ペイント弾を受けずに対戦を終了する(させる)事。
3、どういう形であれ、対戦相手を戦闘不能状態にすれば勝利とする。
4、ペイント弾が一発でも直撃すれば、それは負けと見なされる。
5、その際、戦車は党機関の研究部門に預かりという形になる。
ステラ「開始の合図はいかがいたしましょう?」
ケン 「僕らは戦車内で待機します。 何か信号弾でも打ち上げて下されば。」
ステラ「分かりました。対戦相手にもそう伝えておきますね。」
とりあえず待機しておこうと戦車に乗り込んだ時、ちょっとした変化があった。
ケン「あれ? なんだこれ?」
空中に浮かぶ、ホログラムの文字はこう書かれていた。
・まだ 私の 呼び名が 設定 されていません・
・正式な 名前を 決めて下さい・
ケン「・・・まいったな・・・ そこからか!」
ミナコ「ひょっとして、これもホームA I・・・みたいな?」
ティナ「そっかあ・・・ なるほどねー。」
ケン「こっちは模擬戦の事で頭がいっぱいだというのに。」
ミナコ「設定できれば、もっと早く情報が引き出せると思う。」
ティナ「ゴーグルとかアレクシみたいな感じ?」
ミナコ「そう!だから、早く決めてあげよ。ね?」
とは言え、この三人。すぐに最適なネーミングが思いつくはずも無い。
気が気でないケン。何しろ、信号弾の発射を即座に見極めなければならない。
ケンは操縦席に座り、PCを起動させると、周囲の警戒から始めた。
モニターは170度見渡せるが、まだ信号弾が発射された様子は無い。
ケン「名前・・・ 名前・・・」
その時、伝声管から声。
ティナ『そういえば、リーダー! 研究所から出てこれた時・・・誰かと長話
してなかった? なんか絡まれていたみたいな・・・』
ミナコ『確か・・・すごいマニア君に質問攻めされて、困っていたのよね。』
ティナ『その人いれば、カッコいい名前をスパッと決めてくれたのにー。』
たまらず、操縦席を出るケン。 片手に自分のスマホ。
マイクの部分に口を近づけ・・・
ケン「第一次大戦の戦車!」
今メンバーが乗り込んでいる戦車内部は電波圏外状態ゆえ、保存した情報しか閲覧できないが、どうにかヒットしたようだった。
ケン「これ見て決めてくれ。任せる!」
そう言ってスマホを手渡し、操縦席に戻るケン。
伝声管を通じて二人の意見を言い合う話し声が聞こえる。
そこへ・・・ 夏の夜の海岸で割と聞かれる、迷惑花火の甲高い音が一発。
FLAT TRACK CAFEの方角からだった。
ケン「合図だっ!! 持ち場に就いてくれ!!」
ティナ「了解!」
ミナコ「リーダー、決まったから承認して!」
ケン「え!?」
操縦席手前のパネルにデカデカと表示された文字。
・MARK‘N・ { マークン }
承認していただけますか?
O K ー NO
ケン「・・・・・・・・・」
一言、物申したかったが、躊躇している暇は無かった。
そして、OKのエリアに手を翳すケン。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます