第29話 模擬戦 前夜

二人の客人は、帰り際こう言っていた。

I・J「明日、模擬戦を実施する。詳しくは当日説明するので、楽しみにしていろ。」

ステラ「とりあえず、必要になりそうな物は一通り持ってきますので、特に問題は無いはずです。 今日はごちそうさまでした。明日もよろしくお願いしますね。」

二人の客人を見送る三人。

ケン「須田さん、シャワーまだ使えました?」

ミナコ「うん、大丈夫だった。けど、ぬるい水しか出ないみたい。」

ケン「分かりました。 ティナ、須田さん、今日はもう休んで。」

ティナ「リーダー、どこで寝んの?」

ケンは、つい先ほどまで店の御主人が横たわっていたソファーの方を指差した。


シャワーから上がろうとした時、外から爆音が響き始める。

ティナ「・・・あー、もう! カンベンしてよー!!」

ケン「なんだ、まだ寝てなかったのか。」

ティナ「すっごく疲れてるはずなんだけど・・・ なんか、寝れないのよねー。」

神経が高ぶっている・・・と言いたかったのだろうか。

ティナ「でもね、ミナコすごいんだよ! もう、寝ちゃってたもん。」

ケン「おそらく、今までの人生の中で一番疲れたんじゃないかな。」

ティナ「そうね・・・ そんな気がする。」


DRAUGの輸送機は旧態依然なジェットエンジンを使用しているせいなのか、離陸時の轟音は更にひどい気がした。

店内の窓ガラスがビリビリ振動している。

はたから見ると、ケンとティナは二人とも頭を抱えているように見えるが、実際は

両耳の穴に人差し指を突っ込んでいる。

とにかく、今のこの状況をやり過ごすしかない。


そして・・・ 周囲に山や川が無い、ただ広すぎる塩湖の平原に静寂が訪れる。

一時の空港のような騒音から、町が存在していない地域の異様と思える静けさ。

そのギャップに体が戸惑っているケンは、まだ寝付けずにいた。

ティナは奥の部屋に引っ込んだあと、静かになっている。

しかたなく、店内の周囲を点検してみるケン。

真っ暗だと、かえって眠れないケンは一部の間接照明を常夜灯代わりにした。

玄関と窓の施錠は確認。 とりあえず、レースのカーテンも閉めてある。

厨房は片付けた時に点検済み。

ガスはすでにスッカラカンになっていたが、一応元栓は閉めた。

見回してみて、改めて気付いた事と言えば、店内の隅っこにあるエアコン。

よく、倉庫内の作業で臨時に設置される用途に使われる置き型のタイプ。

冷気が噴出する蛇腹状のホースのあった部分は塩ビ管が取り付けられ、真っすぐ

天井近くまで伸ばした箇所から冷気を拡散するようになっていた。


・・・・・そんな事より。


I・Jが言っていた{ 模擬戦 }。

DRAUGから見れば、あの戦車が使い物になるかどうか見極めておきたいのだろう。

けど、どうやって戦ったらいいのか?

そもそも、△マークの部屋のレーザーガンらしきモノは実用に足りうるのか?

目の前に立ち塞がっていたミサイルの弾頭のような物体も破壊できなかったのに?


店の御主人の、酒臭さと脂臭い生活臭が漂ってくる感じも相まって、今夜のベッドになるソファーではとても眠れそうに無いケンだった。










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